前回のスコールの話の続きで、スコールとオミディアの二人の起業家は、成功したあと、差ができたのはなぜかの話です。


ジェフェリー・スコール(カナダ人)とピエール・オミディア(フランス移民)は、二人ともeBayの創業者です。フォーブスの長者番付だと、オミディアが101億ドル、スコールが50億ドルの資産を持っており、金持ちなのは共通してます。


現在は、両者ともeBayの経営を、Meg Whitman に任せて経営をやってませんが、相変わらず第一位と第二位の大株主で、資産はこれです。


オミディアも財団をつくり、またOmidyar Network によって、無数の非営利事業(英語のできない人の英語教育やIT教育)へ寄付をしてますが、ベンチャー・キャピタルもやっており、社会をリシェイプする活動は弱い。


eBayの創業者は、オミディアだというのが普通です。二人はスタンフォード大学の同級生ですが、オミディアが、インターネット・オークションのアイディアを考え出し、プログラマーだったので、自分でプログラムを書き、スコールに一緒にやらないかと誘い、スコールが第一号社員になった関係ですから、eBayの功績は、オミディアにあるのは当然です。


しかし、上場した後の軌跡は、全く違い、今では、スコールが、タイム誌の「世界をつくり変える100人」に今年選ばれたように、スコールのほうが輝いてます。この違いはどこから生まれたのか。


スコールは、トロント大学電気工学科、スタンフォード大学MBAを95年に取得したあと、ナイト・リッダー・ニュースペーパーズに入り、ジャーナリストを目指しましたが、96年にオミディアの誘いでeBayへ転職し、オミディアのアイディアを磨き、ビジネスプランにして実行したのです。


スコールは、インタビューで、eBayの最初の2年間は、常勤無給だったが、98年に上場したので、突然1億ドルの大金持ちになったと語ってる、こういうのが起業家なんですね。


病気のために2000年に経営から退き、99年に設立したスコール財団の活動に切り替え、またハリウッドの映画制作会社へ投資し、影響力のある映画制作を目指しました。


以後、
・2003年にオックスフォード大学セッド・ビジネススクール内に、社会起業家精神で社会問題を解決するプロジェクトをつくるスコール・センターを開設
・2004年には社会性の強い映像を制作するパーティシパント・プロダクションを設立、アメリカ公共テレビで放映された「ニューヒーロー」を制作したり、George Clooney 映画を制作
・2005年には、ガンジー・プロジェクトをスタート(パレスチナでガンジーの平和抵抗精神を広める活動)
・スコール財団内に「ソーシャル・エッジ」(社会起業家のためのオンライン・コミュニティ)、パーティシパント・プロダクション内に「パーティシパント・ネット」(映画を見た観客が、行動を起こすためのキャンペーン・サイト)を開設
など、辞めたあとの活動は多彩です。


スコールのこの速い事業展開は、ドックイヤーで、何かに取り付かれたような活躍です。子供のときに考えた夢の実現だとインタビューで語ってますが、本が好きな子供で、大人になったら、未来の社会はどうなるかの本を書こうと考えていたというのですから、精神が早熟な子供だったのです。こういうことを知ると、10才代の育ちで決まってしまうんだという説を支持したくなるんですが。。。


両者とも大成功した起業家で、まだ40才前後ですが、差はこんなにもできてしまいました。アメリカでは、成功した起業家が、社会起業家に向かう傾向がありますが、その先で、また影響力の競争がある、ここが面白い点です。


普通は、オミディアぐらいのことで、スコールは、社会を変えるために生まれた天才なんでしょう。ビルゲーツもスコールクラスです。


日本でも、金持ちになった起業家が、社会起業家を目指す時代が来ると思いますが、その先もずっとあるなんて、日本はだいじょうぶなんだろうかと心配です。