海堂SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

~ 初雪 ~



「行って来ます!!」

「またそんな薄着で!!せめて手袋とマフラーくらいしなさい!」


後ろでお母さんが何か言っていたけど、返事をする事もなく、

早く、早くと、あの人が待っているだろう場所へと駆け出した。



「薫ちゃん!!」


私の声に顔を上げた薫ちゃんの胸に勢いよく飛び込むと、

「危ねぇだろうが!」と言いながらも、しっかりと抱きとめてくれる。


「えへへ。ごめん。」

「お前、またそんな格好で・・・。風邪引いたらどうすんだ?」

「そん時は薫ちゃんに看病してもらう。」


「馬鹿言ってんじゃねぇよ」と、軽く頭をコツかれて、

全然痛くもないけど、その場所を手で摩っていると、

「ほら、貸せ」と、薫ちゃんの両手が前に出された。


最初こうやってされた時、何を貸すんだろう?って思ったんだよね・・・。

だけど今はもう迷う事無く、その両手に自分の手を重ねた。


包み込むようにすっぽりと薫ちゃんの手の中に納まった私の冷たい両手は

薫ちゃんの体温に溶かされるように熱を取り戻し、心の奥から温かくなってくる。


「暖かい。」

「手袋くらいして来い。」

「手袋持ってないもん。」

「嘘つけ。」

「バレてた?・・・でも手袋はいらないの。だって、薫ちゃんのポッケがあるから。」


そう言って笑うと、呆れたような、照れたような顔をしながら

「行くぞ。」と私の右手を握り、自分の上着のポケットに入れた。


あまり大きくないポケットの中に2人の手を入れると、少し窮屈だったけど

そのぶん薫ちゃんの温もりがより伝わってくる・・・・。



息も白く、鼻の頭も赤くなってしまいそうな寒空の中を

寄り添うように歩きながら、ふと空を見上げれば

真っ白い結晶がフワフワと風に揺れて舞い降りてきた。


「わぁ・・・薫ちゃん見て!雪だよ!!」


1つ2つと数を増し、次々と降り注ぐ雪に、心の中が浮き立つ。


「初雪だね。」

「そうだな。」

「今年も一緒に見れたね。」


去年の今頃も、こうやって二人空を見上げていた。


「今年は雪の中で走りまわらねぇのか?」


薫ちゃんにそう言われて、そう言えば去年は雪にはしゃいで駆け回っていたっけ・・・

と思い出しながら、「もうそんなに子供じゃないもん!」なんて、大人ぶってみたが、

本当は、薫ちゃんと繋いだ手を離したくないから・・・・。


恥ずかしいし、余計に子ども扱いされそうだから口には出さないけど、

ポケットの中で繋がれた手を、ギュッと力を込めて握り締める。


「また来年も一緒に見ようね。」

「あぁ。そうだな。」


空を見上げる薫ちゃんの目はとても優しくて、

来年もこうやって一緒に空を見上げている二人を思い浮かべているのだったら嬉しいな・・・と

薫ちゃんの腕に寄りかかるように身を寄せてみた。


「どうした?寒いのか?」

「もう・・・薫ちゃんったら・・・。違うよ!」

「寒いならそろそろ帰るか?」

「ううん。もう少しこうやっていたい・・・・。」


寒いのは本当は苦手だし、暖かいコタツの中で甘いココアを飲みたい気もするけれど、

それよりも今は、薫ちゃんとこうやって手を繋いでいたいから・・・・。


ココアよりも甘く・・・・コタツよりも熱く・・・・

何よりも幸せな時間は・・・薫ちゃんと一緒に過ごす時間だけ。


「好きだよ・・・・薫ちゃん。」


溢れる想いを止められず、口から零れてしまった言葉に少し頬を染めながら、

「俺も好きだ。」と、甘い囁きと優しい口付けをくれた。


寄り添いながら、いつまでも空を見上げる二人を

初雪が優しく包み込むように見守っていた・・・・・



*************************************


拍手第3弾。

今回は薫ちゃん。

美姫ちゃんのリクで書いてみたんですが、こんな感じでどうですか?ww


ポッケINはなかなか表現が難しいね。

ってただ単に私の文才が乏しいだけか・・・・。(苦笑)