ゆずいろ♪タンバリン

ゆずいろ♪タンバリン

オカメインコのゆずちゃんと管理人のゆるーい絵日記。
かわいいゆずちゃんは我が家のアイドルなのですww

ニックネームを「ゆつ」から「おおぎけ」に変更しました。


【name】 ゆず
【type】 オカメインコ≪パイド≫
【sex】 女の子
【biethday】 2012/4/17


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ゆずが死んでから、2週間がたちました。

遠い遠い昔の話のような。

…実は嘘だったような。

そんな気がして、頭がぼんやりとかすんでいる日々です。




今、実家でこの記事を書いています。

二度と戻るものかと、紬を連れて家を飛び出してから、1週間。


今週に入ってから、紬は急に呼び鳴きを覚え、主人の命令で紬は実家に連れ戻されることとなりました。

動物禁止のアパートだったので、主人の気持ちもわからないではなかったのですが…

それでも、紬の前では無理な笑顔も自然に出るようになっていたので、、

少し考えてほしかったな、と。思っています。


誰に咎められるわけでもなく、飛んで、鳴いて、遊べる実家。

そこがゆずにとって楽園のように思えたのは、きっと幻でしょう。

何も考えない父がいた。

ただ、可愛がるだけの父。

ゆずはあんなにも父のことが好きだったのに、父にとっては「良いおもちゃ」だったのかと思うと、ゆずが不憫でなりません。



…いいえ。

父にはつい責める口調になってしまいますが。


私が父に求める「反省」とあまりにかけ離れているので、そのように考えてしまうのだと思います。

そんなことはないと、こんな結果が待っていなければ、胸を張って言えたと思います。



家族は確かにゆずを愛していました。

一心に、ゆずを思っていました。

どんなに疲れていたって、ゆずを囲むと、家族は元気になれました。


ゆずの、幸せそうな顔だけが見たくって。

嬉しそうな顔が、得意げな顔が、おねだりする顔が、ちょっと驚いた顔が。

たくさんのゆずを見たくって、話題はいつもゆずでした。





今、ふと目を上げると、空っぽの鳥かごがひとつ、部屋の隅においてあります。

ゆずが消えたその時のままに。


朝、ごはんをセットして、ゆずを入れてやるつもりでした。

おなかいっぱい食べれるように。

でも、太りすぎないように。


ちゃんと計って、ゆずのために、入れたごはん。

その日は、ちょっと喜ばせようと、ひまわりの種を忍ばせていました。

ゆずが掘り出して、嬉しそうに食べるのを楽しみに。

それを見て、仕事に行こう。

きっと今日はいい日になるぞ。



…あぁ。

わくわくしていたのが、嘘のよう。


こんな恐ろしいことになることを知らず、その時の私はなんと呑気だったのでしょう。


あの時私が一言、「ゆずは?」と聞いてさえいれば。

悔やまれて悔やまれて、なりません。

たった一言。

たったの一言で、ゆずを守れたのに。


守れなかった。



後悔でも。

懺悔でも。

言い訳でも。

ましてや、謝罪でも贖罪でもない。



涙がぽろぽろと流れ出るこの感情の名前を、私は知りません。


目の奥がぎゅっと痛くなって、自然と眉が寄って、涙が絞り出されてくる。

呼吸が詰まって、一気に吐き出される。

その時に出るのは、嗚咽です。


無力感がどうにもおさまらず、いつでも襲ってくる。



ゆず。

ゆず。



その名だけが、声に出ます。





ごめん。



その一言で片づけられるはずもないことをしたのは、十分に承知です。










今日、ブログを書いたのは、みなさんに、御礼を言いたかったからです。


多くのみなさんに、本当に助けられました。

ありがとうございます。


「ゆずちゃんは幸せだったんじゃないかな」

「ゆずちゃんにまた会えます!」

「虹の橋の下で、ゆずちゃんはまた、肩に乗ってきてくれますよ」…


本当に、救われる言葉でした。




「どうして逃がした」、「逃がしておいて何様だ」…

ブログを読んで、そう思われた方もあるかもしれません。

本当に気を付けてらっしゃった方ならば、そのお言葉も当然でしょう。

それでも、その言葉を押し殺していただいて、、ありがとうございます。


(本当は、責められてしかるべきかと思います)




