●冥府回廊(上・下) @杉本苑子 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

オッペケ節で有名な川上音二郎の話かと
思ったら、出だしが慶應義塾の運動会?!
なに?


で、ほぼ全編にわたり「福沢家の人々」・・とも
言うべき内容で、それはそれで興味津々。



実は川上音二郎の妻である、マダム貞奴こと
「川上貞」は、福沢家と浅からぬ因縁があり、

杉本さん著の「マダム貞奴」と、それを福沢家
の側から描いた、この「冥府回廊」の二作が、
大河ドラマ「春の波涛」の原作なんだって。






主人公は福沢諭吉の次女房子と、その夫桃介



慶應義塾の教え子の中から、特に優秀で
華があり、才気闊達な有望株と認められ、
福沢家の婿に迎えられた、岩崎桃介は、、



福沢家に隠れて株で大儲け、「福桃」  「飛将軍」
「早逃げの桃介」と兜町で異名を取り、後には
「電力王」と呼ばれる大事業家にのしあがる。

福沢桃介





てもその活躍を陰で支えたのは、妻房子では
なく、マダム貞奴こと、川上貞だった。。



貞奴は若い頃、伊藤博文の愛妾として有名で
川上音二郎と結婚後は、川上一座として
ヨーロッパに渡り、物珍しさからパリ万博で
大成功を修めてしまう、、
こちらも並みの人物でない。

ベルリンでの貞奴





川上音二郎も元慶応の学僕だったし、若い頃
から縁があったのか、、桃介の財力✖貞奴の
政界人脈を互いに求め、そして何より同種の
人間として引き合うものがあったのだろう、、



舅の諭吉や音二郎の死後は、大っぴらに事業
パートナーとして行動を共にすることに
なるんだなぁ。。これはちょっと運命的。。。


川上音二郎と貞奴


福沢桃介と川上貞





とはいえ、前半に描かれる福沢家の様子が、
上品かつ高尚・・理想的に素敵すぎるので、
そこに入り込んだ「桃介」という俗なる異分子
の相容れなさ、、が、読んでいても堪らない。






福沢諭吉は北里柴三郎を支援。日本で受入れ
場所のない伝染病研究所を、私財で提供した。

伝染病研究所は今、東京医科学研究所







福沢桃介は木曽川の水力発電に情熱を傾ける。
「ダム」という言葉も知られない時代、

発電、送電、売電、全てを統合した大同電力
を興し(後関西電力)、発電所や大井ダムを
築く一大事業は、「人間業でない」と噂を呼び
「桃介音頭」なるレコードもあったんだ。

大井ダムと大同電力

桃介橋






川上貞は、女優育成や「川上児童劇団」や
「川上絹布株式会社」を経営して大富豪となり
自費で寺院まで建立した。

名古屋電灯社長時代、貞奴と住んだ「双葉御殿」



貞奴が自費で建てた、岐阜県各務原市「貞照寺」





みんなそれぞれにスゴいんだけど、、
実質、桃介に捨てられた妻房子のプライド、
その子供たちの自殺、狂気・・・
誰も悪くない、、と思えるだけに諭吉亡き後
福沢家の不幸は悲しく、やりきれない。




春の波涛はあまり視聴率良くなかったらしい
けど、キャストを見るに面白そう。
再放送しないかなあ。。


「春の波涛」    音二郎と貞奴


登場人物は伊藤博文、山県、井上、大隈、
黒田、大山、板垣、桂など政治家多数に、
市川團十郎、尾上菊五郎、
坪内逍遙、内村鑑三、堺利彦、幸徳秋水、
中江兆民、平塚雷鳥、、、ううむ、見たい!