第1回「遺言ツアー」同行記 | 「遺言ツアー」

「遺言ツアー」

今活!「心の財産」を相続する遺言教室
「絆・気持ち」という「心の財産」だけに視点を当て、整理した気持ちを文章に綴ります。
人間関係に悩んだとき、勇気がなくて前進できないとき、これからの人生を考えはじめたときに最適なプログラムです。

20091110日~12日 有馬温泉 メープル有馬にて



“遺言”
といえば、資産家が書く印象が強い。あるいは、死期の近い人が書くというマイナスイメージがつきまとう。一般的に、元気なうちは遺言を書くなんて眼中にないのが現状だろう。

ところが、第1回の「遺言ツアー」の参加者には、まだまだ元気な方や資産のない方もいた。




「人生いろいろありました。今は一線を退き、財産はありません。唯一あるとすれば、秘伝のラーメンスープ。自分にはそれしかない。ただ、それだけ……」

自嘲気味にゆっくりと言葉を紡ぎ、ときおり苦笑を浮かべる66歳の男性は、元有名ラーメン店の経営者。この秘伝のスープは、過去に数億円稼ぎだした汗と涙の賜物だという。


男やもめで5人の子どもたちを育てた父親でもある彼は、一人ひとりに想いを馳せながら、これまで支えとなってきたご子息の方々に感謝の想いを綴った付言事項の手紙と一緒に、知的財産として秘伝のスープを継承された。



 そこには有形の財産はないけれど気持ち”という心の財産が詰まっている。彼が生きた証と、この世を去っても変わらず、決して無になることのない財産。


「寿命を迎えるまでに、もう一度ラーメン店を立ち上げたくなってね。でもその前に、子どもたちと集まって食事がしたいなぁ……」


の遺言(WILL LETTER)を書きあげた最終日。

初日に見せた苦笑は微笑みに変わっていた





「書くことは決めていたけど、いざその瞬間になると想いがあふれ過ぎて……」と言っていた74歳の女性。

3人の娘さんたちへ想いを馳せながら、遺産分配など法的な遺言書作成に頭を抱えていた。


そしてツアー最終日、娘さんたちにあてた遺言の手紙を読ませていただいた。そこには、職業婦人としてキャリアを積む一方で、母親の愛情をいちばん欲している時期に娘たちと一緒に過ごしてやれなかった後悔の念、そして今だからこそ言える「愛してる」の言葉が三人三様の形式で綴られている。


親が子を想う気持ち。

血縁を超えて、いつしか他界した私の母とダブらせながら読ませていただいた遺言書の文字が、次第ににじんでゆく……。








遺言を書くという作業は過去を振り返る作業でもある。だからこそ、これまで以上に家族との時間を大切にしたいとか、奥さんが作った味噌汁を飲んで「ありがとう」と言えたり、やり遺していたことに気づいて新たに挑戦してみようと思ったり……。これからの自分に影響を与えるもの。



今回、同行して頂いた行政書士曰く、遺言主が自分たちのことをどう思っていたのか、どのような想いで人生を歩んできたのかを知りたいと望む遺族は相談者の8割もいるという。


だからこそ、気持ちを反映させた遺言書を遺すことが大切であり、そのために「遺言ツアー」では、気持ちの整理の仕方や伝え方のプロである心理カウンセラーを起用している。


各自それぞれ、法的な、もしくは心の遺言(WILL LETTER)を書きあげたツアー最終日、たしかに参加者同士に友情が芽生え、再会の約束をしていた3人の表情はスッキリと穏やかだった。


遺言とは「人生を振り返ることで何かに気づく、変化が起こる、残りの人生がより豊かに思える」。

そんな前向きな“生きた証”なんだと、2泊3日のツアーを通して確信できた貴重な体験だった。

    

           文責/プレス・サリサリコーポレーション 松原宏子