財前夢 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

それが愛ってやつですか!?




意地悪で、愛想なくて、Sで、ドSで、ドドドドドSで、いいとこなんて顔くらいしかないような奴なのに。

振り回されて、苛められて、凹まされて。私の人生にマイナス要素しか与えないような奴なのに。


いつの間にか心の中にいて、気づいた時には追い出せないまでに大きな存在になってしまっていた。


寝ても冷めても頭の中はあいつの事ばかり。

少しでも気を抜けば溜息ばかり。


これが恋煩いってヤツですか?

私も一丁前に恋して悩んだりするんだな・・・・なんて思ったり?



でもこの恋に明るい未来はなさそうだ。

だって相手はあの財前光だもん。



初対面で言われた言葉が「標準語キモいっすわ。」だった。


大阪の人間は温かくて人情味に溢れてるって聞いてたけど嘘だったの~!?と、

叫びそうになったくらいの衝撃だったのを、今でもはっきりと覚えてる。


それからも事あるごとに「都会もんはどんくさいんすね。」とか、「あっちでは寝癖付けたままが流行ってたんすか?」なんて嫌みったらしい事ばっかり言ってきて、

私がムッとした顔をするとすごく嬉しそうにふふ~んって感じで鼻で笑うんだ。


あいつにとって私はからかいの対象で、おもちゃみたいなものだろう。


1度「なんでそんなに意地悪なの?」って聞いたら、

「好きやから。・・・・・・・なんて言われると思たんすか?ただのストレス発散すわ。」

なんて言われて、開いた口が塞がらなかった。




「そのぶっさいくで貧相な顔どうにかして欲しいんすけど?」

「ぶっさいくはともかく貧相って!!」

「ぶさいくはええんや。」

「どっちも嫌に決まってるでしょ!!」




数々の悪夢を思い出していると、その張本人である財前が目の前に現れた。

タオルで汗を拭いながら、いつもの嫌味を飛ばしてくる。


後輩のくせにどうしてこんなに偉そうなんだろう?

同じクラスの白石君や忍足君は優しいのに・・・・。


そして私はどうしてこんな男に惚れてしまったのだろう?

いい所より悪い所の方が多いようなヤツなのに・・・・。


でも顔はいいんだよね・・・・・。

顔だけは。


向かいに立つ財前を見上げるようにじっと見ていると、

その視界を遮るように、ばさりとタオルを投げつけられた。




「わっぷ。ちょ、濡れてるし!!」

「俺の汗はキレイやから心配せんでも大丈夫すわ。」

「絶対嘘!ほら、なんか顔が汗臭い!」




タオルを外して覆われてい視界が開けると、目の前にいたはずの財前は

いつの間にか私の隣に、足を押っ広げて座っていた。


横に座られた事にドキッとしながらも、怒り口調でタオルを投げ返す。


もっと嫌味が飛んでくるかな?と、構えていたけど、

財前はそのタオルで自分の顔を覆い、背もたれに頭を乗せて上を見上げた。


いつもとは違う反応に拍子抜けと言うか、なんだか不安になる。




「財前・・・・?」

「ぶッさいくな顔で見つめてくるから顔が腐ったっすわ。」

「なにをー!?」




どうしたんだろう?って一瞬心配した私の不安を返せ!

本当にこの減らず口・・・・縫い付けてやろうか?