それでも、家族が夢中でゆずを愛したこと。


憎しみも、悲しみも、飢えも、恐怖も。

5日間でたくさん味わっただろうけれど。


それでも、安らかに。

どうか、安らかに。




せめてもう、それしか願えない私にとっては、

みなさまのお言葉で、願いがかなったように思えました。


あぁ、きっと、ゆずは、

あたたかな虹の橋のたもとで、のんびり毛づくろいでもしながら、

また私を待ってくれていると。

家族の愛情だけに包まれて、少しだけ、お留守番…。




みなさまのお言葉は、「希望」となりました。



ゆず。


おばあちゃんになった私でも、見つけてくれるかなぁ。


ゆずちゃんのこと、皆にいっぱいお話したよ。


ゆず。大冒険したねぇ、えらかったねぇ。


ねぇ、ゆずちゃん。カキカキしてあげようか。


かゆいところは、ございませんか…?




たくさん、話をしよう。

きっとゆずは、顔をぷるぷると振るだけだろうけれど。

途中で飽きて、肩の上で毛づくろいし始めるだけだろうけど。

あきれた表情でも、私は泣きながら、でも心底笑うでしょう。


ゆずちゃん。

だぁいすき。









コメントをいただいた方の中にも、愛する子を失った方もおられました。

ご自身もつらいでしょうに、気遣っていただきました。


羽根だけでも、ゆずが帰って来れたこと。

喜んで、くれました。


私には、冷たい土の中に思えても、温かなおうちの土だと、言っていただけました。



…私にはない強さを、感じました。

悲しみを抱えながらも、人の心に寄り添える強さ。





無理だと。

これは現実だと、分かっていても。


少し前まで、ゆずはたしかに生きていた。

血が通い。

意思があり。

甘えて。

怒って。

鳴いて。


時間を戻してほしい。

あの、幸せな時間を返してほしい。


無事な姿で、ゆずを返して欲しかった…!




そう思うと、私はまだ、強くはなれない。

いっそ、誰かが私に裁きを加えればいい。

ゆずと同じ苦しみを。

そうすれば、何かが見えるでしょうか…





強さとは、何でしょう。

悲しみを乗り越えるとは、どの状態をさすのでしょう…。









あとひとつ。

前回の記事を、転載していただいた方がおられます。

その方は、繁殖もされているとのことで、飼い主様の注意喚起になればと、おっしゃていただき、今回のご縁をいただきました。


どうか…

どうか、ジェミー様の子どもたちが、幸せな生涯を遂げられますように。




そして、いたち猫様。


せっかく譲っていただいたゆずを、こんな形で亡くしてしまって、大変申し訳なく思います。

今さら何を言っても言い訳にさえならないでしょうが…

その日その日、注ぎうる限りの愛情を、ゆずには与えてきました。

本当に、ゆずは幸せな表情を浮かべるようになっていました。


こんな形になって、言えた義理ではありませんが、

ゆずと、出会わせてくれて、ありがとうございました。


この二年間、私は…私たち家族は、本当に幸せでした。





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今回の記事で、ゆずいろタンバリンの更新を、止めさせていただこうと思います。


…と申しますのも、紬のブログを開設させていただいたからです。




決して、紬はゆずの代わりにはなれません。

紬は、ゆずの代わりではありません。

ゆずよりもちょっと後に来た、大切なもう一羽の家族です。

(まだまだ、心は通じていませんが)

