救急搬送 受入拒否について考えてみる。 | けせらせら! 膵炎生活

けせらせら! 膵炎生活

2012年、26歳の時に膵臓に嚢胞が見つかり、嚢胞肥大による急性膵炎を発症。

仮性嚢胞と診断されるも、よくよく検査をしたら粘液生腫瘍だったことが判明。
タヴィンチを使用して腫瘍摘出した。

 世に言われている救急外来の受け入れ拒否問題について、

「受け入れ拒否ではない、受け入れ不能なのだ。診たくても、診ることが不能。苦渋の「断念」だ」

 と、訴えるコラムを見つけました。
 
 私のブログ、第一記事に「受け入れ拒否されました」と赤字で書いてしまったもんですから、
うをおおお、と思ってびびりながら拝読したわけですよ(笑)

 ……ごもっともな意見だし、我々患者として救急車を使用するモラルについて、再度己を鑑みる必要があるのは重々承知。けれども……何かがひっかかってしまうので、記事を書かせていただきたいのです。

(引用ココカラ)

 救急に限らず、患者さんにとっては自分が全てです。
しかし、医師はその方だけを診るわけではないのです。
すでにベッド上で苦しんでいる方、苦しみながら待合室で待機している方、そして病院を探している患者さん。
すべての方に対応しなければならないのです。

 もし目を離すことができないほど重症の患者さんの治療にあたっている時に、新たに重症の救急患者さんを受け入れることが責任ある医師の行為でしょうか。
身体は一つしかないのですから、安易に受け入れた場合にはどちらかの患者さん、または両方への対応がおろそかになります。
そうなれば不幸な結果を一つ、いやもしかすると二つも招くことになるかもしれないのです。(以下略)

(引用ココマデ)

 
 確かに、どんな職種でも「できない事はしない」「できない事をできると言わない」というのは大原則。
そんなあたりまえの事を「どうにかしろよ」と言う道理はありません。
 

 理性ではね。


 例え訴訟リスクを避けるためであれ、満足な治療を行う環境が整っていなかったからであれ、
受け入れを断られた患者に「悪意を持つな」なんて、私には言えない。


 患者さんはさ、医者に命を委ねるんだもの。
ダメですって言われて、はいそうですかお邪魔しましたなんてあっさりひきさがれないでしょう。


 救急はそういう、葛藤渦巻く現場なんだ、とも言えるのではないでしょうか。


 いや、わかってるんですよ。
 そもそも医療という枠組みの基盤に限界が来ていたり。(医者減ってるし過酷だし)
 救急の数が減少する一方で、患者は増えていたり、
 モラルのアレなモンスターペイシェントがいたり。
 日々、心身を削る様にして医療に貢献するドクターの存在だって。
 大震災の時、とっくに限界を超えているにもかかわらず、必死で奮闘したドクターがいるって事だって。


 そんな過酷な状況で命はってるのに、悪意を向けられてしまうのでは堪らないですよね。


 しかしまぁ理不尽な事に、顧客からの悪意というものは背負ってゆかねばならないのが職業人であって。
 どの職種でも多少の違いはあれど、大抵はこの「悪意」を背負い、時々人から恨まれながら明日もいつも通りに仕事をして経済を回すのがオトナなのであって。

 あーやだねやだね。大人はやだね。


 生徒にとっては自分の人生が全てです。
  しかし、教師はその生徒だけを教える訳ではありません。
 
 顧客にとっては自分の資産が全てです。
  しかし、FPはその顧客だけを資産運用する訳ではありません。

 被告人にとっては自分の将来が全てです。
  しかし、弁護士はその顧客だけを弁護する訳ではありません。


 あーあ、こんなに例文書いちゃって。私も大概悪意に塗れた大人なんだろうか。


「受け入れ困難」という現実はもっと世間に知られても良いはずだし、その点は「たらいまわし」とか「受け入れ拒否」とかいう言葉を使いたくないという気持ちはわかるけれど、救急で働く以上はその葛藤から逃げられないわけで。


 私は、一顧客としてモラルを保つ者を目指す代わりに、
一患者の視点で記すこのブログの「いちばん伝えたいこと」という記事は、
できれば修正したくないと思っています。


以下、救急車要請に関わる事件や資料など。
お時間のある時に是非。


産経ニュースニュースの確信
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120629/stm12062911200002-n1.htm


さいたま市南区の路上で昨年6月末、車いすの女性=当時(38)がはねられ、12の病院に救急搬送を断られてその後死亡した事故から、間もなく1年となる。その後、救急医療体制はどう変わったのだろうか。

 女性は、4病院には「処置が困難」として、8病院には「専門医がいない」との理由で次々と搬送を断られ、最終的に受け入れ先の病院に到着したのは翌日午前0時55分。
 同日午後、搬送先の院で骨盤骨折のため死亡した。

 この事故を受け、市消防局では、受け入れ要請を4回以上断られたり、現場滞在時間が30分を超えた場合は、これまで救急隊だけで行っていた搬送先の選定を本部の指令課とともに行うというルールを決めた。

(抜粋は以上です。詳細を知りたい方は上記URLをクリックしてくださいね)


現時点で指摘される問題点まとめ。(主観でまとめた物です。あしからず)


1.専門外の患者を受け入れる事によって高まる訴訟リスク。

 入院治療を要する2次医療機関では、夜間休日の時間帯に当直を務めるのは各科の専門医。専門外の患者の受け入れには、訴訟リスクがつきまとう。よって、「専門外」という理由で受け入れを断った病院は多い。
 

2.救急医療の抱える不採算性と、患者の増加。

 医療費は患者を収容して初めて支払われるため、待機している間の経費がかさみ、救急科を維持できる医療機関は年々減少。残った救急医療機関に患者が殺到。現場のスタッフが疲弊し、またもや救急告示を降ろさざるを得なくなるという悪循環が生じている、と、警告されている。

 患者の増加に関しては、下記Pdf参照の事。
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2403/240302_1houdou/03_houdoushiryou.pdf
 増加した674消防本部に要因と思われる事由を質問したところ(複数回答)、
「急病の傷病者の増加」が558本部(82.8%)、
「高齢の傷病者の増加」が526本部(78.0%)、
「一般負傷の増加」が357本部(53.0%)、

3.利用患者のモラル低下

 理不尽な要求・苦情・暴言・暴力を起こすモンスターペイシェント、独居高齢者、ホームレス、さらに保険証を持たない外国人、薬物中毒患者、自殺企図患者等々、単に医学的側面だけでなく、さまざまな「社会の病理」を抱える多くの患者に、振り回されてしまう医師の問題もある。
 他にも、明らかに軽傷患者の利用も目立つとの事。

 それに隠れてしまって、救急車の出動要請を断られたり、受け入れられずに救急車内で亡くなったりしてしまうケースが相次いでいるのも事実。