簡単にリスケジュールについて本質を記しておきます。

 

 金融円滑化法(平成21年12月施行)以前は、リスケジュールという概念がなく、「約定返済できない=期限の利益喪失」でした。「返済を緩めてもらえれば企業が存続する、返済も進む」という企業がむざむざと倒産していったのです。

 

 小渕政権時、平成11年頃、特別保証枠を設け、中小企業に20兆円以上の資金を流し破たんをいったん回避したことがあります。しかし金融庁にはそのあとそれが不良債権の山を築いた、という苦い記憶があります。リーマンショックを受け再び、特別保証を行うこととなったとき、その対処として考えられたのが金融円滑化法で主な内容はリスケジュールに応じろ、でした。

 

 当初こそ、各金融機関は「金融庁はそう言っていますが銀行が必ずリスケに応じるわけではありません」という冷ややかな対応でしたが、制度ができてから丸8年が経過し、すっかり定着した感があります。

 

 金融円滑化法そのものは、平成25年3月に廃止されていますが、終了直前に制定された株式会社地域経済活性化支援機構法の中に「円滑化対応を続ける」という条文が盛り込まれ、制度の続行が決まりました。

 

 さて現在(平成28年秋現在)のリスケの実際、です。

 

1.まず資金繰り表(半年から1年程度の月次資金繰り表、直近3か月くらいの日繰り表)で自社の資金繰りをチェックします。銀行返済を含め資金が回れば問題なし。リスケジュールか?となるのは、基本的に資金繰りは赤字。預金取り崩しや役員からの資金投入で何とか回せるが…という場合にはCFが合っていないわけですからリスケジュールを検討することになります。

 

2.上記の赤字幅が少額で一時的なもの、とはっきりしていれば、リスケジュールなし、という選択肢や、足りない分を借り増してしのぐ、という選択肢になります。

 

3.CFが合っていない状態で、「元金返済を止めれば当面資金繰りは回る」となればリスケジュールを本格的に検討します。ここでの判断基準は、①営業赤字なら迷わずリスケジュール選択。本業がどんどん資金ロスを出している状況で返済をしている場合ではない。リスケジュールの間になんとしても黒字転換をする。②営業黒字でも返済には不足、という場合にはリスケジュールをしてもらっている間に業績改善し計画的な返済ができるようにする。

 

4.上記3の、回復のための事業計画をきちんとかけるか。おカネがないのでとりあえず止めてくれ、という申し入れは乱暴です。すくなくとも、〇年後にはいくら返せるようになっていくのでその間返済を待って、という筋の通った計画を準備できるかどうかです。

 

5.そして銀行申し入れに進みます。リスケジュールを受けていても融資を受けられるケースがありますが必要資金と返済財源がはっきりしていることが必要でハードルは高くなります。つまり、本当にもう借りられないか?について一度金融機関側と打ち合わせることになると思います。

 

6.いよいよリスケジュールしかない、となれば、①業績の分析と不振の原因(窮境原因)の特定、②それをどのように解決していくのか、③解決されたあと業績がどのように回復していくのか、④CF面にはその回復がどのように反映され、金融機関への弁済計画はどうなっていくのか、⑤リスケジュールをすれば資金は回っていくという資金繰り予定表、をセットにして持ち込むことになります。資金繰り予定表を求められるのはリスケジュール審議中に資金ショートしない、破たんしない、という証明のためです。銀行返済はすぐ止めてもらいます。金融機関によっては、「残高を置かないようにして」という対応をするところがありますが売掛金回収などが重なれば引き落としされてしまいます。返済引き落としそのものを止めてもらうようにします。

 

7.リスケジュール受付、となると保証協会付融資の場合は各金融機関から保証協会へ打診がされます。(余談ですが、金融円滑化法施行直後はリスケジュール手続きに長期間を要しました。このときによく「保証協会が返事をくれない」と言い訳のだしにされたようですが感触では金融機関側の事務の遅れが主因だったと思います。現在では保証協会の判断は非常に早く、リスケジュール手続きの中で障害になると感じることはほとんどありません)

 

8.保証協会、本店の内諾がでたところで保証条件変更申込書を書き、事務手続きへ。

 

9.リスケジュール審議中に止まっていた利払いと保証条件変更にともなう追加保証料を払い、条件変更に調印、という流れになります。

 

10.元金返済棚上げは緊急避難的に対応してくれる場合がありますが2年、3年と続けられるものではありません。元金返済を行う場合には、借入の金額でシェア割して返済額を計算します。1円単位まで分けるケースもありますが、細かい計算違いを防止する意味合いから、「千円未満の端数は切り上げ」にして丸めてしまう対応が多いのではないかと感じます。細かい話ですが、「千円未満の端数を四捨五入」とすると、切り上る金融機関と切り捨てられる金融機関がでてくるので「不公平だ!」ともめる可能性がでてきます。数百円のことで丸く収まるのならその方が良いと思います。

 

「がんばれ経営者!ひとりでもできる事業再生ノウハウ」

「できる、できるよ。必ずできる!」

 

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