原子炉のこと | 柚楽弥衣~STAR☆SONET~

原子炉のこと

柚楽は

機材

と言われるものはけっこう好きで名前をつけてかわいがっています

彼らには心があって、機嫌があったり調子悪かったり元気だったりかわいいのです
がんばってくれたり、すねちゃったり

車も、ボイラーも、パソコンも、
機械と付き合う人は、機械は生きてる、心がある、と感じているのでは
と思います



なぜこんなことを書くかといいますと

今回の原子炉の様子を見ていて
まるでこわくて泣いてる子供みたいだなと思ったからなんだ



最初はもちろん作業員の方の命を賭けた闘いや、自衛隊、警察、消防隊の、恐怖を克服しての使命感の方を強く感じていたのだけど

突然

322のライブの後、寝る前

はってなって

原子炉の気持ちになったら
どんなにか怖かっただろうかと想像しはじめてしまって

風の歌を歌うときは風の気持ちを想像して
体はともかく風そのものに意識がなったりする感じなんだけどそんな感じ

ここから人間の必死の行動が理解できていない原子炉の気持ち。。
決死の努力をしてくださっている自衛隊や消防隊の方のことを否定するものじゃないですよ
ほんとうにありがたいことです

ご家族の抱かれている心配はどれほどのものでしょう。。深くお詫び申し上げるとともに、彼らの体と心の健康が守られるよう、任務の成功を心からお祈りしてます



原子炉は

地震が起きた時はきちんと自分は止まったのよね
教えられた通りにできた
あんなすごい想定外クラスの地震でもきちんと作られた通りに危険を感じてとまれた自分にきっと誇らしさを感じたんじゃないかな
職員の方もそうだったんじゃないだろうか

でも今度は津波が来て、設備をほとんど壊してしまった
それで電気がこなくなって
何も動かせない応答しない状態になってしまった
ほんとならちゃんと冷却できるのにエネルギーがないから
どんどん水温が上がってきて

なのに電気がきてないからどうしようもなくて
いつも面倒をみてかわいがってくれていた職員さんのオペレーションがきこえなくて
誰も助けてくれなくて

やばいよ
やばいよ~
温度上がってきちゃうよ

って怖くて

そしたら今度はいまだかつてやられたことのない処置をいろいろされて

こんなことされたら
ぼく動けなくなっちゃうよ
こわれちゃうよ

ってまた怯えて
でもどうにもならなくて

粒子の細かい水素がどこからか漏れて爆発もしてしまって
自分でも衝撃を受けて

仲間も爆発

海水入れられて
びっくり。

こんなの知らないよ
こわいよ~って

意思の疎通できないまま
エネルギーがほしいのに
エネルギーと設備を整えてくれたら大丈夫なのに

どうして誰もこたえてくれないんだろう
早く早くーって

そのうち設備内に塩水をバシャバシャかけられて

こんなことされたら僕もう完全におしまいだよ


わたしがいつも手入れをしてきた職員さんだったら
今回の借地は当然なんだけど
人の命、環境の命がかかってるから分かってる
でも
心のどこかでは

廃炉にしちゃってごめんな

って思う気がするんだ

毎日毎日

おはようさん、今日はどんな調子かな

ってお話してたと思うんだ

お、異常なしだな、がんばってくれよー

ってモニターしながら
会話してきたと思うんだ


でも今までも何回も福島第一原発では細かな問題が起きてて
耐震対策の見直し要求や非常用の冷却に問題ありとのレポートがあったようで
たぶん現場の人たちは不安や疑問を感じていただろうし、できるだけのことをしてやりたいと思っていたんじゃないかと思うのです
でも経営や国の判断はそうではない
どういうわけかその見直しや対策はほとんどされることがなかったようです
国会で棄却されてきた記録をネットでも見ました

