その12 姿勢の役割 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

悪い姿勢は、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”の原因になります


 私達の生活環境は活性酸素に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、生活習慣の問題により引き起こされた「脳内セロトニン低下」と相まって、姿勢の悪さを引き起こしやすい状況にあります。すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
 こういったことから、現代では、姿勢の悪さが日常茶飯事にみられるようになってきました。


 私達は、日常生活を送る上で、私達は前屈みの姿勢をとる生活環境に置かれています。特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。

 
 こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。


 ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たいモノを持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎( 背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。

 
 人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨全体にかかることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
 これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛です。
 日常的に感じる極く軽度の頭痛は、このような姿勢の悪さによって引き起こされてきます。


 片頭痛では、生まれつきミトコンドリアの悪さが存在するため、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、とくに受けやすいことになります。このため、片頭痛では、姿勢の悪さを起こしやすくなっています。
 このため、平生から姿勢を正しくする生活習慣を心掛け、背筋を伸ばすことによって、ミトコンドリアを活性化させていなければ、最終的に「体の歪み(ストレートネック)」が形成されてくることになります。
 これまでの当医院の調査では、「体の歪み(ストレートネック)」の確認率は、男性で52%、女性では68%と圧倒的に多く、緊張型頭痛では84%、片頭痛では95%に、群発頭痛では全例に、「体の歪み(ストレートネック)」が確認されています。


「体の歪み(ストレートネック)」が形成されれば・・


 「体の歪み(ストレートネック)」が持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。
 

「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓                ↓
↓          脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓                ↓
↓          中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓                ↓
↓          
脳の過敏性、頭痛の慢性化

 自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
                               
(慢性頭痛)
 
尾側亜核で三叉神経と頸神経が収束する


 「体の歪み(ストレートネック)」のために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳の中で、三叉・頸神経複合体を形成していて、つながっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経核にも伝わります。


 このため、「体の歪み(ストレートネック)」が改善されないまま、放置されることにより、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。これが片頭痛を引き起こす準備状態を形成します。
 これがさらに、「脳の過敏性」、「頭痛の慢性化」へと繋がっていくことになります。また「体の歪み(ストレートネック)」は閃輝暗点を引き起こす要因にもなっています。
 このような後頸部筋肉群にかかる刺激(「体の歪み(ストレートネック)」)を取り除くことが、まず片頭痛を起こさないために重要になってきます。
 ここで注意すべきことは、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)いることです。傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。


 片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の疲労」を基盤として発症してきます。これは、両方の頭痛に共通して「体の歪み(ストレートネック)」が認められるためです。ストレートネックをなくせば、発作は激減することになります。
 片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)のない場合は、首の筋肉のこりは、大後頭神経に痛みのみが起きることによって、純然たる「緊張型頭痛」を発症します。


 片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)があれば、片頭痛の場合は、「セロトニン神経」が働きが悪くなって「痛みの感じやすさ」が存在するところに、首の筋肉のこりの刺激が、大後頭神経から三叉神経に絶えず刺激が送られ続けます。このため、「痛みの感じやすさ」がさらに増強され、常時、脳の過敏性が高まった状態が継続していきます。


自律神経機能との関連について・・とくに天気・低気圧との関連から


 首にはたいへん多くの神経や血管が集中しています。首の筋肉や関節の異常などによって、これらの神経や血管が圧迫されると、自律神経の働きが乱れ、さまざまな不定愁訴が起きることが多いのです。その症状は、頭痛、吐き気、耳鳴り、めまい、イライラ、不眠など、実に様々です。ときには、こうした不調が自律神経失調症やうつ病など、こころの病気にまで発展することもあります。

 ストレートネックが長期間、放置されて引き起こされる病態が「頚性神経筋症候群」です(東京脳神経センターの松井孝嘉先生による)。結果として、さまざまな自律神経失調症状が引き起こされ、片頭痛にストレートネックを伴う場合には、頭痛発作が「天気」によって左右されたり、光が異様に眩しく感じられたり、めまいが頭痛発作と関係なく出現したり、不眠、不安障害、パニック障害やうつ状態にまで発展することもあります。
 (これらは片頭痛の共存症とされています)


