頭痛診療レベルを向上させるために・・今回の学会抄録集から | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 毎年の学会で強調されることですが、今回の学会でも「頭痛診療レベル」を向上させるために、以下のような「国際頭痛分類 第3版β版」に基づいて、一般開業医は、この分類の1桁~2桁の診断を行い、専門家は3桁以上の詳細な頭痛診断をすべきとされます。
 この1桁、2桁、3桁というのは、例えば「外的寒冷刺激による頭痛」のように4.5.1 といったように3桁まで診断するということです。
 まず、念のため「国際頭痛分類 第3版β版」をお示し致します。ざっとその概略をご覧下さい。


国際頭痛分類第3版(β版)では、


第1部: 一次性頭痛


1 片頭痛
2 緊張型頭痛(TTH)
3 三叉神経・自律神経性頭痛
4 その他の一次性頭痛

  4.1 一次性咳嗽性頭痛
  4.2 一次性運動時頭痛
  4.3 性行為に伴う一次性頭痛
  4.4 一次性雷鳴頭痛
  4.5 寒冷刺激による頭痛
   4.5.1 外的寒冷刺激による頭痛
   4.5.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
      ※ (アイスクリーム頭痛)
   4.6 頭蓋外からの圧力による頭痛
   4.6.1 頭蓋外からの圧迫による頭痛
   4.6.2 頭蓋外からの牽引による頭痛
  4.7 一次性穿刺様頭痛
  4.8 貨幣状頭痛
  4.9 睡眠時頭痛
  4.10 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)


第2部: 二次性頭痛


   5. 頭頸部外傷・傷害による頭痛
   6. 頭頸部血管障害による頭痛
   7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
   8. 物質またはその離脱による頭痛
   9. 感染症による頭痛
  10. ホメオスターシスの障害による頭痛
  11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔

    面・頭蓋の構成

     組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
  12 精神疾患による頭痛


 そして、「片頭痛の分類」として、この「分類」では、以下のように示されます。これもあくまで参考のためです。


1. 片頭痛


 1.1 前兆のない片頭痛
 1.2 前兆のある片頭痛

  1.2.1 典型的前兆を伴う片頭痛
  1.2.1.1 典型的前兆に頭痛を伴うもの
  1.2.1.2 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの
  1.2.2 脳幹性前兆を伴う片頭痛

  1.2.3 片麻痺性片頭痛

   1.2.3.1 家族性片麻痺性片頭痛(FHM)
   1.2.3.1.1 家族性片麻痺性片頭痛 I 型 (FHM1)
   1.2.3.1.2 家族性片麻痺性片頭痛 II 型 (FHM2)
   1.2.3.1.3 家族性片麻痺性片頭痛 III 型 (FHM3)
   1.2.3.1.4 家族性片麻痺性片頭痛,他の遺伝子座位
   1.2.3.2 孤発性片麻痺性片頭痛

  1.2.4 網膜片頭痛

 1.3 慢性片頭痛

 1.4 片頭痛の合併症

  1.4.1片頭痛発作重積
  1.4.2 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの
  1.4.3 片頭痛性脳梗塞
  1.4.4 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作

 1.5 片頭痛の疑い

  1.5.1 前兆のない片頭痛の疑い
  1.5.2 前兆のある片頭痛の疑い

 1.6 片頭痛に関連する周期性症候群

  1.6.1 再発性消化管障害
  1.6.1.1 周期性嘔吐症候群
  1.6.1.2 腹部片頭痛
  1.6.2 良性発作性めまい
  1.6.3 良性発作性斜頸


 このように300種類以上の頭痛が細かく分類されています。
 私も、この分類の前の「国際頭痛分類 第2版」が出版された際には、3桁診断を目指して、繰り返し・繰り返し、診察の合間をみて、お坊さんが読経するように、念仏を唱えるがごとく「国際頭痛分類 第2版」を読みました。少なくとも50回は読んだでしょうか。
 そして、診察の場面では患者さんを前にして3桁診断を行うために格闘でもするがごとく、患者さんそっちのけで3桁診断に努めてきました。

