初めて会った時は


水戸黄門に出てくるような


ジジィに見えた



初めましてー


こんにちは!


トイレは?


大丈夫ですよ!




たったこれだけの会話でも


モウロクしたジジィでない事がわかる位


シャキシャキしている




俺はね


見ての通りこんなジジィだから


性欲は全くないんだ。。。



この町に遊びに来るのは


何でも話せる女性を見つけたくてね。


飲み屋の女の子は若くてダメだから。。




と話し始めた




私も以前は飲み屋に居ましたけど?



そう思いながら最初の時間を過ごした。




初めは私の事を警戒するような話し方だったけど


最後は打ち解けてくれたみたいで


笑って帰って行った





メールも電話も教えなくていいと言ったジジィ。。。



最後に会った時からかれこれ半年は経つだろう


週に一回は来店してたけど


最近めっきり来なくなった



このジジィには結構色々自分の事を話したような気がする


だから通ってくれたんだと思う。



映画の話


音楽の話


若い頃の話


食べ物の話


寝る前に考える事




話の内容を思い出せばキリがない位沢山しゃべった




そんなジジィが話してくれた事



こんな歳になると面白いと思えるような事もなく


ただ毎日が過ぎていく



夜目をつぶると


仲が良かった先に死んだ友人との思い出が蘇る


早くそっちに行きたいと思いながら



朝起きると生きてる自分が居て


げんなりする



と。




周りの知り合いは


一人一人居なくなっていく



今まで沢山嬉しい事も悲しい事も経験してきたけど


今となってはあんまり思い出せない



だから


生きてる間に


もう一回沢山話して


自分の人生は楽しかったんだと


死んでいきたい




そう言った




元気な間は


毎週来るからね



そう言っていたジジィ



もう3ヶ月経つ




客の言う事は信用しない方だけど



このジジィは毎回決まった曜日の


決まった時間に来店してた



どうせ怪我でもしたんだろう


バァサンの具合が悪くなって来れないんだろう


もしかしたら違う姉さんを見つけたのかもしれない



元気だったかぁ?


そう言いながらケロっと来るかもしれない




そう思うようにしてきた




でも




ジジィはあっけなく死んでしまったらしい



私はジジィと話している事が好きだった


私がこの世界に居る事


大変だなぁ


頑張り屋だなぁ


と言って励ましてくれた



この先


そんなジジィには出会えないかもしれない




短い期間だったけど


人生の先輩として


お客さんとして


腹を割って話せる人として。。。




少しは自分の人生を考える


きっかけを作ってくれた人




もう向こうで友達と笑って話してるかな?




ジジィ



ありがとう