本年度、最後にあたって・・「頭痛持ちの頭痛」 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 「頭痛」は症状で、多くの病気により頭痛が起こります。くも膜下出血、髄膜炎、脳腫瘍などの脳の病気が頭痛を起こすことは良く知られています。しかし、慢性頭痛である「頭痛持ちの頭痛」は、たかが頭痛として軽く扱われてきました。
 最近、頭痛持ちの頭痛といわれるもののなかに「頭痛そのものが脳の病気」であることがわかってきました。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛です。それらの原因のメカニズムが脳の科学の進歩により解明され、有効な治療薬が開発されました。頭痛に長年つらい思いをしてきた人に福音となり、「たかが頭痛」が「されど頭痛」と考えられるようになってきたわけです。


 まず、片頭痛についての医学が進歩しました。

 
 片頭痛などで頭痛の辛さに悩んでいる人が病院を受診しても、脳のMRIやCT検査で異常が見られないと「原因不明」あるいは「心配のない頭痛」として片付けられてしまうことが未だにあります。脳の検査で異常がないと、脳に異常がないとされるだけでなく、精神的なものと考えられやすく、実際に精神科や心療内科を受診して、パニック障害、うつ病、適応障害などの診断を受け、その治療を受けることもあります。片頭痛の診断と治療にたどり着くのに遠回りする人が少なくないのが現状です
 

 片頭痛を起こす脳のメカニズムが明らかになったのは最近です。からだの痛みをコントロールしているセロトニン、サブスタンスPなどの脳内物質に異常が起こっていることもわかってきました。片頭痛が脳の様々な変化で起こることがわかった結果、片頭痛のメカニズムに有効な治療薬も開発され、片頭痛人生が変わった人も増えています。
 片頭痛は脳の一部で細胞の活動が高まり、頭痛発作の震源地となります。そのからの脳の興奮が周囲に拡がり、脳の機能に様々な影響を及ぼし、脳の血管が拡張して激しい痛みを生じたり、吐き気とともに光・音過敏状態にもなります。
 
 片頭痛のときに起こる脳の変化は、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認されました。片頭痛発作中にはかなり激しい脳の変化がおこりますが、発作が治まると脳も完全に正常な状態に戻ることもわりました。すなわち、片頭痛は発作性に頭痛が起こるたびに脳に病気が起こる。ただ、頭痛のないときには脳は全く正常で、本人もケロッとしているというわけです。
 

 片頭痛の治療は、発作のメカニズムを治療することが可能になりました。セロトニンのレセプターを活性化するトリプタン系の薬剤が使われます。病気としての片頭痛のメカニズムが徐々に解明され、また病気の火元を治療することが可能となってきたのです。

 
緊張型頭痛とは・・


 毎日のように頭痛がしたり、持続性の頭痛あるいは頭重感の続くのが緊張型頭痛です。 ストレス頭痛、緊張性頭痛、心因性頭痛、肩こり頭痛などとも呼ばれ、からだや心にかかるストレスが原因になると考えられています。たとえば、不自然な姿勢がストレスとなり首の後ろ筋肉が固く懲り、血流が障害されます。その結果、乳酸などの疲労物質が蓄積し、プロスタグランディンなどの痛み物資も産生され、首の後ろから後頭部にかけての痛みが生じます。ただ、筋肉へのストレスのみが緊張型頭痛の原因でもなさそうです。心因性ストレス頭痛でも同じような症状が起きるからです。

 国際頭痛学会の分類では、持続性で頭を締め付けられるような頭痛や頭重感に共通のメカニズムが存在すると考え、まとめて緊張型頭痛と呼ぶことにしました。原因としては様々なストレスが関与していると考えられます。診断基準としては、①持続性の頭痛(持続の期間により細分類されている)、②痛み方は両側性、圧迫感または締め付け感(非搏動性)、強さは軽度~中等度で日常的な動作により増悪しない、の4項目の特徴の少なくとも2項目を満たす、③吐き気やおう吐はなく、光・音への過敏はあってもどちらか一方のみとなっています。もちろん、脳やその他の病気による頭痛でないことを調べる必要があります。
 

 脳には周囲の環境や体内の変化に対応して、体を一定のコンディションに保つ機能があります。筋肉の緊張が続くと疲労物質や痛み物質の信号が脳に送られます。脳では筋肉の痛みとして凝った痛み、張った痛み、つった痛みなどと色々に感じます。筋肉からの情報は神経を介して脳に伝えられますが、神経の通る経路には中継点がいくつかあります。痛み信号が中継される場合、中継がスムースに行われるよう、脳の痛み中枢から痛み調節物質が送られます。セロトニン、エンケファリンなどが痛みの中継を調整します。痛み調節がうまくいかないと、環境の変化からくるストレス刺激がつらい痛みに感じられたり、痛みが持続したりします。

 
 頭痛の原因となるストレス刺激を減らすことが重要で、うつむき姿勢の長時間作業を避けること、精神的ストレスを避ける工夫などが大切です。根本的な治療は、脳の痛み調節機能の障害を改善することです。治療には鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬、筋弛緩薬などが使用されますが、出来ればバイオフィードバック、頭痛体操などで心や体を調整し、前向きに頭痛に対処することが脳の痛み調節系に最も良い影響を与えると考えられています。


