めちゃめちゃお久しぶりのブログです。
ツイッターに連投しようかとも思ったんですが、長くなりそうだったのと
記録に残しておいて、あとで見返す自分へのセーブポイントとして。
肺がんを患って長らく入退院を繰り返していた父が、
今月９日に亡くなりました。
良く言えば威勢のいい大声と江戸っ子ながらの短気のひとだったのに、
最初は喉の違和感から、だんだん声が出なくなって。
気道拡張の手術をしたときに喉の奥に入れた網を
咳きこんだときに吐き出そうとするようにいきむ癖がついて
いきなり血が集まるので顔はむくみで腫れあがって、意識をなくすようになって。
抗がん剤の副作用で髪の毛も立派な眉も綺麗に抜け落ちて
薬の休薬期間に草原みたいに生えてくるのが不思議でした。
買い物に行くのが大好き、というか、
冷蔵庫を食材で埋め尽くして備蓄しておくこと、家族にひもじい思いをさせないことを
何よりも重んじていたひとだったので、
いつ意識がなくなるかわからなかった時でも
人目を盗んでこっそり車を自分で運転してスーパーに行って帰ってきてしまって
あまりの無謀さに家族全員で怒ったこともありました。
食べることに人一倍こだわりがあったはずなのに
薬の副作用で味覚も失って、食事のたびに悲しげにしていました。
だんだん食べる量も減っていって、どちらかというと細身な体は棒きれみたいに痩せて
退院してきて家にいる時も息が苦しくて横にもなれず、曲がった腰をさらに曲げて
リビングの机に突っ伏している姿が、
わたしはいたたまれなくて、ずっと逃げて避けてました。
この数年間ずっと、母が仕事の合間を縫って
毎日お見舞いに行っていました。
容体が急変したのは、結婚記念日の次の日でした。
ちょうど兄弟も休みが重なって、わたしも知らせを聞いて仕事を早退して急行して
父のお姉さんも駆けつけて
夕方、病室で見つけた父にはもう意識がほとんどなくて、
長距離を走ったあとのような荒い呼吸で
ただただ酸素マスクから供給される空気を取り込んでは吐いていました。
お医者さんの説明で、肺炎にかかっていること、
気胸になっていること、
体力が底を尽きていて今日を乗り越えられるかわからないこと、
などが告げられて
祈るような気持ちで、母も、姉も、兄も、兄のお嫁さんも、弟も、わたしも、
かわるがわる声を掛けました。
仲の良かった看護婦さんが訪ねてきてくれて、
『お父さん、病院の人気者だったんですよ』って話をしてくれて。
家にいる時の、何かあればすぐ怒り出す爆弾のような
むっつりとテレビを観ている父の姿しか頭になかったわたしは、
病院にいる人たちに優しく振舞っていたという父の姿が新鮮で不思議でした。
荒く大きく繰り返されていた呼吸のリズムが だんだん遅くなっていって。
最期は『もう少し、もう少しだけつなぎたいけれどだめだ、疲れた』と
悔しげに手を放すように
息を引き取りました。
正直なところ、全然信じられなくて。
『いなくなって悲しい』という気持ちよりも先に
『よく頑張ったね、らくになれてよかったね、お疲れさま』っていう解放感に近い気持ちで
涙が出ました。
そこから、遺体に付き添って葬儀の準備が始まって
話し合いは次の日。あいだの日は書類整理や必要な物事の連絡・準備期間。
１５日の最終打ち合わせの日には、韓国に住んでいるいちばん上の姉家族が加わって、
１６日にお通夜。１７日、わたしの誕生日に告別式。
怒涛の如く過ぎ去って、今です。
ひしひしと感じたのは、
いちばん上の姉の、だからこそ父に最も愛されたんだなと思える兄弟のまとめ方、振舞い方。
わたしが敬愛している兄の苦悩と、長男という立場が背負っているものの大きさ。
真ん中の姉の、周囲を明るく照らす社交性と笑顔。
まだまだひよっこだと思っていた弟が、社会人として立派に育ち始めていたこと。
甥っ子たちの、純粋で素直だからこそ胸に刺さる言葉と行動。
古くからの友達の、さりげないけれど有り難い気遣い。
それから、当たり前のことかもしれないけれど、
親戚ひとりひとりが、わたしを「わたし」だと認識して接してくれたこと。
お葬式という行事の、沈痛に重苦しくいなければいけないというマイナスなイメージとは違う、
朗らかでどこまでも優しい雰囲気のまま式を終えて、それぞれの家へ帰っていったこと。
その血を、わたしも間違いなく受け継いでいるんだということ。
…そして、今までわたしが、
そんな優しくて明るくて素晴らしい人たちをいかにぞんざいに扱っていたか。
式が始まる前も終わったあとも、家族みんなで夜遅くまで話は尽きませんでした。
父の話や仕事の話や、とりとめもなくいろんな話をしました。
いろんなことに気づかされました。
人と関わることが怖くて心を閉ざしていたわたしを、
みんなが言葉と態度で暗がりから引きあげてくれました。
いま、なんだか目が覚めた気持ちでいます。
自分に何ができるだろう。
もらった温かい気遣いを、笑顔を、気持ちを、どうやって返していこう？
晩年の父も、病院でそうして必死に周りの人に尽くして笑っていたのかもしれない。
『ごめんね』の言葉で終わってしまった、最期までわかりあうことのできなかった父の気持ちが
まったく遅すぎるけれど、いまなら
ちゃんとわかる気がします。
さあ、前を向かなくちゃ。
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