連動企画課 第5弾 『鬼退治に行こう!』 仁王雅治 前編 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

連動企画課課長補佐の雪萌です。


歯痛に耐えながらもなんとか前編できました。

残り後編今日中にできるのか!?(無理っぽい・・・)


私が連動させていただく方は 由似さん(蓮ニ)・梨花さん(ブンちゃん)・もっちゃん(赤也)です。

先にお三方の夢を読まれてから私の夢をお読みください。



柳蓮ニ  ・ 丸井ブン太  ・ 切原赤也




「雪ちゃんも来るよね?」

「え?どこに?」

「日曜の豆まき。」

「豆まき?」

「あれ?仁王くんから聞いてないの?」




なっちゃんに聞かされた跡部邸での節分祭り。


雅治が私に言ってこなかった理由はある程度想像がつく。


わざわざ休日にまでテニス部メンバーと過ごしたくないとか、

せっかくの休みなんやから2人でまったりしたいとか、そんな理由やろう。


まぁ1番の理由は『面倒くさい』やろうけど・・・・。


進んで騒ぐタイプではないけど、賑やかな雰囲気がけっして嫌いなわけじゃないことは知ってる。

騒ぐみんなを眺める目が、楽しそうに細められているから・・・・。


けどそういう場になかなか行こうとはしない。

行ってしまえばそれなりに楽しむんやけど、そこに行くまでが大変である。




「バカ騒ぎも若いうちしかできひんねんから色々思い出つくっとかな損やで!!」

「雪との思い出があれば十分ナリ。」

「アホか!どんだけ寂しい青春やねん!!」




今まで何度こんなやり取りをしたことか・・・・。



なっちゃんから話を聞いた放課後も同じ様なやり取りをし、

最後はこれまたいつもと同じように、「行ってもよかよ。その代わり雪も俺の頼みを聞いてくれるんじゃろ?」

なんて交換条件という名の下、ちゃっかりお持ち帰りされたのだった。





鬼退治に行こう!





かなり大きな枡の中にテンコ盛りの豆が盛られたり、柊の枝に鰯の頭を刺したものが飾られたり、

一応節分の雰囲気はかもし出されてるが、少し視線をずらせばもうなんの会場なのかわからない・・・・。


ドドーンと置かれたテーブルの上には和洋折衷さまざまな料理が並んでいる。

だけどその真ん中に、黒い物体がピラミッドを成していた。




「あれ全部恵方巻きやろか?」

「そうじゃろうな・・・。」

「すごっ・・・・・」




さすがというかなんと言うか・・・・。


近づいて見てみれば皿によって具が違うようで、オーソドックスな感じのものから、

天ぷらや海鮮、フォアグラ巻きなんてものもあるようだ。

もはや恵方巻きではない気がするがそこは触れんほうがええねやろう。




「食べたいんか?」

「恵方巻きはまだええわ。それよりこれすごない?ふぐの白子やって!」




巻物の横に、これまた高級な皿に盛られた白子。


たらの白子は食べた事あるけどふぐなんて初めてである。

おいしいって聞くし、こういう機会でもなければこの先食べれるかどうかわからへん。


真っ白な白子に誘われるように手を伸ばし皿を持ち上げると

横から雅治の喉で笑う声が聞こえた。




「何がおかしいん?」

「白子が好きなんか?」

「うん。おいしいやん。」

「やっぱり雪はエロイのう。」

「は?」




何を言うてんねやこいつは・・・?

なんで白子好きでエロイとか言われなあかんねん?

意味わからんわ・・・・・。


とりあえず早く食べたい私は、雅治の意味不明な発言は無視する事にして、

白子を口に含んだ。


とろりとした食感とまったりとした濃厚なコクが口内に広がる。


おいしい!!!


そう思った次の瞬間、雅治の言葉に口の中の白子を吹き出しそうになった。




「そんなに白子が好きなら、今度から口で受け止めてもらおうかのう・・・?」




一瞬「ん?」と思ったけど、私の脳はすぐにその意味を理解してしまった。

純情乙女なら気づかなかっただろうに・・・・



なんつー事をデカイ声で!!!

さきの『エロイ』はそういうことか!!!!



吹き出しそうなのを何とか堪えたものの、口端から少しだけ垂れて流れ出る。

慌てて布巾で拭こうとしたが、雅治の顔が近づいてきて、それをペロリと舐めとった。




「~っ!?」

「俺を誘っとるんか?そんな顔はベッドの中だけにして欲しいのう・・・。」




他校の人達もいるこんな場所で、変態発言だけでもビックリやのに、舐めるやなんて・・・・

誰かに見聞きされたらどないすんねん!!!


驚きやら羞恥やらで頭がパンクしそうで、食べさしの白子を雅治に押し付け、

とりあえず人の少なそうな場所に逃げ出した。



ほんま最悪や!!

もう白子食べられへんわ・・・・・。

白子見るたびに思い出しそうやもん・・・・。


恥ずかしすぎて周り見てへんかったけど・・・・誰にも見られてなかったやろか?



