蒼冠塾


敢闘 二十一



人類の未来を仰ぎ見るように、山本伸一は目を細


めて語っていった。


「資本主義、自由主義の国々にあっても、やはり、


人間革命が最大のテーマになってきます。人間の


エゴが、野放図に肥大化していけば、社会の混乱


は避けられません。


さらに、戦争などの元凶もまた、その人間のエゴに


こそあります。


どうか諸君は、社会にあって、大指導者に成長し、


仏法の人間革命の哲理を訴え抜いていってください。


二十一世紀は、諸君の双肩にある。諸君の成長こ


そが、私の最高の喜びです。


この『学生部厚田会』に、私が作った『人間革命の歌』


のテープと、カセットデッキを差し上げます。


『厚田村』のテープも置いていきます。これらの歌を


聴きながら、生涯、父母のため、民衆の幸福のために、



蒼冠塾


威風堂々と、広宣流布の大道を歩み通してください」


これが、中部学生部に対する、この夏季講習会の


「最終講義」となったのである。


伸一は、敢闘していた。励ましの一場面、一場面が、


人間触発の格闘劇でもあった。


七月三十日からは、舞台を神奈川県箱根研修所


(現在の神奈川研修道場)に移し、男子中等部や


東京・新宿区の女子部などの夏季研修会に出席し、


指導を重ねた。


引き続き、創価大学などでの各種研修会に臨み、


八月六日には、鹿児島県の九州総合研修所


(現在の二十一世紀自然研修道場)に飛んだ。


そして、十二日に東京に戻り、三日間にわたる茨城


指導、創価大学での諸行事を終えると、再び十九日


から、九州総合研修所を訪れたのである。


彼は、一分一秒が惜しかった。人と会い、人と語り、


一人ひとりの心に、発心の光を注ぎ、一騎当千の


人材を育てることに必死であった。すべての戦いは、


時間との戦いといってよい。行動をためらい、時を


浪費した者が、敗者となる。


「時間をかちとることは、勝利を意味する」(注)とは、


中国の周恩来総理の命の叫びだ。



注) 新井宝雄著『革命児周恩来の実践』潮出版社




   =2010年6月28日・聖教新聞=