吉良邸討ち入りにおいて、決して逃げたのではなく、
死を果たせなかった二人の男の半生。
武士たちの物語でありながら、斬り合うシーンはほとんどなく、
人の心のひだが丁寧に描かれています。
討ち入り前日、瀬尾孫左衛門(役所広司)は、
大石内蔵助(片岡仁左衛門)から、まもなく生まれる隠し子を
内密で守るよう、そして、生き延びて、討ち入りの真実を伝えることを
懇願されたのだった。
以来16年、孫左衛門は武士としての身分を捨て、骨董を扱う商人として
かね
美しく成長した可音(桜庭ななみ)に仕えてきたのである。
可音をしかるべき名家に嫁がせるのが使命。
大商人の息子に見初められた可音は、孫左衛門と離れたくないと
婚礼を嫌がり駄々をこねる。
ふたりの間には、父娘のような情だけではない
恋愛のような感情も芽生えていたのであった・・・。
赤穂浪士の家族のもとを尋ね歩いていたという、
これもまた辛いお役目だったのである。
無二の親友だった二人は、はなればなれになったうえ、
お互いの事情も知らされておらず、
”生き残り”という 孤独 と 世間からの責め苦 にあっていた。
この辛い思いを吉右衛門が虚空に向かって吐き出すシーンは、
胸が詰まります。
孫左衛門と可音の言葉も何もないけれど、熱く想い合う眼差しと心が
かえって艶かしい。
この結末は、、、
役所さん扮する孫左衛門の頑固なまでの武士としての心意気を
見せつけられます。(かなり壮絶でしたよ~)
人のために己を捨て、内蔵助からの命(めい)を全うした・・・。
だから、元太夫だった ゆう (安田成美)も惚れたのでしょうね。。
池宮彰一郎氏の小説を映画化した作品。