熱の篭った顔を両手で押さえながら、足早に歩いていると、

オープンテラスにぽつんと立つ女の子が目に入った。



テニス部のマネージャーの伊東さん。


ほとんど会話を交わした事もない子やけど、雅治から話しはよく聞くし、

部活中によく見かけたから、向こうよりかは相手のことをよく知っている。


見た目の割りに負けん気が強いとか、そのくせちょっとMっぽいとか、

彼女の赤也を見る目が、女になっている事とか・・・・。

ピンクの着物は鮮やかで、何もないその場に花が咲いているかのように見えたが、

着物の鮮やかさとは正反対に曇った顔の彼女に、何かあったんだと気づく。


そういえば待ち合わせ場所に来た時から少し元気がなかった。

着物の帯で苦しいんかと思ったけどそういうわけではないようだ。


赤也も傍におらんし・・・・何かあったんやろか?


声をかけようかと1歩踏み出すと、ガバリと肩を抱かれた。




「俺を捨て置いてナンパか?」

「離れろ変態!!」




嫌そうな顔で睨みあげる私を楽しそうに笑っていたが、

伊東さんを瞳に捕らえると、真剣な表情になった。




「ちぃと突付いてやるかのう?」

「掻き乱すならやめときや。」

「信用ないのう。これでも後輩思いな先輩なんじゃが・・・?」




後輩思いね・・・・。


どこまで本気かはわからんけど、もしいらん事言うなら私が止めればいいかと、

肩を抱かれたまま彼女の傍に寄った。



「赤也は?」と声をかけた雅治に、少しだけ驚いた表情を見せた伊東さんだったけど、

すぐに感情を消してしまった。


からかうように話しかける雅治に、軽く笑みを浮かべながら受け答えしていたが、

雅治の足元から這わせた視線。周りの人を・・・そして私を見る視線が気になった。


もしかして・・・・・着物で来た事後悔してる?


確かに着物なんて1人だけやし目立つけど、きっと赤也に見てもらいたかったんやろう。


でも相手は赤也やしな・・・・・

何の反応もなかったか・・・・もしくはからかわれたとか・・・?



はぁ・・・と聞こえた大きな溜息に、私は堪らず赤也を呼びつけた。



そこまで大きな声を出したつもりはなかったけど、私の声はよく響き、

人だかりの向こうにいた赤也の耳にも届いたようで、すぐにこっちに向って駆け寄ってきた。


赤也は単純で扱いやすい。

感情もすぐに表に出るから、なにを考えてるのかもすぐわかる。


せやけどそれは、私が赤也に特別な感情を抱いてへんからなんやろう。


そこに恋愛感情が絡んでくるだけで、見えていたものが見えなくなり、

自分だけでいっぱいいっぱいになってしまうんかもしれん。


私が何か話を振って、ちょっとしたきっかけさえ与えてやれば・・・・


そう思ったのに、雅治はせっかく呼びつけた赤也に「恵方巻、みなの分も持って来んしゃい」

なんて、また遠ざけてしまった。


なんや?みんなで恵方巻きでも食べながら話そうって魂胆か?


しかし雅治は伊東さんに、「少しは赤也の気持ちも考えてみんしゃい」とだけ言い残し、

その場を離れて行こうとする。




「え?赤也待てへんの?」

「あとは赤也が動くじゃろ。」

「あんな言葉だけじゃ意味わかってへんやん。」

「それはアイツが自分で考えんと意味がない。」

「それは男寄りの考えやろ?あのままじゃ彼女、可哀想・・・・」




いい終わるか終わらんかくらいに、ガラスの割れるような音が響き、

辺りがシーンと静まり返った。



視線の集まる方へ私も視線を向ければ、今にも泣き出しそうな伊東さんが

赤也に何か言い残し、その場を逃げるように立ち去ってしまった。


ほれ見た事かと雅治を見ると、肩を竦めやれやれという表情で溜息をつく。



「赤也。」

「雪先輩・・・・・」




割れた皿を見つめながら戸惑いを浮かべる赤也の頭を思いっきり叩いた。




「痛っ!!なにするんスか!?」

「少しは伊東さんの気持ちも考えてみ?」

「トモ先輩の気持ち・・・・?」




眉間に皺を寄せて私の事場を考えようとする赤也の顔は

いつもの子供っぽい後輩ではなく、男の顔で・・・・

いっちょ前にこんな顔もするようになったんかと母親的気持ちになった。




「トモ先輩の気持ってなんスか?」

「それは赤也が自分で考えんと意味がないんちゃう?」

「それは女よりの考えじゃなか?」

「もう、あんたうっさい!掻き乱すなって言うたやろ?」




また肩に手を回しのしかかってくる雅治を押しのけ、

枡に盛られた豆を子袋に詰め、それを赤也の手に持たせた。




「豆まきは鬼を追い払って福を呼び込むんやで。」

「それくらい知ってるッスよ。」

「ほんならさっさと豆撒いて福呼んどいで!!」




やっぱり意味がわからんといった顔をしてたけど、

背中を押す代わりに豆を投げつけてやると、「痛いッスってば!!」なんて悲鳴を上げながら

伊東さんが駆けて行った跡を追うとした。




「赤也!」

「なんスか!?」

「これも持って行きんしゃい。」

「鬼の面?」

「人は時に面を被る事も、面を外す事も必要ぜよ。」

「・・・なんかよくわかんないッスけど、行って来るッス!!」




今度こそ走り出した赤也。

撒き散らした豆がしゃりっと音を立てた。




「うまくいくかな・・・・?」

「さぁのう。」

「うまくいくやろ!!」

「そうじゃな。」




小さくなっていく赤也の背中に、「頑張れ」と、小さく呟いた。


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これ何の話?(笑)