群発頭痛とは・・


 群発頭痛は若い男性に多く、耐え難いほどのつらい頭痛です。明け方に頭痛で目をさまされ、痛みがあまりにも強いため屋外に出て電柱に頭をぶつけながら痛みをこらえている、といった経験をした人も少なくありません。群発頭痛は突発する目の奥の激しい頭痛。1回の発作は1~3時間と短いが、発作は2~6週間にわたり群発します(連日のように同様の発作が同じ時間帯に起こることが多い)。

 
 群発頭痛は目覚まし時計のように決まった時間に起こりやすく、また群発頭痛発作には日内リズムに関係するメラトニンという脳内物質が変化することがわかっています。生体の日内変動をコントロールしているのは脳にある視床下部です。その視床下部が群発頭痛の発作時に異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されました。 視床下部は三叉神経や自律神経を支配しているため、三叉神経により内頸動脈が拡張と炎症を起こして激しい痛みを生じたり、さらに、この血管を取り巻いている自律神経が刺激され、頭痛と同側に流涙、結膜充血、鼻閉、鼻汁、ひたいの発汗、まぶたの下垂などの自律神経症状が起こります。最近は、群発頭痛の病名として「三叉神経・自律神経性頭痛」とも呼ばれるようになりました。

 
 トリプタン系薬剤、とくにスマトリプタン(イミグラン)の皮下注射は激しい頭痛にとても効果的です。注射して30分以内に、頭痛発作の77%が完全に解消したと報告されています。「自殺頭痛」とまで呼ばれていた頭痛の治療に、画期的な新薬とされています。日本でも2008年4月よりスマトリプタンを病院以外の場所で自己注射する事が保険で認められるようになりました。注射を打ってもらうために救急車を呼ぶほどだった人には、大きな進歩です。ただ、自己注射を適切で安全に行うためには、医師や看護師の指導が必要です。尚、片頭痛の重症型にも在宅自己注射が保険で認められています。


 このように、頭痛持ちの頭痛は専門家によって説明されてきました。

 
  「頭痛そのものが脳の病気」???

 

 先述のように、片頭痛の場合は、発作時に起こる脳の変化が、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認されたこと。
 緊張型頭痛の場合は、脳には周囲の環境や体内の変化に対応して、体を一定のコンディションに保つ機能があり、筋肉の緊張が続くと疲労物質や痛み物質の信号が脳に送られ、脳では筋肉の痛みとして凝った痛み、張った痛み、つった痛みなどと色々に感じ、筋肉からの情報は神経を介して脳に伝えられ、神経の通る経路には中継点がいくつかあり、痛み信号が中継される場合、中継がスムースに行われるよう、脳の痛み中枢から痛み調節物質が送られ、セロトニン、エンケファリンなどが痛みの中継を調整し、痛み調節がうまくいかないと、環境の変化からくるストレス刺激がつらい痛みに感じられたり、痛みが持続したりすること。
  群発頭痛の発作時には、その視床下部が異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されたこと。


  このような、枝葉末節な所見に基づいて、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛は、「頭痛そのものが脳の病気」とされています。

 
 すなわち、脳の中に異常のない慢性頭痛は「頭痛持ちの頭痛」とされ、病気としての片頭痛のメカニズムが徐々に解明され、また病気の火元を治療することが可能となってき、セロトニンのレセプターを活性化するトリプタン系の薬剤が使われるようになったと、専門家は申されます。

 


 これまで、このような「片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、その他の一次性頭痛」を慢性頭痛として一括して考えべきであると提言し、果たして「頭痛そのものが脳の病気」なのかどうか甚だ疑問である、としてこのブログで、その見解の相違点について述べてきました。


 これまで、私のブログは「多因子遺伝」とか「ミトコンドリア」とか「セロトニン神経系」といった専門用語を使って説明してきたことから、難解で理解しがたいと顰蹙を買ってきたことから、同じ内容のことを、角度を変えて多面的に、クドクドと説明申し上げて参りました。

 結論として、片頭痛の場合、トリプタン製剤の服用といった対症療法で、片頭痛患者さんの生活の質QOLを向上させるだけが、片頭痛の”適切な治療”ではなく、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛の段階から適切に対処することによって、片頭痛へと移行させることなく、片頭痛そのものを予防することが、重要であると述べて参りました。
 本年度最後のシリーズの「こうして医者は嘘をつく」で、多少は理解して戴けたのではないかと思っております。


 今年も、本日を含めて残すところ2日間になりました。
 当医院は昨日午前中で仕事納めとなり、午後から、薬品の棚卸し作業、レセプト作成、帳簿の最終点検と慌ただしく年末の残された作業を終えることができました。
  年末・年始の休みの間に英気を養って、来年度に向けて備える予定です。
 来年こそは、脳のなかに異常のない慢性頭痛、「頭痛持ちの頭痛」をどのように考えるべきかを、私達・慢性頭痛で現実でお悩みの方と一緒に、さらに理解しやすい形で、説明していく予定です。


 本年度は、多くの方々に当ブログ「頭医者のつぶやき」にアクセスして戴き、ありがとうございました。来年度も、よろしくお願い申し上げます。