それでも原子炉達はがんばって動いてきた。


一号機は日本の原発第一号として、反対の声もあったにせよ、世界最先端、核のアレルギーから抜け出して、新しい日本になるんだ!という希望を持って運転開始したのでしょう
そして長い間、高度成長期後、さらなる豊かさを目指した日本の電力に献呈してきてくれたわけです

実際には送電にロスが多いとか事故や点検ばかりで稼働してないとか
アメリカから買わされたのだとか
色んな意見がありますが
原子炉自体に罪はない


目的はシンプル
大きなエネルギーを産み出す
その強すぎるエネルギーと有害な物質を封じ込める。


原子炉も人間が自分たちのために作った機械で

他のたくさんの役に立つ機械と同じ
たとえばロケットのハヤブサや新幹線なんかと同じ

人間と一緒にがんばって働くぞー!みんなの役に立つぞー!

と夢一杯にこの世に誕生したのです

40年前の一号機を、あんな地震や津波で停止して立派だ!良く持ちこたえた!と称えてる人もいますね
わたしは、不憫でならないと感じている


その存在がわたしたちや地球の自然界にとって脅威の物質を産み出してしまうもの

そういうものを…
手放しで感謝だけを捧げられない存在を

作ってしまったわたしたち人間てアホです
人間の精神構造
この自然界や宇宙とのつながりの絶たれ方は異常な感じすらする
誰もが程度の差はあれ自己破壊衝動を持っている
あらゆる嗜好品、薬物の乱用や偏食、中毒、自虐、殺人行為、他者への強要、脅迫。
その根底にあるのは
深い部分での自己否定のような気がする
わたしもそういう要素を持っている人間の一人で
生まれるや否や自己否定と自己愛を繰り返してきた

自分は存在してはいけないのだろうか
いや自分はすごいんだ

原子炉の抱えている矛盾は
まさに人間が作った人間的な機械だからのようにすら感じた


静かに引退するはずだった一号機は無惨な廃炉
残る炉たちも廃炉でしょう
働き盛りの子もいたでしょう

安全とか常識とか良識とかまったく度外視で自分が身近なエンジニアだったら
なんてことを
と悲しむだろう
今までがんばってくれてたのに
答えてくれてきたのに

それは廃炉は金にならなくなるからなどという理由で悲しむようなはことではない
身悶えする悲しみです


涙がとまりませんでした

今までがんばってきた機械に
そんな仕打ちをしてしまうなんて
そういう運命に作ってしまったなんて
もう二度とそんな機械を作っちゃダメです
わたしたちは
子供に自殺しろという親なんかありえない


原子炉は混乱しながらも毒性の強い物質がこれ以上外部に漏れないように、もちこたえようとしている
作業してくださっている現場の職員の方々同様、闘っているのでしょう

自分がその熱や圧力に耐えきれなかったら自分の役目を果たせない

プライドと存在意義をかけてめちゃめちゃがんばってると思います

そしてそれを原子炉にさせているのは
彼を作り出したエンジニアの知性と、今までずっと原子力にたずさわり面倒を見てきた人たちの愛と祈りだなと思うんです

どれだけ穏やかな運転停止
引退をさせてあげたかっただろう
よくがんばったな
今までありがとうなって
静かに終わらせてあげたかっただろう



どうか最後にもうひとふんばり、がんばって!!

どうか原子炉が、やり遂げることができて、そして安心して眠りにつけますように


長い間、ほんとうにありがとう
そして、ほんとうにごめんなさい



いつかその場所にヒマワリを植えに行ける日がきますように



というわけなんじゃ



わたしは
彼を憎めないです
今までの世界にも
これからの世界にも地球の生命には強すぎる必要ない力

でも人間が夢見た
途方もないばかげた
そして悲惨な

自分たちはコントロールできる!
偉大だ!
恐怖に打ち勝てる!

という悲劇


二度とこんな悲しいことが起きませんように。
二度と人類がそんな悲しい機械を作らないように。


324

誕生日に

柚楽弥衣



追伸
一号機は三月生まれなんですよね