 しかし、年をとるに連れてこのような3桁診断にいつしか疑問を抱くようになってきました。といいますのは、このようにすることによって、同一の患者さんが、5つも6つも頭痛を持つことでした。
 しかし、今回の抄録集でも頭痛専門医は、頭痛研究のためには、3桁以上の詳細な頭痛診断をすべきとされます。

 「国際頭痛分類 第2版」がこの世に出てから10年以上経過します。このように頭痛専門医は、日常診療を行う際に、3桁以上の詳細な頭痛診断を行われ、今回の抄録集では、日本のエキスパートによる頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると豪語されております。このように豪語されている現在です。このため私は、頭痛研究および診療がどのように「3桁以上の詳細な頭痛診断を行う」ことによってどのような頭痛研究の進展が観られるのかを、毎年の学会誌を心待ちしてきました。そして医学雑誌に頭痛特集が組まれる度にすべて購入した上で逐一読ませて頂いて参りました。しかし、現時点においても「3桁以上の詳細な頭痛診断を行った」研究成果があるのか疑問に思えてならず、毎回、肩すかしを食らってきました。このような研究成果は、専門医独自のものでだったのでしょうか。少なくとも一般開業医に、こうした研究成果が示されることはありませんでした。こういった研究成果の結実を年々提示していくのが専門医の役割ではないでしょうか。

 このような専門医による頭痛研究の成果が一切明らかにされないことから、次第に、私自身の考え方も年と共に枯れた考え方へと移行してきました。
 それは、頭痛患者さんを診察する場面において、まず、脳のなかに異常があるかどうか、を神経学的検査法もしくは頭部の画像検査を行って否定した上で、なにも異常がなければ、脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)として”一括して”対処するということです。すなわち、個々の細かな診断分類などは行わないということです。また必要もないことです。


 このような「一次性頭痛」(慢性頭痛)には以下のようなものがあります。これも概略をお示しするためのものです。


1 片頭痛
2 緊張型頭痛(TTH)
3 三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛が含まれます)
4 その他の一次性頭痛

  4.1 一次性咳嗽性頭痛
  4.2 一次性運動時頭痛
  4.3 性行為に伴う一次性頭痛
  4.4 一次性雷鳴頭痛
  4.5 寒冷刺激による頭痛
   4.5.1 外的寒冷刺激による頭痛
   4.5.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
     ※ (アイスクリーム頭痛)
  4.6 頭蓋外からの圧力による頭痛
   4.6.1 頭蓋外からの圧迫による頭痛
   4.6.2 頭蓋外からの牽引による頭痛
  4.7 一次性穿刺様頭痛
  4.8 貨幣状頭痛
  4.9 睡眠時頭痛
  4.10 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)


 このような慢性頭痛の9割は、緊張型頭痛・片頭痛で占められ、これ以外に群発頭痛がありますが、これらを含めた「その他の一次性頭痛」は1割前後です。


 一次性頭痛のなかには、インドメタシンという鎮痛薬が極めて有効な頭痛があります。
 絶対的に有効な頭痛としては、発作性片側頭痛と持続性片側頭痛です。
 有効とされる頭痛としては、一次性穿刺様頭痛、一次性咳嗽性頭痛、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一次性頭痛、睡眠時頭痛、貨幣状頭痛があります。
 これらは、「その他の一次性頭痛」のなかに分類されるものです。
 このような、インドメタシンが有効な頭痛には、症状の上で「特徴」があります。このような頭痛の特徴だけを一般開業医として知識として知っておけばよいことになります。皆さんは興味があれば知っておくに越したことはありませんが、どうでもよいことです。


 これら以外の慢性頭痛の9割は、緊張型頭痛・片頭痛で占められており、二次性頭痛さえ除外しておけば、厳密に「国際頭痛分類 第3版β版」に従って、細かく分類する必要は全くないはずです。一括して、考えれば済むことです。大雑把に言えば、日常生活に支障がない程度の頭痛であれば、緊張型頭痛であり、日常生活に支障があれば、片頭痛と考えればよいことです。少なくとも、「国際頭痛分類 第3版β版」に拘る必要はないはずです。


