赤也SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言



静かな図書室にはページを捲る音と、誰かの足音だけが響く。


そんな図書室の1番置くにある椅子に腰掛け、借りたばかりの本を開いた。


人目からも遮られて、夕日だけが差し込むその場所は私のお気に入りの場所。



もともと本は好きだったし、静かに誰にも邪魔されず本を読めるこの場所は

前からすごく気に入ってたけど、最近はもう1つの理由でお気に入りである。



活字の世界に没頭していると、控えめに窓を叩く音が聞こえた。


顔をあげて窓の方を見ると、癖のある黒髪が覗いている。



口元に笑みを浮かべながら、静かに窓を開けば、

いつものように黄色いボールを片手に持った赤也君が立っていた。




「今日は早かったね。」

「そうッスか?」




決して長い時間じゃないけど、赤也君と窓越しに会話を交わすのが最近じゃ日課になっていて、

それを楽しみにしている自分がいる。


別に他で会おうと思えばどこでも会えるわけだし、

わざわざここで話さなくちゃいけない理由もない。


だけどこの窓越しでこそこそと声を潜めて会話を交わすのが、

なんだか秘め事をしているようでドキドキとした。




「今日は先輩達が来てっからすぐ帰んないといけないんスよね・・・。」

「そうなんだ・・・・。」




引退後も真田君がよく部活に顔を出すとぼやいてたけど、

『達』って事は、今日は真田君以外も来ているのだろう。


本当なら部長の赤也君がここで私とおしゃべりをしている事自体いけない事なんだし、

真田君達が来てるならなおさら早く帰らせないといけないんだろうけど、

それでもやっぱりまだこの時間を終わらせたくなくて、声にその寂しさが出てしまった。




「寂しい?」

「え?ち、違うよ!!」

「へへっ。寂しいくせに!!」




見透かされた事の恥ずかしさと、からかうような赤也君の口調に

ムキになって「違うもん!!」と言い返してフンと顔を背けた。




「あ、先輩。髪になんかついてる。」

「嘘だ。」

「まじだって。」

「え?どこ・・・?」

「じっとしててくださいよ・・・・。」




私の顔を自分に向けさせるための嘘かと思ったけど、どうやら本当に何かがついているようだ。

赤也君の手が髪に触れて、指が髪の上を滑る・・・・




「取れた?」

「もうちょっと頭下げて・・・。」

「え?こう?」




取りにくいのかと思い、窓から少し顔を出して頭を下げると、

髪に触れていた手がスッと下りてきて頬に添えられた。


え?と、驚く間もなく、目の前には瞳を閉じた赤也君の顔があって

次の瞬間には、優しく重ねられた唇の柔らかな感触。



風に揺れる木々のざわめきに混じり、赤也君の名前を呼ぶ怒声が聞こえる。

早く行かなきゃ怒られるのに・・・・・そう思いながらも、私は瞼を閉じた・・・・・






「へへ。これで残りの部活も頑張れそうッス!!」




二カッと微笑を浮かべて走り去って行く赤也君の背中を見送りながら

まだ赤也君の温もりの残る唇を、そっと指先で押さえた。



また明日の放課後を、待ち遠しく思いながら・・・・・







  窓越しの口付け

                 (赤也!!どこへ行っていた!?)

            (ちょ、ちょっと待ってください・・・。足攣った・・・・。)

                (お前はいったい何をしていたんだ?)


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拍手用SS。


前に書いた仁王と同じテーマでグルっぽで書いたやつですね。


もうちょっと悪戯っ子にしたかったけど、まぁいいや。←



最後の会話は真田と赤也の会話。


168もあれば背伸びの必要はないかと思ったけど、窓越しでキスする時

背伸びしてたら可愛いな・・・って思ったんで、無理やり背伸びさせた設定に・・・。ww



さて、そろそろ企画夢も書かんとですな・・・。