一昨日山奥にドライブへ聞くと、深夜の外の気温は、一度。
寒かったです。
驚いたのは、ソメイヨシノもしだれ桜も、まだ八分咲きで、花弁を散らす事も無くそこにいるのに、その根元には鮮やかな山吹が咲き乱れ、水仙が花を付けていたこと。
殆ど民家すら無い古い宿場町の街道沿いを思わせるその道を、花たちだけが、美しく彩っていた。
まるで無限の、許されない禁断の地のようだと思ったが。
街灯の下の方が満開に咲いている、ごく普通の桜だった。
このまま、狂ってしまえれば良いのにと。
下らない事を考えて、運転席の友隆に突っ込まれながら、また眠りについた。
病を得てから以前よりさらに、体力が落ちている。
だが、どうも体を大事にしようという気になれない。
死ぬ時は、その時だ。
本当に死ねない輩は。
「死ぬ死ぬ」
「私はもう駄目だ」
そうイッテいるヤツらだ。
俺の弟は、神経芽細胞腫という、モルヒネでも駄目なぐらいの激痛を伴う癌でも、痛い。死にたい。
そんな事泣き言を言わずに、死んだ。
散る時は、アイツが居なくなったあの頃のように、満開の桜が風にゴウと音を立てて、天高く桜咲く蒼天に、雪のように花びらを巻き上げていくような、そんな良い日が良い……。
アイツが昼に死んだから、俺は夜が良いな。
夜桜は好きなんだ。アイツも……。