気持ちのいい風が吹き抜ける中庭で、先日図書室で借りてきた本を広げた。
ベンチもあるのだからそこで座ればいいんだろうけど、
なんとなく誘われるように木の根元に腰を下ろした。
木漏れ日が手元を照らし、本に葉型の影が落ちる。
贅沢な時間やな・・・なんて思いながら、本の世界へと旅立った。
放課後で特に時間も気にせんでいいからと、かなり没頭していたのか、
人の気配に待ったく気づかんかった。
ふいに膝に重みを感じて、驚いて視線を本からずらすと、
きらきらとした銀髪が揺れている・・・・
「あんた何してんの?」
「膝枕。」
そんなことは聞いてへんけどな。
気持ちよさそうに目を閉じてる姿に、まぁええか・・・と再び本に視線を戻した。
が・・・・・・
本を突付いたり、プリップリッピヨピヨとうるさい。
目で文字を追ってはいるが、さっきのように集中ができない。
「ちょっと!ちょっかいかけんとって!」
「俺の事相手してくれんからじゃろ?」
少し拗ねたような口調でそんな事を言われると、ちょっとカワイイやないの!
私はため息をつきながら手の中にあった本を閉じ、横に置いた。
「部活もう終わったん?」
「いや。」
「勝手に抜けてきたんやろ?」
「真田が俺の分まで頑張っとるから平気じゃろ?」
それは別に雅治の代わりに頑張ってるわけじゃないと思うけど・・・。
もうすぐ新人戦があるとかで、元レギュラー人にお声がかかったらしい。
久々に運動でもしてくるかのう・・・・なんて、面倒くさそうに言うてたけど、
どこか楽しそうにも見えて、「なら終わるまで待ってるわ。」と、ここで本を読む事にした。
それがこんな早くに抜け出してきて・・・。
役に立たん先輩である。
今頃もしかしたら柳生が探してるかもしれへんな・・・と思いながらも、
さっき以上に贅沢な時間を終わらせたくなくて、雅治の髪の毛に指を通した。
「ちょっと寝る?」
「眠くはない。」
「そう?」
静かな場所に流れる静かな時間。
おしゃべりな私にしては会話が少なすぎるけど、そんな空間も、たまにはいいな・・・と、思った。
その時少し先で足音が聞こえた。
こちらに向かってまっすぐと歩いてくる様子・・・・。
「柳生じゃ・・・。」
「お互いをよく理解してるようで・・・。」
足音だけで柳生と気づいた雅治も、迷いなくこちらに向かってくる柳生も、
どちらもお互いを分かり合ってると思う。
複雑そうな顔をする雅治に、私は笑みを浮かべながら、
「借りは返してもらうから・・・。」と、横に置いた本を広げ
雅治の顔の部分を隠して、そのまま頭を下げ雅治にキスをした。
ピタリと止まった足音。
なんとなく慌てた雰囲気が伝わる。
それでも唇を離すことなく・・・それどころか深くなる口付けに、私も答えるように舌を絡めた。
頭の後ろに手が周り、離すまいと顔を押し付けられる。
息苦しいのに離れたくないその口付けに、頭がボーっとしてきて、
隠す為に持っていた本が手を滑った。
「んっ・・・・。」
半身を起こし、背にしていた木に私を押し付けるようにさらに深まる口付け・・・・・
ばたばたと走り去っていく足音を聞きながら、
久々に見たオレンジのジャージを、私は必死に握り締めていた。
もう少しこのままで・・・・
「さぁて、続きする為に家に帰るかのう?」
「コートに帰れ!!」
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仁王愛が高まりすぎて困ってしまいますね・・・。(全然困ってない)
参加中のグルっぽで書いたネタをそのままSSにしてみました。
本当は図書室での一コマって事やったんですけど、外に出ちゃいました。ww
赤也のネタのも書いちゃおう♪
次の拍手用SSにしようかな?