しかし、こうして縁あって迎えたものの、そうして可愛がる姿は、ゆずを忘れたと感じられる方もおられるかもしれません。

私の周りにも、そう言う人がいます。

ゆずは、代わりができればそれでいい存在では、決してないのに。

紬は、どうでしょうか。

自分を見る目に、何か他のものが見えているのでしょうか。

分かりませんが、自分が一番でないことは、勘付いているようにあります。

また紬の中にも、前の飼い主が映っているようにあります。

紬のことを、理解できるか。

私は紬に信用されていくか。

これから何年かかるか、十何年かかるか分かりませんが、きっと、かけがえのない存在になると思います。

ブログを通して、その記録を残しておきたいと思いました。



ご不快でなければ、また見てください。




ゆずつむぎ




ゆずと同じには、できない。

分かってるよ。


指が怖い。

声が怖い。

顔が怖い。

存在が怖い。


それでいいからね、紬。

こわいよね。



ゆずちゃんのこと、これからいっぱい、話してあげる。

私の大切な大切な、紬のおねえさん。


かわいかったんだよ。

えらかったんだよ…!



せっかちなゆずと、おっとりした紬。

きっと、いいコンビになれたのにね。


見つけてあげられなかった、ゆず。






何度も言うよ。


愛している。

ゆずがくれた愛も、絶対、忘れない。


ありがとう。

本当に、ありがとう。ゆず。




どうか…安らかに。


きっとまた、会える。

その時は、きっとまた、肩にとびのってね。


ゆずちゃん。

だぁいすき…。


大好きよ…。



みぃんな、ゆずのこと、大好きだからね…

忘れないでね…!









約束。


きっと叶う。


願いじゃない。…約束。






きっと、いつか。




















読みにくいところばかりで、申し訳ございません。

心が叫ぶままに、書いてしまいました。


ゆずがいなくなってから、たくさんのコメントを、いただきました。

励ましがあって、ゆずを信じて5日間走り回り。

励ましがあって、紬を受け入れられるようになりました。


ありがとうございました。

忘れません。

きっと、忘れません…!


本当に、ありがとうございました。



昨日、ゆずが見つかりました。

猫に喰われて、死んでいました。


見つかったのは、羽根だけでした。

多分、内臓なのでしょう。

赤いものに、無数のアリがたかっていました。


死んだのだと、思いました。




呼んでも呼んでも、返事はなく。

新聞に掲載してもらい、チラシやポスティング。

夜明けを待って近所を回り、仕事終わりで近所を回り。


空のカゴを持ってうろうろする私に、最初の目撃情報が入りました。

「松の木に止まって、呼び鳴きしていた」と。

東の集落でした。

ゆずが消えた西の集落に重点を置いていたので、その声が届かなかったのです。

呼んでいたのに、ゆず。

私を。

「昨日、そこの電線に止まってた」

「昨日、その辺飛びまわってた」・・・


どんどん、目撃情報が出てきました。

家族は、活気にあふれていきました。


きっと、見つかる。

笑って、この時のことを語れる日がくる。

ネットでも、見つかっていること、あるじゃないか!

なぁに、ゆずのことだ。

おなかがすいたら、誰かにくっついていくよ!