 こういったことから、慢性頭痛がこじれた状態になったり、ムチウチの場合にも同様ですが、頭痛をはじめとする色々な訴えが出てきます。その代表的なものは、「気象の変化、低気圧」によって頭痛が出現したり不定愁訴が増悪し、あたかも「天気予報士」のように天候を言い当てる方々もおられ、”気象病”の代表的疾患とされるほどです。


「頸性神経筋症候群」


 東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、「体の歪み(ストレートネック)」が長期間持続した病態として「頸性神経筋症候群」を提唱され、17疾患との関連について以下のように述べています。


頭痛 (緊張型頭痛と一部の片頭痛)

 
 仕事中や疲れがたまってきたときなどに、頭痛がして不快な思いをしている人も多いと思います。日本人で頭痛に悩んでいる人は、3000万人と言われています。4人に1人以上は何らかの頭痛を持っているということですから、これは大変な数字です。
  頭痛にも種類がありますが、その7割が緊張型頭痛、約3割が片頭痛です。
  つまり、2000万人以上は、緊張型頭痛に苦しめられているということになります。これほど広く症状がみとめられている緊張型頭痛ですが、なかなか治らず、しかも「原因がわからない」と言われ、内科や精神科、脳神経外科などで処方された薬をただのみ続けているだけの人や、あちこちの病院を転々とする人は珍しくありません。
中には、頻繁に起こる頭痛で気が滅入り、うつ症状に陥ってしまう人もいます。首が曲がらないほど頭が痛くなる人もいます。整形外科などで診察を受けても「異常なし」と診断されるのに、です。
 このように緊張型頭痛は、放っておくと心身にさらなる悪影響を及ぼしかねないやっかいな症状です。ほかの診療科ではなすすべがないとされてきましたが、その原因は首こりにあります。後頭部から首にかけての筋肉がこって固まってしまうことで、そこを通っている大後頭神経が圧迫され、痛みのほか、さまざまな自律神経症状が現れてきてしまうのです。
 片頭痛の方も、緊張型頭痛と同様の起こり方をします。とくに頸椎レントゲン検査でストレートネックを示される方です。同じように首こりが原因になっていますので、ここを解決しない限り、片頭痛はよくなりません。


めまい


 めまいは、内耳機能の異常で起こるとされていることが多いので、患者さんは耳鼻科で診断を受けることがよくあります。しかし、そこではメニエール病(または症候群)などと診断され、結局、薬を処方されたり、点滴治療を受けたりするだけで終わってしまうことが大半です。中には、「ストレスのせい」「内耳機能の低下かもしれない」「低血圧と関係があるかもしれない」などと、非常に曖昧な診断でお茶を濁されてしまうことも少なくありません。
 しかし、めまいの多くは、首こりの治療によって完治することが明らかになっています。中には本当にメニエール病などが原因でめまいを感じている人もいますが、実は患者さんのうちでもごくわずかです。仕事が続けられないような深刻なめまいは、少なくとも「メニエール病」のような病気ではありません。これは、医師が「メニエール病」と診断さえすれば、患者さんが、納得し、あきらめてくれるのではないかとの願望に基づいた診断にすぎません。決して、信用してはならない点です。
 歩いたり立っているときになんとなく不安定で、雲の上を歩いているようなフワフワ感がある、天井がグルグルと回っているように感じる、横になっているときに、地中に引きずり込まれるように感じるなどの症状がある場合、頸性めまいの可能性があります。
 これまで医療機関で「メニエール症候群」と診断され、一向に改善されない方は(本当にメニエール病であれば、”発作時”には異常な眼振が出現しているはずです。これまで私が、他の医療機関で”メニエール症候群”と言われた方々は、誰一人として眼振が確認された方はおりません。現実に”メニエール症候群”という病気そのものは存在せず、このような診断をする医師は、まず信用できません。そのつもりで対処すべきです)、自分のめまいが首こりから来る頸性めまいかどうかを判別するには、松井先生の作成される「問診表」が非常に役に立ちます。めまい以外の症状がたくさん出ていれば、頸性めまいと言えます。この問診表は東京脳神経センターのHPに掲載されています。