 「一次性頭痛一元論」に従って、片頭痛も緊張型頭痛も連続した一連の頭痛であり、厳密には区別できないと考えれば、私達、一般の慢性頭痛でお悩みの方々は難しく考えずに気楽に対処できることになります。
 緊張型頭痛にしても片頭痛にしても、これを引き起こす原因は共通しています。
 あとは、このような共通した要因を知っておけばそれで十分ということです。


慢性頭痛(緊張型頭痛、片頭痛)を引き起こす原因としては


1.「ホメオスターシスの乱れ」
2.「体の歪み(ストレートネック)」
3.ミトコンドリアと脳内セロトニン

の3つが考えられます。これらを概説すれば、以下のようになります。


「ホメオスターシスの乱れ」 

 「慢性頭痛」は「健康的な生活」が送れていないことに根本的な原因があり、”慢性頭痛”とは、「不健康な生活を送っている」という生体の警告(危険)の信号”サイン”なのです。
 

 健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。この生活のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、体内時計により刻まれ、ミトコンドリア・セロトニンにより制御されています。
 ホメオスターシスの維持には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。
 この3つは、生活習慣とくに食生活・ストレスによって影響を受けています。
 この「ホメオスターシスの乱れ」が頭痛を起こしやすい状態を作ってきます。
 こうした「ホメオスターシスの三角」を構成する3つが、どのような生活習慣の問題によって乱されてくるのかを知ればよいことになります。


「体の歪み(ストレートネック)」

 私達は、日常生活を送る場面では、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられており、このため、当然のこととして、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。
 この日常的な「前屈みの姿勢」は緊張型頭痛の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって緊張型頭痛が増強してくることになります。
 これが、慢性頭痛の起点となり、片頭痛の基本骨格となっています。


ミトコンドリアと脳内セロトニン


 片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。


 片頭痛の場合、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在することから、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。これに生活習慣および食生活の問題から「脳内セロトニンの低下」がもたらされることになります。
 片頭痛の患者さんでは、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在することから、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、緊張型頭痛の場合以上に、とくに受けやすいことになります。
 こうしたことから、ご家族・親戚に片頭痛の方がいらっしゃれば、「片頭痛予備軍」として考えて対処しなくてはなりません。
 また、ミトコンドリアの働きも、生活習慣および食生活の問題、外部の生活環境によって悪化してきます。
 そして、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」は、「体の歪み(ストレートネック)」の形成に関与してきます。


 そして、片頭痛のように「ミトコンドリアの活性低下」という遺伝素因がなくても、普通の人でも、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」を来す生活習慣が継続してくることによって、片頭痛とまったく同じような頭痛が引き起こされることになるということです。そうなれば最終的には緊張型頭痛であれ片頭痛であれ同じような頭痛になってしまうということを意味しています。


 「国際頭痛分類第3版 β版」でも、このような緊張型頭痛も片頭痛も境界領域が重なりあっているものが記載され、何ら矛盾しないことになります。


 このように、慢性頭痛の基本病態はすべて、生活習慣および食生活の問題によって影響を受けています。


緊張型頭痛、片頭痛は、一連の連続したもの


片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine


     片頭痛
   big(true)migraine
  連続体
緊張型頭痛
          緊張型頭痛
small migraine       (脳内セロトニンの関与)


 片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。
 自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。
 ”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
 「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの問題」、「脳内セロトニンの低下」、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の慢性化の要因が加わることによって、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。

 このように片頭痛は”未病”の段階にあり、緊張型頭痛を起点として、さまざまな生活習慣の問題点が重なることによって、「いろいろな段階の片頭痛」へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになります(このことは、片頭痛の「国際頭痛分類第3版 β版」上の細分類に示されています)ので、常に自らの生活習慣に気を配り、何か問題があれば、その都度改善に努める必要があります。このように進行性疾患です。


