梅雨明け宣言を朝のニュースで聞いた今日、学校では終業式があった。
今日から長い夏休み!!
特に部活もしてない私は登校日以外で学校に来る用事もない。
プールに海に祭りに花火!!イベントは盛りだくさん!!
素敵な彼氏をゲットして、ラブラブな夏を過ごす・・・・・・・・・・・・・・・・・・はずだった。
「補修なんてありえへん・・・・。」
補修日程表を握り締めながら、うな垂れる私。
テストは何とかギリギリ赤点じゃなかったし、大丈夫やと思ってたのに・・・・
提出物の提出率が悪すぎるとかで補修組みに入れられてしまった。
くっそー!!担任め!
なんや私に恨みでもあんのか!?
「鬼や!悪魔やぁ~!!」
「先輩の今の顔の事スか?」
急に聞こえたその声に弾かれたように顔を向けると、
いつものようにスカした顔した財前が立っていた。
ああ・・・・こんな気分の時に財前に会うなんて本当についてない・・・。
去年委員が同じで知り合った1つ下の後輩。
後輩の癖になんか生意気だし、冷めたその物言いが私の神経を逆なでする。
とりあえず逃げようと背を向けると、手にあった日程表がするりと抜き取られた。
「ちょっと!返してや!」
「ふーん。補修なんて・・・・・先輩ダサいスわ。」
「やかましい!!」
奪い取るようにプリントを取り返して、ベーっと舌を出すと
「不細工がさらに不細工になってるって気づいてます?」
なんて言われて、ますます眉が釣りあがる。
落ち着け私。
相手にするから余計に面白がってからかわれるんやから・・・・。
ここは先輩としての余裕を・・・・・・
すーはーと深呼吸をして、ニコリと微笑を浮かべた。
「財前はなんでいつも私にからんでくるん?」
「先輩がアホやからちゃいます?」
「なっ!・・・・・くっそぅ・・・・。」
「鼻の穴広がりすぎやし・・・。」
このガキどついていいですか?
ほんまにム~カ~ツ~ク~!!
無駄に体が熱くなって汗かいてきたわ・・・・。
「財前。悪いけど今日はあんたと遊んでる余裕ないねん。」
「そんな補習ショックなん?」
「タメ口やし・・・。まぁええわ・・・・。そりゃショックやろ?」
「なんで?」
「なんでって・・・・・用もないのに学校来なあかんし・・・夏休み潰れるし・・・・」
宿題以外に勉強しなあかんし・・・・早起きしなあかんし・・・・。
嫌な事なんてあげれば山ほどある。
「それに・・・・・」
「それに?」
「補習のたびに財前に会うかもしえんと思うと気が重いわ・・・・」
財前はテニス部やし、毎日学校に来てる事やろう。
テニスコートと補習の教室は離れてるし会う事ないかもしれんけど
なんとなく会うような予感がする・・・・・。
はぁ・・・と溜息をつくと、しばらく考える素振りをしていた財前が
少し身をかがめて私の顔を覗きこんできた。
「な、なに!?」
「俺は毎日先輩に会えるなら嬉しいスけど?」
「からかってストレス発散でもする気やろ?」
「・・・・・・・ほんま先輩あほッスわ。」
「あほって言うな!?」
心底呆れたように溜息をつかれてなんかムカツク!!
目の前の財前の頭を叩いてやろうと手を上げると、
手首をパッと握られてしまった。
「む~!!ほんまムカつくわ!」
「そうやって俺の事考えればええと思ってたけど・・・」
「は?」
「先輩には通じへんみたいやから、これからは直球でいきますわ。」
何の事を言ってるのか全然わからんくて、「はぁ?」と首を傾げると
財前の口端がニィ~と上がった。
な・・・・・・なんか嫌な予感が・・・・・。
「まぁ、夏休みは長いし覚悟しといてくださいよ。」
「覚悟ってなんの覚悟やねん!?」
「俺は好きなでもない女に毎日会いに来るほど暇やないスから。」
「えっ・・・・・・・?えぇっ!?」
これは・・・・・そういうこと・・・・?
いやいや・・・まさか!!
でも・・・・・どう聞いてもこれって・・・・・・。
驚きで声も出せずにいると、「じゃぁ部活行きますわ。」と、あっさりと私を置いて歩き出した。
「ちょ、財前!?」
言いたい事だけ言うて去っていくな!!
慌てて追いかけようとすると、背を向けていた財前が「あっ。」と、何かを思い出したように振り向いた。
「好きな女って先輩の事やから。」
静かだった廊下に、何かを思い出したかのように鳴きだしたゼミの声が響く。
私はその廊下で、今年の夏1番の暑さを感じていた。
夏の始まり
(冷やしぜんざい食いたいっスわ・・・・)
(急に話を変えるな!!)
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財前語がようわからん。
適当に大阪弁しゃべらせときました。(殴)
今回の拍手用SSは『夏の恋の始まりシリーズ』にしようかと思ってます。
今まで恋人設定ばっかりやったんでね。たまにはいいだろう。うん。