ドライアイ


 ドライアイは、眼科では「パソコンの使いすぎで目が疲れているせいですね」などと診断され、目薬を渡されて「少しパソコンを控えるように」などとアドバイスをもらって帰されることがほとんどだと思います。
 しかし、このような診断とアドバイスに従ってドライアイが完治した人はいないと思います。もし、「目の疲れ」が原因なら、パソコンの使用を控えれば、症状が大きく改善するはずです。自宅ではほとんどパソコンを使わない人なら、週末、テレビを見るのを控えれば、目の疲れも多少回復してドライアイも少しは改善しそうなものです。
 しかし、しつこいドライアイに悩まされている人は、一説によれば800 万人とも言われるほどで、とにかく増える一方です。つまり、眼科ではドライアイの根本的な治療は、できないのが現状です。
 このことからも、ドライアイが「画面の見過ぎ」のようなシンプルな原因で起こる症状ではないことは、明らかです。
 では、どうしてドライアイが生じるのでしょうか。
 その理由は、ドライアイの人の瞳にペンライトの光を当ててみると分かります。
 人間の瞳孔は、対光反射といって、まぶしいところでは小さくなり、暗いところでは大きくなる性質があります。これは、人間の意思とは関係なく起こる現象です。
 ドライアイの人の瞳は、この対光反射が非常に鈍いのです。光を当てても、瞳孔が本来よりも少ししか閉じないのが普通で、症状がひどい人の中には、まったく瞳孔が反応しない人もいます。まるで、死人の瞳のように光に無反応なのです。
 ドライアイは目が乾いて不快感が続く、涙が少ないことが原因ですが、これは、首の筋肉がこって硬くなることで自律神経が圧迫され、副交感神経の働きが悪くなるのです。涙腺に働いて涙を出すのは副交感神経です。これが失調して涙が出なくなるのです。
 首の筋肉のこりをほぐし、自律神経を圧迫から解放してやれば、自然と身体はバランスを取り戻し、ドライアイも解消されます。これが、先程の「ギラギラめまい」です。


自律神経失調症


 現在、日本の外来患者の4分の3は不定愁訴で来院すると言われており、その原因として名前の挙がることが多いのが、この「自律神経失調症」です。
 しかし、そのように診断をした病院のほとんどは、「なぜ自律神経が失調するのか」「完治する方法は何か」について、満足な回答を持っていないのではないでしょうか。
 自律神経失調症によって起こるさまざまな身体の異常は、頭痛、耳鳴り、口の渇き、喉の圧迫感、動悸、めまい、立ちくらみ、息苦しさ、手足の冷え・しびれ、多汗、皮膚のかゆみ・乾燥、頻尿、関節の痛み、倦怠感、微熱、不安感などなど、挙げればきりがありません。
 こうした身体の調子を司っているのが自律神経なので、それがおかしいというところまでは対症療法の発想でも行き着くわけですが、異常のある部位ごとに治療するわけにもいかず、医師も内心、途方に暮れてしまうわけです。
 しかし、このように「自律神経の異常でさまざまな不調が発生する」というパターンは、まさに首こりがもたらす最も典型的な例です。病院の治療では、やはり多くは内服薬を処方されるだけで終わってしまうことが多いと思いますが、首こりを和らげる治療を続けると、徐々に身体の不調は薄れていき、やがて完治します。