 このように片頭痛は生活習慣病、そのものということです。
 このため、片頭痛に至るまでに生活習慣の問題点が、それぞれどのように関与しているかを具体的に知ることが重要になってきます。そして、このような生活習慣の問題点を改善・是正しないことには片頭痛を治すことはできないということです。
 このように、片頭痛・緊張型頭痛ともに同じ病態によって発症してくるということです。


市販の鎮痛薬の弊害


 以上のようにして慢性頭痛は引き起こされてきます。
 私達、慢性頭痛でお悩みの方々は、最初に頭痛が起きた場合、まず市販の鎮痛薬を服用します。しかし、このような市販の鎮痛薬を服用していますと、これらにはカフェインが含まれており、鎮痛薬そのものを頻回に服用することにより、ミトコンドリアの機能を悪くさせ、脳内セロトニンの低下を招くことになります。このため、頭痛に対して安易に服用していますと、片頭痛予備軍の方々は、片頭痛への移行を加速させることにつながります。例えば、このような典型例は睡眠時頭痛で示され、片頭痛を増悪させ、最終的に睡眠時頭痛に移行します。このように、一次性頭痛全般の病態に関連していると言えます。
 そして、市販の鎮痛薬だけでなく、病院で処方される鎮痛薬・エルゴタミン製剤・トリプタン製剤すべて、同様で、「頭痛薬」すべてが”頭痛を増悪させる”原因となっていることを認識しなくてはなりません。そうしませんと、ややこしい・複雑な頭痛となり、専門医によって「国際頭痛分類 第3版β版」に従った診断を求めなくてはならなくなります。

 このような「市販の鎮痛薬」を服用することなく、頭痛を緩和させるスベを会得することが大切になり、先程の慢性頭痛を引き起こす原因が、あなたの生活習慣のなかに存在しないかどうかを点検しなくてはなりません。このように根本的に改善させておくことが重要になってきます。こうした要因はすべて、あなたの生活習慣のなかにあります。


 以上のように、緊張型頭痛にしても片頭痛にしても慢性頭痛には共通した原因があることがご理解して頂けたかと思います。このように単純に考えるべきです。
 何も難しく考える必要は、さらさらないはずです。


 専門家は、日本のエキスパートによる頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると豪語されております。しかし、こうした”真髄”は一切明らかにされることはありません。
 そして、これまで述べてきましたようなことは一切述べることはありません。最も重要なことである「市販の鎮痛薬」の弊害を啓蒙することもありません。
 専門家は、なぜだか片頭痛へと移行させないようには、私達に一切提言されることはありません。あたかも、片頭痛への移行を黙認し、片頭痛を熟成させ、慢性頭痛そのものを複雑怪奇なものとさせ、このような状況を作った結果、「国際頭痛分類第3版 β版」を専門家に使わせて、頭痛診断を行い、この診断に基づいて「慢性頭痛診療のガイドライン」に従って、これに見合う「薬物療法」を行っているにすぎません。そして、このように慢性頭痛そのものを複雑怪奇なものとさせ、「頭痛ダイアリー」を記入させることによって謎解きをされます。そして、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これを3種の”神器”とされ、これによって、より科学的で的確な頭痛診療が可能となったとされます。これでは、私達には何ら意味をなさないことになります。


 こうしたことから、私達、慢性頭痛で悩む方々は、これまで述べてきましたような「慢性頭痛」を一括して、考えるといった「新たな考え方・対処法」を行っていくことが重要です。慢性頭痛そのものは、片頭痛を含めて「生活習慣病」であるといった立場で考えていくことが大切になってきます。
 今回の学会抄録集をみても、例年通り肩すかしを食らったようなものであり、「3桁以上の詳細な頭痛診断を行った」頭痛研究の成果は将来的にも、まだまだ期待できそうもありません。


 こうしたことから、私達は、独自の考え方で対処していくしかないようです。