経営において「直感は当たるのか?」というお話です。

 「ムシの報せ」や「胸騒ぎ」を感じて判断したところそれが当たっていた…経営的にはどう考えるべきなんでしょう?

 まずは定番、右脳・左脳、というお話から。損益分岐点やキャッシュフローの検証は理屈の世界ですからどちらかというと左脳の担当で理詰めで行くことになります。学校に上がって以降、主に左脳を鍛えることが学習の大半を占めることになります。

 そして…(この辺、私の乏しい経験では確言できないんですが)この思春期を左脳中心でいく間は右脳はお休み、ということになっているのでは?と思います。

 デパートでスーツや靴を選ぶとき、(特に彼氏彼女にプレゼントするモノを選んでいる時)同じようなものの中で「ぱっ」と目に飛び込んでくる、「一目ぼれ」してしまうような商品ってないでしょうか?

 その時には、理屈は後回しでそのスーツなりの「触った感じ」「色合い」「気品」そう言ったものが相手にジャストフィットだ!と「直感」した結果ではないでしょうか。 …つまり、原材料がどうした、とか○回の分割で買えるとか、そんな理屈ではなく、右脳優位で決めていると思います。

 経営も同じ。理屈のみ、左脳中心で考えるとこの辺の「質感」に当たる部分が薄れてしまいます。

 

 仕事柄、いろいろなビジネス書を読みますが、企業の成功に導く判断を下すとき、経営者の最後の決め手は「直感」です。そりゃそうです。ソフトバンク社が携帯電話事業を買収したとき。ニトリが製造販売にのりだしたとき。このレベルの決断には前例も教科書もありません。

 右脳=直感で「イケる」と大まかに判断した後に、左脳でみっちり検証をかけるのは重要ですがまずは直感を大事にすべきではないかと思います。

 将棋のプロ棋士も対局中、次の一手を考えている時は右脳が活性化し、手が見つかったところで活性化している部分は左脳に移り、高速で打ち間違いではないかどうかの検証をする、という繰り返しをしながら勝負を進めるそうです。

 がっかりさせてしまうかもしれませんが、もう一つ思うのは、右脳=直感は、「間違えるときがある」ということです。カンを働かせても100発100中で当たるわけではありません。

 しかし、その精度を上げることはできるのではないか、と思っています。

 右脳には生まれてからのすべての記憶が(ひょっとすると生まれる前の記憶も)蓄積されている、とされます。直感は右脳を使い、生まれてからいままでの雑多な経験をデータベースにして判断を下しているのではと思います。

 ということはそのデータベースが豊富で偏りが少なければ、アウトプットとして出てくる直感も正確さが増す、ということになります。

 そのためには、

 

①目に入ってくるもの、耳に入るものをきちんと認識すること(普段見慣れたものは実は目に入っていても認識されないケースがあります。奥さんの髪型が変わってもわからない、など…)

②新しい刺激を受け続けるること(未知の作家やミュージシャンの作品に触れる、旅行をする、など)

③目で見て考える、という思考回路に頼らず、五感で「感じる」ことを意識してみる

 

 ところで、冒頭に書いた、「ムシの報せ」について。経営していて、なんとなく「やっちゃいけない」という気がしてくること。なんとなくおへそのうらのあたりがもにょもにょして来る感覚。

 

 日本語には「腹のムシがおさまらない」「腑に落ちる」「腹を決める」「腹をわって」などおなかにまつわる表現がいっぱいあります。

 

 …右脳に蓄えられたいままので知識経験の何かがアラームを送っている状態。「過去、にたような場面で痛い目に合っているぞ」ということ。だと思います。

 

 お腹がもにょもにょする理由もちゃんとあります。脳がどうやってできたか、という話につながるのですが、生物の進化に沿って考えると、

 ①消化管ができて口と肛門が別れた

 ②腸ができた

 ③腸に沿って神経節ができ、「感じる」「考える」ことができるようになった(脳の原型)

 ④神経節が口の側に寄って脳になった、という由来によります。

 お腹がもにょもにょするのは、たぶん、右脳よりももっと原始的なアラーム、と言えると思います。