GABA | きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』

次のようなご質問をお受けしましたので、ここでお答えします。


ご質問:

緑内障患者です.
教えていただきたいのですが,サプリメントとしてのGABAの正常圧緑内障への影響はいかがなものでしょうか?


GABA(γAminobutyric acid :γーアミノ酪酸)は中枢神経系に高濃度に存在する抑制性神経伝達物質の代表的なものです。興奮性伝達物質であるL- グルタミン酸のα脱炭酸により産生されます。GABAは血液ー脳関門を通過しませんので、脳内に含まれるGABAは脳内でグルタミン酸から生合成されていることになります。(GABAをサプリメントとして摂っても、脳内には移行しません。)


グルタミン酸からGABAを合成する酵素はGAD(Glutamic acid decarboxylase グルタミン酸デカルボキシラーゼ)で、ビタミンB6を補酵素とします。ビタミンB6欠乏症ではGABAは減少します。


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中枢神経系では多くの伝達物質はイオンチャンネル型の受容体をもちます。アセチルコリンもニコチン受容体を中枢に持ち、中枢神経系ではNaチャンネルに働くことになります。




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アセチルコリンの受容体への付着によりNaチャンネルが開き、Naイオンが細胞内に流入し、脱分極(細胞内の電位が高くなること)し、神経は活動電位を生じます。

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GABAは同様にClチャンネルに働き、これをオープンし、Clマイナスイオンを細胞内に流入させ、結果細胞内陰イオン濃度が高くなり過分極し、神経活動は抑制されます。



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眼圧を決定する重要な要素である房水は虹彩根部の毛様体で産生されます。毛様体上皮細胞には様々な神経伝達物質の受容体があり、これらの受容体を介して、房水産生はコントロールされています。



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毛様体は中枢神経系ではありませんので、これらの神経伝達物質は他の効果器官同様にGタンパクによる伝達様式をとります。ここでも交感神経系と副交感神経系が拮抗的に作用しています。



NA(ノルアドレナリン)はα2受容体を介しGiにより房水産生を抑制します。A(アドレナリン)はβ2受容体を介しGeにより房水産生を亢進します。Ach(アセチルコリン)はムスカリン受容体を介しGiにより房水産生を抑制します。


チモロールなどのβブロッカーはアドレナリンのGeを介する作用を抑制することにより眼圧を低下させます。


末梢神経系でGABAがどのように作用しているかどうかは不明な部分がありますが、一般に副交感神経刺激系として作用するようです。例えば外的に投与されたGABAは腸管のぜん動運動を促進し、胃酸分泌を亢進します。


しかし、腸管の自律神経叢であるアウエルバッハ神経叢においては、副交感神経刺激によるAchの小胞からの遊離をGABAは抑制しますが、副交感刺激がない場合はAchを放出させる作用を持ち、全く異なった作用を示します。


眼内にもGABA含有細胞がありますが、殆どは網膜のアマクリン細胞で、脳におけると同様、抑制系として働き、コントラスト感度を上げるなど視覚形成に重要な作用をしていると考えられます。ただし、網膜にも血液ー網膜関門がありますので、摂取したGABAが網膜に入って作用を発揮することはありません。


毛様体上皮においてはGABA受容体は証明されていません。こうしてGABAの房水産生に対する影響も不明ですが、GABAで高眼圧を来したと言う報告はなく、恐らく眼圧などに大きな影響は与えないものと思います。