・・・そう、期待を持ちはじめていました。




そして昨日、はじめて範囲をしぼっての聞き込みに切り替えました。

土曜日なので、田舎の人通りの少ない近所にも、チラホラ人の姿が見え始めました。


ゆずの目撃情報が多かった地区を重点的に回り、聞きこんでいきました。


おばあちゃんが言いました。

「昨日、そこで飛んでるの見たよ」


近いことを確信しました。

ゆず。

もうすぐ会える、いとしいゆず。


聞き込みにも、熱が入りました。

さぁ、おばあちゃんの次の家です。



チラシを渡して、夫婦は首をかしげました。

とりあえず渡して、次の家へ…。



その時、夫婦が私を呼びました。



「ちょっと、来てくれる?」



工事の左官屋さんと、先ほどの夫婦が、畑の中にいました。

視線が、下です。

いやな予感がしました。




「昨日、猫が食べてたんだけどね」





ゆずでした。

まぎれもなく、ゆずの羽根でした。


いつも綺麗にしていた羽根。

そろそろ生え換わりの時期で、一本抜けるたびに、「ギャッ」と叫んでいました。

食卓の上を歩きまわるので、尻尾が醤油で汚れてしまって、嫌がるゆずをつかんで洗ったけど、なんかくさくて。

家族で、笑いの種だった、ゆずの毛づくろい。

綺麗に綺麗に整えた翼が、土にまみれて、血にまみれてちらばっていました。

翼の形はそのままに。

体だけ、喰われてありませんでした。



あれだけ触りたかった羽根に、私は触れました。

ダラリと、すべての羽根がくっついてきました。



その瞬間

「終わった」、と思いました。

ゆずを探す生活も、ゆずとの思い出も、ゆずとの未来も。

家族も。


家族は、ゆずを中心に回っていました。

訳あって、絶縁状態にあった家族との距離を戻してくれたのは、ゆずでした。

家族に笑顔が戻りました。

ゆずがいて、家族はとても幸せでした。



「ゆずがいるから、お姉ちゃん、おうち出れないなぁ」



ゆずに、そう言ったことがありました。

結婚して半年。

鳥が飼えるアパートがどうしても見つからず、私はゆずを実家に残して、家を出ました。

それでも、金曜日の夜は実家に泊まり、土日をゆずと過ごしました。

ゆずが大好きで、離れようとしない私に、主人はあまりいい顔しませんでした。


ゆずは私が言った言葉を、覚えていたのでしょうか。

自ら出て行ったとは思いませんが、前日から、ゆずはみんなに甘えんぼでした。

ひとりずつ愛想をふりまいてまわり、最後疲れたのか、部屋に戻る私についてきて、膝の上で寝ていました。

ゆずの寝顔はとても満足そうに見えて、私はとても幸せでした。

ゆず、ずっと一緒にいようね。

おねえちゃん、ゆずのために、庭の広い大きなおうち建てるからね、ネット貼って、そこで遊ぼうね。

何度も何度も、繰り返し言ってきた言葉でした。


ゆず、大好き。


翌日、こうなることも知らず、私はゆずに口づけして、かごに寝かせました。

隣で布団をしいて寝て、朝、ゆずを起こして台所に行きました。


本当に、いつもの光景でした。

ゆずがおとなしかったのと、お父さんとお母さんがバタバタしていた以外は。




『ゆずがついてきとった!!』





父の叫びの言葉を、私は一生忘れないでしょう。

それは、この幸せな生活の終焉であり、新たな嘆きの始まりの言葉だったからです。


パニックで大空に弧を描くゆずを、同じくパニックで崩れ落ちる父を押しのけて追いかけました。



「ゆず!」

「ゆず!」

「置いていかないで!いかないで!」

「…、ゆず!」



ゆずに、言葉は届きませんでした。

そしてゆずは、西の集落に消えました。


それが、私とゆずの最後でした。




道路に泣き崩れる私を慰める母の手を、うとましく感じました。

母の手には、包帯がありました。


1カ月ほど前に仕事で指をちぎって入院し、退院したところだったのです。

仕事ができないために家にこもり、四六時中ゆずをかごから出して連れて歩く姿に、私は言いました。


「ゆずは鳥だから、逃げたら最後。

 慣れて、外に出ることだけは絶対にしないように」


母は笑って、「ハイハイ」と言っていました。「ゆずはいいこだから、大丈夫だよね」と。





…全然大丈夫じゃなかった。


逃がしたのは父だけれど、あの日の朝は、何かがおかしかった。

何か不吉な予感はあった。