パニック障害


 急に怒濤のような不安感に包まれて、我を失いそうになるパニック障害。その原因は、急に起こるめまいや動悸、呼吸困難にあるとされています。そのような症状が強く起こると、立っていられないくらい頭がくらくらしたり、恐怖心や不安感でいっぱいになってしまうのです。品対の異常が心にまで影響を及ぼし、「パニック」を引き起こしてしまう訳です。頻発すると、「次はいつこの発作に襲われるのだろう」という不安感が日常を支配し始め、いつも気分がすぐれず、おびえたり恐れたりしているような気持ちになってしまい、やがてうつ状態にも陥ってしまいます。
 このようなパニック障害とは、元をたどれば、自律神経の異常から来る急激な体調不良(発作)に由来することがほとんどです。そして、その自律神経の異常が首こりから起こっているケースは、多々あります。
 首の筋肉のこりを徐々にほぐしていくと、次第に発作的な身体の異常は起こらなくなっていきます。精神的にも落ち着いていき、やがてパニック障害と決別することができるのです。
 

うつ状態


 処方された薬を飲んでいるのに治らない。最近、そんな新しいうつ症状に悩む人が増えています。
 これは、従来のうつ病とはまったく発症のメカニズムが異なる別の病気である「新型うつ」だからにほかなりません。これまでの治療方法が通用しないうつが、近年、増えてきているのです。
 その原因がどこにあるかといえば、実は首こりです。「新型うつ」は、頸性神経筋症候群の一環として起こるうつ、つまり「頸性うつ」なのです。
 首こりが重なると、疲労感やふらつき、頭痛などのさまざまな体調不良(不定愁訴)が現れます。不定愁訴が続くと、何をしても気分が晴れることがなく、どんどん気が滅入ってしまいます。やがて「こんなつらい毎日なら死んだほうがまし」と考え、自殺という悲しい選択をしてしまう人がたくさんいます。「自分はこの世にいないほうがいい」と自己否定をするというよりも、「こんなつらいなら死んだほうがまし」と、不定愁訴による体調不良やそれに起因する精神的な落ち込みから逃れたいという思いで自殺を選ぶことが多いのが、「頸性うつ」の特徴です。
内科、精神科や心療内科、脳神経外科などあちこち回って八方手を尽くしてもダメだった、という状態で来院するうつの人が、首こりを治療することで完治しています。そういう方は、首こりがひどく、中には石のようにパンパンにこり固まっている人も多いのです。
 しかし、みなさん治療するに従い、表情が明るくなり、不定愁訴も消え、完治するころには、笑顔も多くなり、お腹の底から笑えるようになり「早く仕事に戻りたい」とか「あれもしたい、これもしたい」と大変意欲的になります。
 もちろん、うつの中には、純粋に精神的な原因で発症するものもありますが、これは全体の1割にも上りません。9割以上のうつ病は、頸性うつです。頸性うつは、首こりを治療すれば、完全にサヨナラすることができます。


更年期障害


 めまい、動悸、のぼせ、耳鳴り、眠れない、イライラする・・中高年の女性に多いとされるさまざまな身体の異常とそれに伴う情緒不安定は、「更年期障害」と言われています。ホルモンバランスの崩れによって起こるとされ、女性ホルモンを補う治療方法が一般的に行われております。
 また、本来閉経期前後の女性に多いはずの更年期障害が、若い年代に起こる若年性更年期障害、男性にも似たような症状が出る男性更年期障害があると言っているドクターもいます。
 以上のように、40 歳代、50 歳代以降の女性に不定愁訴があると、ほとんどが更年期障害と診断されるようです。血液検査を行って、女性ホルモンの1つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が著しく減少していることが確認された場合は、薬でエストロゲンを補うホルモン補充療法が有効とされています。この年代の女性で、エストロゲンが減少しているのは当たり前ともいえます。
 ところがホルモン補充療法を行っても症状が改善されない人も少なくないのです。私の知人のベテランの産婦人科医師の経験では、更年期障害と診断された方でも、ホルモン補充療法で治せるのは4割程度だと言っています。残り6割の人の不調は別の原因で生じているそうです。つまり、首の筋肉の異常を疑ってみる必要があるのです。
 もし、婦人科で更年期障害の治療を受けても症状がよくならないときは、首のこりがないかをチェックし、異常があれば首の治療を行うべきです。
 首の筋肉の異常を治療すると、不定愁訴は霧散して、更年期障害といわれていた症状はホルモンの治療なしで完治します。