「このタオルほんまに臭いし・・・・・」

「でしょ?」




ふふん。いい気味だ。

腐った顔にはちょうどいいんじゃない?って言いかけたけど、それよりも早く財前が立ち上がった。





「まぁでも・・・・・。マーキングみたいでちょうどいいっすわ。」
「え?なんて?」




最後の言葉が聞き取れなくて聞き返してみたけど、

「顔も悪い上に耳も悪いなんて救いようがないんちゃいます?」なんて言いながら

またタオルを私の顔目掛けて投げつけてきた。




「もう!」

「それで顔拭いたら少しはブサイクなんもマシになるんちゃいます?」

「なるわけないでしょ!!」




憎まれ口ばかり叩かれて、、本当に可愛くなくてむかつく男。

だけどそうやって弄られる事に喜んでる自分がいる。


たとえストレス発散の捌け口で、ただのおもちゃだったとしても、財前がかまってくれるならそれだけでいい。

なんて思っちゃう自分が怖い・・・・・。



でも・・・・それくらいに好きなんだ・・・・・・。



コートに戻って行く財前の背中を見つめながら、汗の染み込んだタオルを両手でぎゅっと握り締めた。








今週は運勢最悪なのかもしれない。


財前が人気がある事も、モテる事だってわかってた。

だけど告白現場を3日連続見ちゃうなんて・・・・・・さすがの私も凹む。


なに?今週何かあった?

なんでこんなに告白ラッシュなの!?




「しかもみんな可愛い子ばかりだったし・・・・・。」

「なにが可愛い子ばっかりなんすか?」

「ひゃぁ!」




机にうつ伏せて不貞腐れていた私は、気がつかぬまに心の声が漏れていたらしい。

突然財前の声が聞こえて、飛び跳ねるように体を起こした。




「財前!?」

「貧相な顔がさらに貧相になってるし。」




いつものようにスカした顔して嫌味を飛ばす財前は、馬鹿みたいに呆ける私の前の席に座り、

「いつまでアホ口開けてるんすか?」と、私の机に頬杖をついてきた。


あまりに近い顔の距離にギョッとする。

できるだけ自然を装って身体を後ろに引きながら、ドキドキする胸を両手で抑えた。




「どうしたの?もう部活の時間じゃないの?」

「部活始まってるって事はわかってたんや。」

「はぁ?そりゃもう放課後だし。こんな時間だし・・・・・」




財前には色々と意地悪を言われたり、からかわれたりしたけど、

よく考えればそれはいつも休み時間の廊下だったり、部活中の休憩時間だったりで、

2人で話してはいても、周りには誰かの気配があった。


こんな風に2人きりの空間というのは、初めてだ。

2人きりなんだと認識してしまうと、意識せずにはいられなくて、胸の鼓動が急激に早くなっていく。




「ほななんで部活始まってんのに、トモ先輩はこんなとこおるんすか?」

「え?」

「毎日部員より早く来とったくせに、今日はおらんし・・・・・」




なにそれ?

それってどう受け取ればいいの?


確かに財前を好きになってから部活見学を欠かした事がなかった。

そんな私に「暇人。」とか言ってたくせに・・・・・


これって・・・・・私がいない事を気にしてくれてるって事・・・・?




「もしかして・・・・・迎えに来てくれたの?」

「うわ・・・。自意識過剰とか白石先輩だけで十分やし。」

「じゃ、じゃぁ何しに来たの!?」




そりゃ私も期待しすぎ?って思ったけどさ!!

何もそんな即効でばっさり切らなくてもいいじゃん!!


恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で押さえながら俯くと、

肩に流れていた髪の毛をグイッと軽く引っ張られた。



「な、なに!?」

「それよりさっきの『可愛い子ばっかり』ってなんの事すか?」




痛いわけじゃないけど、しっかりと掴まれていて後ろに下がる事ができない。

また近くなった顔に心臓が飛び出そうになる。


なぜそんな事を気にするんだろうと思いながらも、半思考停止状態の私は話を逸らすとか、

そんなことには頭が回らなくて、財前から受けた質問に素直に答えた。




「告白・・・・・・されてたでしょ?」

「あぁ・・・あれか。」




すぐに理解したのか軽く頷いた財前は、何か考えるように私の髪の毛を指に絡めだした。


毛先が財前の指をくるくる回る。

ドキドキゲージが破裂しそうでやめて欲しいけど、もう少しこのままでいて欲しくも思う。


しばらく髪で遊んでいた財前は、毛先に向けていた視線をゆっくりと上げた。




「その告白、聞いとったんすか?」

「ぐ、偶然通りかかって・・・・・」

「耳悪いくせにそういう事だけは聞こえるんや。」

「た、たまたまだもん・・・・・。」




本当に偶然で、本当ににたまたまなんだけど、

そんな風に言われちゃうと、なんだか悪いことをした気分になる。




「でも!最後までは見てないよ?途中でちゃんと立ち去ったし・・・・・」




立ち去ったって言うか、それ以上見ていられなくて逃げただけなんだけど・・・・・


財前はなんて返事をするんだろう?

