スタンフォード・ソーシャル・イノベション・レビューの「大胆に導け」に出てくる新概念で、財団が持つべき新しいタイプのリーダーシップのことである。


社会問題には二種あり、テクニカル・プロブレムとアドプティブ・プロブレムである。前者は、感染症を減らすようなことで、カネを集めてワクチンや抗生物質を買い、権威を使って投与する。後者は、環境問題の解決、公立学校の改革、飢餓やホームレスの撲滅で、関係者が多く、いろんな意見が対立してるので、問題解決には権威は無力、対立したステークホールダーが結集して、当事者が問題解決策を見つけるやり方である。


この二種の問題に対し、解決のアプローチは違う。アドプティブ・プロブレムに対し、テクニカル・アプローチを取り、失敗する例があり、ボタンのかけ違いを戒めている。


アドプティブ・プロブレムには、財団は、そのステータス、持っている資産、知識、専門性へのアクセス能力を使い、もっと大きな地域の問題に挑戦し、公権力をともなわず、リーダーシップを発揮して、社会革新を実行せよというのである。


やり方は、
1、何が問題かを財団が設定する。前期のピッツバーグの例では、市立学校区のボードメンバーの機能不  全。
2、ステークホールダーに拍車をかけ、問題の解決策を発見させる。ステークホールダーが、問題解決の機が熟してると思わせることが必要。ステークホールダー間の対立を、同じ方向へ導いて調停するので、後ろ向きで、無礼な対話や不愉快な公開論争になれてることが必要。
3、その場で、改革のコンセプトとビジョン、斬新な社会問題の解決策を開発する。ステークホールダーが、問題解決に自ら乗り出すよう引き込み、新思考で解決策を考えさせ、伝統的なやり方から離れ、ポジティブな変化をつくる。


この論文は、ハーバード大学のケネディスクール(公共経営学)で教え、財団のコンサルをしている3名の非営利法人を研究している学者が書いたもので、財団の新コンセプトを考案し、それを提唱している。


伝統的な多くの財団は、予め予見できること、結論の出口が見えることにしかカネを出さない保守的な傾向があり、アドプティブ・リーダーシップのような、やってみなくてはわからない、しかもリスク付、なことをやるのはアメリカでも異例なことであるが、でもそれを薦めているのは、行政でも企業でも解決できない問題がある、放置された問題があるのだから、それを財団がリスクをかけてやってみましょう、やり方はこうだ、社会が変革するという成功報酬があるので、レバレッジ効果は大だ、と社会へ提唱している。


彼らはこういことが上手で、なるほどと思わせるものがあり、Bスクールで学んだ学生もコンセプトにはまり、こんな仕事を始める。日本にだって財団はたくさんあるので、ちと、こんなことを考えてみてはどうかと思い紹介した。