蒼冠塾


敢闘 十五



山本伸一は、七月二十四日にも、中部第一総合研


修所での勤行会に出席した。二十五日には、ドクター


部、教育部の代表や、三重の功労者らと共に記念撮影


し、激励を重ねた。


そして、二十六日には、研修所で夏季講習会を開催


していた、中部学生部の代表を励ましたのである。


伸一は、前日、彼らが研修所に到着したことを聞くと、


すぐに伝言を託した。


「君たちは、将来、学会の、また、社会のリーダーに


育っていく人なんだから、民衆を守り、民衆に仕えてい


く精神を、しっかり学んでもらいたい。


その意味から、研修会の期間中は、寸暇を見つけて、


研修所の草取りや清掃に、汗を流すようにしてはどうか。


学生部員の労作業で、会員の皆さんに、研修所を気持


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ちよく使っていただくようにする意味は大きい。


また、三重記念館に展示された歴代会長の記念の


品々も、よく心にとどめてください」


この伝言を聞いた学生部員は、御書講義や教学試験


などの諸行事の合間に、喜々として研修所の清掃作業


に取り組んだのである。


その報告を受けると、伸一は言った。


「みんな、清掃に頑張ってくれたのか。ありがたいね。


学生部員は、将来、全員が、大リーダーになる大事な


人たちだ。だからこそ、会員のために、陰で労作業に励み、


尽くしていくという精神を、身につけてほしいんだよ」


―― 「大学は、真理を追求し、人類に奉仕することを


願い、人間性を端的に表出しようとするものです」(注)


とは、ドイツの哲学者ヤスパースの至言である。


しかし、大学をはじめ、社会から、その教育は失われつ


つある。奉仕の精神が欠落した青年たちが、指導者に


なっていったら、二十一世紀は暗黒の世界となろう。


だからこそ、伸一は、学生部員たちに、この講習会を


通して、奉仕することの大切さを、その意義と喜びを、


教えておきたかったのである。そこに、善の創造が


あるからだ。




注)ヤスパース著『大学の理念』福井一光訳、理想社




   =2010年6月21日・聖教新聞=