頸椎ねんざ


 頸椎ねんざとは、交通事故やスポーツの怪我などで、首の筋肉や靱帯、頸椎などをねんざすることです。追突による「ムチウチ」も、この頸椎ねんざの一種です。
 頸椎ねんざは、首の痛みや動きの制限のほか、めまい、吐き気、頭痛や肩こりなど、さまざまな不定愁訴を引き起こします。いろいろな検査を受けても「異常なし」とされるのにこうした症状がなくならない、といったことはよくあります。
 しかし、これも首の筋肉が原因で起こっているケースがほとんどで、頸性神経筋症候群の治療をすれば、まず完治します。
 頸椎ねんざでは、牽引する治療(首を引っ張る治療)を整形外科では行っていますが、これは、異常を発している首の筋肉に新しい外傷を加えることになりますので、絶対にしてはならない治療法です。いまだに、このような治療をされる医療機関が存在しますので注意が必要です。病気を長引かせ、かえって悪化させてしまいます。また、首にカラーを装着するのも、首の筋肉のためには逆に害になり、治療が長引くというのは、世界中で常識とされてきています。
  頸椎ねんざを起こした後、不定愁訴が長引くようでしたら、頸性神経筋症候群をまず疑うのが原則になっています。

 
多汗症


 身体を動かしているわけでもないのに汗が多い症状が、多汗症です。
重症の場合は、一晩に3回も4回も下着を替えないといけないほどの大量の汗をかく人もいます。発汗は交感神経優位、副交感神経劣位で起きてきます。首の筋肉の異常で起こる自律神経失調は、常にこの型です。
 こうした人は、頸性神経筋症候群の治療で症状がぴたりと止まります。


VDT症候群・・前屈みの作業


 目の疲れや肩こり、ドライアイ、めまい、吐き気などの身体の不調と、倦怠感などの精神の不調は、「パソコン作業のしすぎ」に原因を求められ「VDT症候群」と見なされることもあります。「パソコンなどのVDT機器を使うことで生じるストレス」ということで、その原因を「テクノストレス」と呼ぶこともありますが、これもまた原因についての十分な説明とは言えません。
 パソコンを使っているせいで身体に不調を感じていることは確かなのですが、その原因は、目から入ってくるデイスプレイの光などにあるのではありません。また、「不慣れなパソコンを使うストレスで・・」などとストレスの原因が説明される場合もありますが、これも残念ながら、原因の説明としては不十分です。
 パソコン作業で問題なのは、作業中の姿勢が原因で首に負担がかかりすぎ、首こりが起こることです。それによって自律神経が不調に陥っているので、心身にさまざまな不調が現れてくるのです。
 仕事などでパソコンを使う時間が長くなると、不定愁訴が現れるため、因果関係を誤解しがちですが、その根本は首こりです。首こりを治療すれば、不定愁訴はなくなりますし、首こりに注意して、予防しながらパソコンを使うようにすれば、いくら長時間の作業をしても、VDT症候群は現れません。
 VDT症候群には、キーボードやマウスの使いすぎで起こる手首の痛みなども含める場合もありますが、大半の方が不快で深刻に思っているのは不定愁訴です。そして、それは、治療することが可能なのです。
 「あなたはVDT症候群です」と診断されたとしても、現代社会で仕事や生活を続ける限り、パソコン作業から離れて生きていくことはできません。不的確な診断に惑わされず、まず首こりを疑ってみてください。

 
 ここでは、パソコン作業に関してしか述べていませんが、パソコンを使わない作業で、あなた自身が、毎日「前屈みの姿勢」で作業される点も全く同じことが起きてきます。
決して、自分は関係ないと考えずに、自分の仕事・生活習慣を振り返ってみて下さい。
 他人事ではないはずです。首こりからさまざまな危険な状態に至らぬように毎日の注意が必要とされると言えます。