もしかしてOKしちゃうかも?


聞きたいようで聞きたくなくて、どの告白も途中で逃げてしまった。




「どうせ見るんなら最後まで見てって欲しかったんすわ。」

「え?なんで・・・・?」




財前はたぶん、私の気持ちに気づいてる。

だってあの忍足君も気づいてたくらいだし・・・・・。


それなのに私に最後まで聞き遂げろなんて・・・・・


それで私がショックを受ける姿を見たかった?

泣き顔を見てまた馬鹿にしたかった?




「ひどいよ・・・・そんなの・・・・・・」




どんなに嫌味を言われても、どんなに苛められても、泣いた事は1度だってなかった。

だけど今回は無理。


瞳からぽろぽろ零れたた涙が頬を濡らす。

涙で滲んだ瞳で見つめた財前の顔が少しだけ動揺したように見えて、いい気味だと思った。




「はぁ・・・・。そう言う顔、たまらんのですけど?」

「・・・・・ふぇ?」

「苛め倒してもっとめちゃくちゃに泣かせたくなるんすわ。」

「えーーーー!?」




私の涙に少しは反省したのかと思ったら!!!

もっとめちゃくちゃに泣かせたくなるですと!?


あんたどんだけSですか!?

本気で真正のドSですね!!!



驚きすぎで涙も止まってしまい、呆然と財前を見詰める私に、

財前は大きな溜息をつきながら、また私の毛先をくるくるとしだした。




「俺、それなりにモテるんすわ。」

「・・・・・知ってるよ。」

「よりどりみどりってやつ?可愛い女も、胸でかい女も、選びたい放題。」

「女の敵だね。」

「そやのになんでこんなん選んでしもたんすかね・・・?」

「こんなんって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」




涙声で、私なりの精一杯の嫌味を飛ばしていたつもりだったのだけど、

「こんなん」の言葉に、思考が一時停止になる。


こんなん・・・・・?

こんなんって・・・・・・どんなん?




「トモ先輩、俺を見る時どんな目で見てるか気づいてます?」

「ど、どんな目で見てた・・・・?」

「捨て猫みたいなに縋るような目で・・・・・。かまってください。苛めてくださいってオーラがすごいんすわ。」




マジですかー!?

知ならかった!!気づかなかったー!!

私そんなもの欲しそうな顔で財前を見てたの!?


好きって気持ちはバレバレだと思ってたけど、そんなドSを刺激するオーラを放っていたなんて!!!




「そ、それは申し訳ない・・・・・・」

「謝らんでいいんで、責任もって一生俺の事愛しとってくださいよ。」

「あ、愛っ・・・・!?」

「ま、俺以外好きになることなんてできひんでしょうけど。」




自意識過剰!

どんだけ俺様なんだこの人ー!?


確かに財前以外好きになれそうにないけどね!!

告白もしてない相手にこんな風に言われる私ってどうなの・・・?


喜んでいいのか悲しんでいいのか複雑な気持ちで財前を見ていると、

髪の毛をさっきより強く引っ張られて、そのまま唇を奪われた。




「え?え・・・・?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「仕方ないから俺も、一生かけて先輩の事愛したりますわ。」




いきなり唇を奪われて、頭が爆発しそうなところに告白までされて、

何がなんだかわからない状態の私を、財前は楽しそうに眺めていた――――




おわり


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もっちゃんハッピーバースデイ!!

地味に誕生日をアピってたあなたにプレゼントフォーユー。


最近キテると言う光ちゃんで書いてみた!!

けっこうSっ気強めにしたつもりやけどいかがかしら?ww


2年前にもっちゃんにプレゼントした夢のあとがきでは「敬語&お師匠様」って書いてたのに

今では「タメ&下僕」だもんね。(笑)


それだけ二人の愛が深まったって事かしら?ww


ま、これからもよろしゅうね!!