めざましテレビの占いは、1位だった。

仕事のことかな、と漠然と思っていた。

だってあの朝は、本当に幸せな朝だったんだもの。


ゆずをしっかりと、連れていればよかった。

父なんて、信用するんじゃなかった。




呆然と、畑に膝をついてゆずの羽根をつまんでいる私に、奥さんが、ビニール袋と新聞紙をくれました。


突然来て、泣いている私に、優しく肩に手をあててくれました。

事情もよく分からなかっただろうに、何度かうなずいてくれました。



ゆずを探してもらった人たち、ゆずを信じてくれた人たちを、思いました。


ゆず。

ゆず。


それしか言えませんでした。

母に電話しましたが、つながりませんでした。



「きちんと埋葬してあげてね」



奥さんが言って、鈍い頭で私は、「埋葬」と口の中で反芻しました。


おかしな話、ゆずの羽根は、私にとってはコレクションだったのです。

初めて抜けた羽根から、毛づくろいのたびに抜ける羽根をどうしてもほかせず、また、それを猫じゃらしのように遊ぶと、ゆずは嫌がりながらも楽しそうにかじっていたのです。





そうか。

「遺骸」なのか。

コレが。





奥さんに御礼を言って、家に帰りました。

途中、また母に電話しましたが、まだ話し中でつながりませんでした。


帰って、「ゆず」と言うと、母が喜んで出てきました。

ついに戻ってきてくれたと思ったのです。


新聞紙の入ったビニール袋を差し出すと、母の顔がキョトンとした顔をしました。

腕の力が抜けた私からひったくるようにそれを奪い、奥に入って、新聞紙を開けました。

母の悲鳴が、奥から聞こえました。




「ゆず!」




本当にゆずなのか、と。

母は聞きました。

母も、間違えるはずはありません。

あれだけ愛した、ゆずなのですから。


羽根だけを見て、そう思ったのでしょう。

でも、真っ赤な内臓を、私は見ています。


間違えようがない。





ゆずは、死んだ。

私が、殺した。





玄関先で、泣き崩れました。


玄関の開く音で、ピーピーと呼び鳴きを始め、「お帰り。早く出してよ!かまってよ!」と主張していたゆず。

扉を開けるのに合わせて、器用に出てきたゆず。

待っていてくれる存在が嬉しくて、いとおしくて、幸せで。

ゆずも幸せそうな顔でじっと顔を見つめた後、くいっと頭を下げてくるから、また幸せだった。





おうちに、帰ってきたよ、ゆず。

おかえり。

ゆず。


でも、おねえちゃん。

生きて帰って欲しかったなぁ…!!





友達が近所を回ってくれていたので、電話しました。

泣いてくれていました。

チラシを配るのを手伝おうと、また別の友人が来ました。

ゆずの羽根を見て、それにこびりつく血を見て、何があったのかを一瞬で悟りました。



母の、甲高く説明する声が耳触りで、私はゆずの部屋に敷いていたふとんに顔をうずめました。



ゆずの気配を、足裏に感じました。

嘴ではさんで器用に乗っかり、とことこと、ふくらはぎからふともも、背中を伝って、肩甲骨の上で止まり、一度体をブルブルした後、「ふぅ」と一息ついて、ふっくりと足を体にうずめるのです。

いつも、そうでした。

寝ている私の上を歩きまわるのが好きでした。

いつものように寝返りを打って、ゆずがそれに合わせておなかの上に移動したのを感じて、私は幸せな気持ちで目を開けました。


遠くに羽根を包んだ新聞紙の塊が、開いた両足の隙間から見えていました。

幻のゆずは、かごを置いていた台の上から、じっとこちらを見つめていました。




部屋をぐるっと見渡しました。

たくさんの、ゆずがいました。


ゆずを肩に乗せてパソコンをしていると、必ず指先まで降りてきて、キーボードの上を歩くゆず。

腕に止まって、一度嘴をギョリギョリさせた後、嘴の隣の毛をふくっとさせて、こちらを見上げるゆず。

可愛くて、みんなに自慢したくて、写真を撮ろうと取り出したケイタイの、充電器の差し込み口をわざわざはずしにきてくれるゆず。

私の動作ひとつひとつに、ゆずがいた。


飽きて、絨毯の上に飛び降り、絨毯に足をとられながら、ふかふかと歩く姿の、愛らしさ。

初めてゆずが来た日、いつの間にか寝てしまった私が起きて大きくのびをしたら、ゆずも同じように伸びをしていて、目が合った瞬間、初めて下の止まり木に降りてきてくれて、「チュン」と言ってくれた、嬉しさ。