 
 ”頸性神経筋症候群”はストレートネックが長期間持続したために生じる病態であることを忘れてはなりません。それは、取りも直さず、「頸性神経筋症候群(首こり病)」の一連の病態”緊張型頭痛、めまい、自律神経失調症、うつ、パニック障害、ムチウチ、更年期障害、慢性疲労症候群、ドライアイ、多汗症、不眠症、機能性胃腸症、過敏性腸症候群、機能性食道嚥下障害、血圧不安定症、VDT症候群、ドライマウス”は、片頭痛の共存症そのものであることを考えるなら、緊張型頭痛と片頭痛は一連の連続したものであると考えるべきです。

 
それでは、前兆の「閃輝暗点」はどのように起きるのでしようか?


体の歪み(ストレートネック)の観点から


 小橋 雄太さんはブログ「イミグラン錠副作用なしで片頭痛を治しちゃえ」82)で自らの体験を述べておられ、10年以上、閃輝暗点を伴う片頭痛に悩まされ、「体の歪み」に片頭痛発作の引き金があることに気付いて、当初は整体師さんの指導を受け、この指導を毎日忠実に守り・実行することによって片頭痛・閃輝暗点を改善されました。
 このようにカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々は「体の歪み(ストレートネック)」に対して施術され、閃輝暗点を改善されておられます。
 こうしたことから、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々からは、トリプタン製剤やミグシス・テラナスなどの薬物では治るはずはないと唾棄される現実があるようです。


 私は「閃輝暗点」を伴う方々で、頸椎X線検査でストレートネックを呈する方々に対して、ストレートネックを改善させることによって、閃輝暗点がどのようになるのかを検討してきました。
  60歳以上の方で、若い頃、片頭痛の既往のない方で「閃輝暗点」を訴えて来院された方々を15例経験していますが、これらの方々全例にストレートネックを認め、同様に「ストレートネックの改善」のみで、「閃輝暗点」は消失しています。
 これとは別に、若い世代の「閃輝暗点」を伴う片頭痛の場合も、当然「ストレートネック」を伴っておられる方々に「ストレートネックの改善」を行わせますと、前兆である「閃輝暗点」がまず消失してから片頭痛が改善されていくという経過をとっています。


 このような成績をみますと、頭痛専門医は、閃輝暗点出現時の血流低下の状態をSPECTもしくはMRIで確認されますが、これは”閃輝暗点出現時”の”結末”を観察しているに過ぎないと考えるべきもので、あくまでもその引き金となるものは、頸部の異常な筋緊張”「体の歪み(ストレートネック)」”にあるものと考えるのが妥当のようです。
 しかし、専門家は、このような「体の歪み(ストレートネック)」の存在意義そのものを否定されるため、このような考え方に至ることはありません。


 「体の歪み(ストレートネック)」を悪化させる要因として・・


  1.”前かがみ””うつむき”が元凶
  2.車の追突事故をはじめとした交通事故・・ムチウチ
  3.歯の噛み合わせの悪さ
  4.外反母趾、指上げ足(浮足)、扁平足など足裏の異常
  5.ミトコンドリアの働きの悪さ
  6.脳内セロトニンの低下

 

      以上があることを忘れてはなりません。


 いずれにしても、「体の歪み(ストレートネック)」を一端形成させてしまいますと、簡単には改善・是正できません。とくに女性で30歳を超えるまで放置されれば、改善させるには並大抵な努力が必要とされることから、作らないことが原則です。
 この「体の歪み(ストレートネック)」は、慢性頭痛の基本骨格ともなるもので、これを放置することにより、脳過敏・慢性化の根源ともなってきますので、注意が必要です。


 そして、この「体の歪み(ストレートネック)」は、子供の慢性頭痛においても既にみられることを忘れてはならない点です。


 問題は、専門家は現在、「体の歪み(ストレートネック)」は、頭痛とは一切関係はないとされていることです。
 しかし、片頭痛患者さんがムチウチの事故に遭遇したことを契機に、一挙に片頭痛が増悪してくるという臨床的事実を決して忘れてはならない点です。