③木版画


(三)夢二の浮世絵と江戸の浮世絵との違い


夢二の木版画はその製作工程が江戸時代のものとまったく同じだったので、あえて浮世絵と呼ばせて頂きます。


まず江戸時代と夢二の活躍した大正時代との大きな違いは、絵画を印刷するのに江戸時代は木版画で摺る以外にまったく他の方法がありませんでした。しかし大正時代に入ると印刷技術が飛躍的に進歩し、あえて手摺木版でなくても絵画を印刷することができるようになりました。


技術がどんなに進歩したとしても、手摺木版でなければ表現できないものがあり、夢二はそこに気がついていたのでしょう


まず多色版画の工程順序は色分けから始まり、そしてその色数によって版木の枚数と摺りの回数が決まります。最初に決められるのは墨線(輪郭)でしょう。その輪郭で両者を比べてみると江戸時代と夢二のものとの違いが歴然とします。


ここで、具体的な事例として、喜多川歌麿の「青楼七小町 鶴屋内 篠原」と夢二の「一座の花形」をお目に掛けましょう。まず両者の違いを輪郭で見てください。


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歌麿は髪の毛の一筋一筋、また髪飾りの輪郭をきちっとした線で囲んでいます。着物の輪郭は硬く、すごく直線的です。それに対して夢二の「一座の花形」の髪の描写や髪飾りの輪郭と比較するとその違いが良く分かります。


次回は何点かの事例を見て両者の比較をしたいと思います。