頭カイカイが好きで、あっちこっちとねだってくるから、「首が180度回ってる」だの「首が取れそう」だのって、笑っていたあの日。

わざわざ洗濯ものの上に、フンをしていたね。

怒りながら、それでも笑っていた。


ゆずが初めて飛んだ日。

ゆずが初めてアクシュをした日。

初めての誕生日。

全部全部、覚えている。



ゆずの誕生日ごとにフォトブックを1冊作って、20冊、30冊と並べるのが、夢だった。

置き場所どうする?と笑っていたそれは、2冊で終わった。


あちこちにゆずの羽根が落ちていて、取りきれていないフンがあった。

ゆずの気配が、あちこちにあった。




カゴの上から、ゆずがじっと、こちらを見ている。

おいで、と。

私は笑って、人差し指を水平に向けた。

ゆずは、消えた。





死んだ。






また、泣いた。


ゆずは、お父さんが大好き。

そのお父さんが連れて行ってくれる次の扉の外の世界は、きっとまた、楽しい世界なんだと、ゆずは信じて疑わなかったんだろう。

だから、ついていったんだろう。


帰ってきてほしかった。

きっと無事で、帰ってきてほしかった。


もう一度、ゆずのあたたかな羽毛に触りたかった。

もう一度、ゆずを笑顔で囲んでやりたかった。


おなかがすいたんだろう。

少しでも、食べれるものをと下に降りたところを、猫に見つかったんだろう。

おしりふりふり、可愛く歩いていたゆずを、どうして猫は襲えたんだろう。

あんなに愛らしい子。

あんなにいとおしい子を。


どうして…!






どうして、私の願いを、神様はかなえてくれなかったんだろう。

そんなに私は、幸せになっちゃ、いけない人間ですか。



あと、少しだった。

近くまで、たどりついていたはずだった。

目撃情報があってから、重点的に探していた。

朝と夜、ゆずの名前を叫びながら、鈴を振って探した。


あと、本当に少しだった。

もう少しだった。

もう少しだったのに…!!



