今年最後のブログだが、この間日下公人さんとこんな話をした。
「日下さんは、最近講演や新聞のインタビューなどで現場崩壊とさかんにいってますが、何をさしてるんですか。崩壊で悲惨な日本になるのをいってるんですか」
「例えば、今月号の月刊諸君にトヨタのことが出ており、生産を拡大しすぎてリコール車が増えてることをジャーナリストが書いているが、そんな生産現場で日本の強さが失われて行くことだ。来年こんな現場崩壊の悲惨な事態が増えるんじゃないかと思っていっている」
諸君の記事は、トヨタでリコール車が増えてるのは生産を増強しすぎたからではないかという社内で行われている議論について書かれている。日本の生産現場は世界最強という信仰があったが、それがいよいよ崩れ始めてる警鐘である。
私は、現場崩壊と聞き、とっさにソニーの欠陥電池問題を思い出した。これなんかは現場崩壊のいい例である。サンヨーの再建がうまく行かないのもそうだろう。
生産現場だけでなく、公立学校の現場も崩壊し、信頼関係がなくなったので、あんなに不祥事が連発してるのだろうと思う。社会保険庁の現場も似たものである。自治体も崩壊を始めた。
日下さんが警鐘を鳴らしてる「現場崩壊」は、探してみるといろんな所に見つかる。それだけ崩壊してるものが多く、警鐘はなるほどである。
この10年は大企業や銀行が崩壊したが、景気が回復しても改革が遅れた所で崩壊が続くのはいわれてみればそうだ。これからのほうが、この10年よりも大きい感じはする。
現場崩壊の時代になるんだ、日下さんは、相変わらず時代の流れをつかまえるのがうまいと感心したが、同時に私にはこんな感じもある。
「現場崩壊と聞くと、半分は当事者の悲惨な状態を思い浮かべるが、残る半分は新建設が始まる事態でもあり、悪いことばかりではないのじゃないかと思うが」
「崩壊現場が再び強さを取り戻すことは、まだそんなに考えてないが、再建の仕方については今材料を集めてるところだ」
私は長い間社会起業家を研究してきたが、そんな視線からは古い現場が崩壊すれば、社会起業家が再建するさという楽観的な展望がある。だから、現場崩壊予測を聞くと、社会起業家の出番が増えるので、少しは嬉しくなってしまう。
創造的破壊とは、古い技術や制度が崩壊し、代わって新しいものがとって代わることで、これが資本主義のエンジンである。現場崩壊を時代に合わないものが崩壊することだと考えると、跡地に新しいものができることでもある。資本主義のエンジンが本格的に動き出す感じがする。
来年はそんな創造的破壊の年になりそう。崩壊の当事者は悲惨だが、反面建設も始まるので、若々しいエネルギーがあふれた所も現れる。来年はこんな明暗が鮮明な年になるんじゃないかと思って年を越す。