手錠・腰縄 | 弁護士 土谷喜輝のブログ

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平成27年度から大阪弁護士会副会長に就任することになり、会員や一般の方への情報発信のためブログを開設しました。副会長は終わりましたが、ブログは継続することにしました。
ここで書いている内容は弁護士土谷喜輝の個人的な意見です。

 初めて刑事裁判を見た人はみな驚くのですが、勾留されている被告人は、手錠・腰縄を付けられたまま法廷に連れて来こられ、裁判官が法廷に入って来た後、手錠・腰縄が外されます。被告人が法廷に入って来てから、裁判官が来るまで時間がかかると、その間、ずっと被告人は手錠・腰縄をされたままで、見るからに「犯罪者」という感じです。本当は、有罪判決が確定するまで、無罪の推定が働いているのですが...

 裁判官は慣れているとしても、初めて被告人を見る裁判員に、「犯罪者」という印象を与えるのはよくないので、裁判員裁判の場合は、裁判官・裁判員が法廷に入ってくる直前に手錠・腰縄を外す扱いになっています。そういえば、うちの小学生の娘は、以前、「裁判イン裁判って、裁判の中に裁判が入っているの?」と聞いていました。バッグ・イン・バッグが流行っていたころです。

 本題ですが、昨年、裁判員裁判ではない刑事裁判において、「手錠・腰縄を裁判官に見られたくない」という理由で、裁判員裁判と同様に事前に外してくれなければ裁判に出ないと主張した被告人がいました。弁護人も、被告人と同じ主張をし、受け入れられなかったので、裁判官からの命令にも反して、出廷しなかったという事件が起きました。

 この件について、裁判所は、弁護人に対し、過料3万円の納付を命じ、一昨日、最高裁でこの決定が確定しました。

 http://digital.asahi.com/articles/ASH5M62FYH5MUTIL044.html

 出廷を拒み続けていたことで、裁判が延びていたという事情はあったのかもしれませんし、「命令に従わない弁護士が悪い」と批判することも簡単でしょう。しかし、そもそも、なぜ、裁判官が法廷に入る前に手錠・腰縄を外すことができないのか(裁判員裁判ではできているのに)ということも考えて欲しいと思います。

 細かいことかもしれませんが、20年以上、日本の裁判所で刑事弁護をしていると、「日本には推定無罪はないのか」と感じることが何度もあり、こういう細かいところから、裁判官の意識を変えて欲しいと思ってしまいます。