怖かっただろう。

痛かっただろう。

おなかも、すいていただろう。


苦しかっただろう。

寂しかっただろう。

寒かっただろう。

失望しただろう。



それら全てに耐えて、5日間も頑張って、ゆずは待ってくれていたのに。

応えてやれなかった。

私は、ゆずの保護者として、最悪だった。





ごめん、ごめんよ、ゆず。



父にいくら謝られても、許せるはずのない言葉を、私は繰り返す。

返る言葉はない。

伝える言葉もない。

ただ、気持ちだけを乗せて。


許しは請わない。

ただ、私を幸せから引き摺り下ろすためにゆずと巡り合わせたのならば、

私は運命を許さない。

神を許さない。


今後決して、祈らない。







ゆずの羽根を庭の裏にうめた。

墓石は、あとで建てよう。

線香をあげて、煙の先を追った。


私からのメールを見て、研修帰りに寄ってくれた主人は、何の言葉もなく、表情も変わらなかった。


私は、実家を出ようと思う。

もう、たくさんだ。







先日、ゆずを呼ぶかもしれないと、近所の鳥好きの方が、オカメインコを1羽、貸してくれていた。

ゆずとそっくりの、オカメインコ。

背中の模様がゆずと違っていて、それでも、父の表情は和らいだ。


私は、複雑だった。

和らいだその表情は、「オカメインコならなんでもいい」という風に見えた。


「代わりができたから、これでいいか」

父の心の奥底の声が、聞こえた気がした。





ロストバードにも慣れっこのその方は、ゆずの結末を聞いて、残念がってくれた後、カラリと笑った。


「その子を育ててやってくれ。

 今は、ゆずと比べるかもしれないけど、数年たったら、きっと一番になるから。

 ばぁさんが挿し餌で大事に育てた鳥だ。

 手乗りじゃないし、もう3年になるけど、人には慣れてる。

 きっと、大事にしてくれ!次は、羽根は切っとけよ」



お断りできる雰囲気じゃなかったし、精神状態でもなかった。

勢いに呑まれて、母がうなずいた。

母が、さみしかったのだろう。

ただ、ゆずとの違いに、余計に悲しくなるんじゃないかと、一抹の不安が、胸を横切った。






ゆずとの思いをつむいで欲しい。

一度は返しに行ったはずの鳥にそう願って、私は「紬(つむぎ)」と名付けた。



名前もなく、その子は3年、かごの中にいた。

初めてあびる注目に、紬はとまどっていた。


今日、紬をつれてアパートに帰る。

動物は飼えないところだけど、一人遊びを覚えている紬なら大丈夫のような気がした。







ゆずのかごには入れたくなかったので、新しいかごをもうひとつ買った。

ゆずのかごは、また空っぽになった。


空っぽのカゴを見つめ、これから何十年とゆずを探し続けるのと。

死んだ事実を突き付けられるのと。

どっちが良かったのだろう。





もしもまだ、この世に信じれるものがあるならば、

この一連の出来事の意味を教えてほしい。


ゆずは、どうして私たちとめぐりあったのか。

そして、最愛となったゆずを失ったことは、これからの人生に何の意味を為すのか。


それでもゆずは、幸せだったのか。




ゆず。

ゆず。

悔やんでも、悔やみきれない。



落ち込む父を、「疲れていたんだよ」と慰める母の姿さえも、にくい。

家族はまた、バラバラになった。







ゆず。

ねぇ、ゆず。



いとしいゆず♪ 可愛いゆず♪


ゆーちゃんゆーちゃん、ゆずゆずゆずちゃん♪







この一週間。

みなさんに支えられました。


いつも歌っていたへたくそなゆずの歌を歌いながら、肩に乗せたゆずの姿を想像し、折れる心を奮立たせて、ゆずを探してきました。


ごめんなさい。

支えてもらったのに、本当にごめんなさい。

みなさんの願いに応えられなくって。








ゆず。


もう、「ピィ」と返事してくれる声は、ないんだね。



怖かったでしょう。

本当に、怖かったでしょう。

痛かったでしょう。

苦しかったでしょう。

おなかもすいたでしょう。


さぞや、家族を恨んだことでしょう。




それでも。

迫りくる恐怖の中、一瞬だけでいい。


私たち家族が一心に注いだ愛情を、一生分の愛情を、、

思い出していてほしい。



こんな結末になったけど。

もう二度と、会えないけど…っ!


幸せな時間は、確かにあったと…!!

どうか、思い出していて欲しい…!






ゆず。

一瞬だけでいい。


もう一度、声を聞かせてほしい。





ゆーちゃん。

だぁーいすき。


ほら、返事は?



ピーは……?








ゆず。

ゆず…?








おはようございます。

5日目の朝、今朝もゆずの気配はありませんでした。


まずは、これまで皆様に支えていただいている御礼を申し上げます。

本当に、ありがとうございます。


簡略ですが、すみません。

本当に、すみません。


なんだか、体が思うように動かず…




まずは、皆様に情報を寄せていただいている、大阪守口市のオカメちゃんについて…

家族とも確認しましたが、ほっぺの色が、濃いようにあります。


気にかけていただいたのに、申し訳ないです。

しかし、きっと、ゆずも保護されていると、希望が持てる投稿でした。

きっときっと、飼い主さんが見つかります。

正直、うらやましいです。




そして、ゆずについて。


昨日も、ゆずらしき鳥を見かけたと、家から少し離れたところのご家庭から連絡がありました!

きっと、生きいる…!

まだ生きている…!


しかし、会えません。

どこにいるのか…




どうして、会えないのか。





また、少し落ち着いたら、更新させていただきます。


返る声のない名前を、何回も呼びました。




ゆず。

忘れないで。


あなたを思う、家族がいること。



きっと、きっと。





ゆずも、希望を捨てないで。