『さーて、明日からの春休み、なーにしようかねぇ」


そんな事考えながらえるのはプリミューレ妖精協会の長い廊下を歩いていた。

短いながらも夏休みと違って春休みはレポートとか課題は出ない。ゆっくりと自由を満喫出来る絶好の機会だった。


そんなえるのの鼻先にコツンと何やら飛んできて当たる。


ノートの紙を破いて丸めた紙玉。


飛んできた方向は今は開いていないはずの図書室の扉からだ。暗い図書室のドアが半開きになり、中から手招きする少女の姿があった。


「べる姐?」


進学先が変わってしまい教室は変わってしまったが小さい頃からずっと同じクラスだった幼馴染のヴェル。えるのを始めみんなはこの巻き舌で発音するヴェルが呼びづらいので「べる」と呼んでいた。


「こっちこっち!見つからない様に早く!」


「何よ、どうしたの?図書室担当の掃除終わらないの?」


「違うの!見つけたのよ!!」

「見つけたって何を?」

「早く!早く!!」


蔵書準備室にえるのの手首を掴んで引きずりこむと後ろ手に扉の鍵をかけた。


「こんなとこ引きずり込んでエッチな事する気じゃないでしょうね!」


「ばかっ!」


べる姐は3人の中で一番真面目な子だった。成績優秀、学年でもトップクラスの秀才でえるのの精一杯のウィットに富んだジョークは通じない。


でもみんなの面倒見はよく仲間内では姉御肌なのでべる姐と呼ばれている。


「じゃーん!」

べるの手には古びた本と羊皮紙、そして短い杖が握られている。


「なにそれ?」

「見つけてしまったのだ!禁断の時間跳躍の書!」


魔法世界でもタイムパラドックスを起こす可能性がある時間跳躍な術は何世代も前に封印され禁書になっている。


「ホンモノ⁈」


「多分本物よっ!この羊皮紙に詳細な術のかけ方が懇切丁寧に書かれているものっ!」


確かに古代文字で書かれた魔術書はえるの達学生にはまだまだ難解な古典だった。


「でもさ、そんな上位魔法私達使えるほどMP無いよ?」

 「それがなんと!この杖に魔力が充填されてるの!」


「つまり、3人の力を合わせれば未来に飛べるのよ!春休み、私達のミライ覗きに行ってみない?どんなお仕事してるか興味あるじゃない!」


「ええっ?でも・・・」


えるのは春休みにやってみたかった事を思い浮かべてみる。

でも、自分の能力を超えた魔法の力で今まで体験したことのない世界を覗いてみてみる誘惑に動かされていく自分がいる。


「よーし、決まった!りぶちは何処?」



『ええっ?未来にいくの?」

『しーっ、声が大きいっ」


春休みを前にウサギ舎の掃除をしていたりぷの姿は簡単に見つかった。


「でもぅ、うさぎさん・・」


「そんなのクラスのみんなに頼んじゃいなよって」とえるの。


「りぷっ!髪の毛食べられてるわよ!」


しゃがんでウサギに囲まれながら葉っぱを与えていたりぷがハッと我に帰る。背後には自慢の三つ編みのお下げ髪の先っちょをはみはみしている大きなウサギが一羽。


「ダメェ、うさぎさん食べちゃだめっ!!」


3人の中で一番おっとり屋さんのりぷは2人に説得されて今夜の待ち合わせに渋々了解した。


「すぐ戻ってこれるよね?」


それは作者次第かな。