頭痛と首は関係ないの??・・学会の抄録集から | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 ムチウチの事故に遭遇しますと、その後、ストレートネックが形成・増悪してきて、このために緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛のいずれの形でも頭痛が引き起こされてきます。

 しかし、国際分類では、ムチウチ後7日までに出現しませんとムチウチとの関連性は否定されます。しかし、現実には、ムチウチ後、かなり時間が経過してからムチウチと同じ症状が出現してくることは日常茶飯事ですが、この点は、国際分類では極めて曖昧な形になっています。

 これは、頭痛と頸椎病変に関する取り決めが極めて曖昧なことによります。このような点から、ムチウチからストレートネックが形成されてくるという松井孝嘉先生の主張を頭痛専門医は全く受け入れることなく、片頭痛の”慢性化の治療不可能な要因”として”頭部外傷・頸部外傷”を挙げています。


 ところが、今回の学会で、日本頭痛学会の脳神経外科領域の重鎮とされる先生は以下のように報告されております。何を考えておられるのでしょうか?


片頭痛と頚椎捻挫の合併


 過去5年間の15歳から65歳までの患者を検討し、片頭痛4116例中、頚椎捻挫を合併していた症例は男子6例、女子9例であり、急性期のものは男女3例づつであり、一方頚椎捻挫の患者は124人(男子61人、女子63人)であり、片頭痛も合併していたものは15人(男子6名、女子9名)のみであった。
 急性期の頚椎捻挫は男子3名女子3名であり、男子は3人とも、女子も1人は頚椎捻挫が速やかに治癒していた。但し女子の1例は軽快に約1年を要し、他の1例は数年間愁訴が続き後遺症認定となった。
 急性期以外は、すべて過去において頚椎捻挫が合併したものであったが、いずれの症例も特に頭痛は難治性ではなかった。
 以上のことから、頚椎捻挫を合併している片頭痛患者の頭痛は、合併していない症例より頭痛が特に難治性とは言えなかった。


 このように、従来から言われていたムチウチが「片頭痛の慢性化」の要因にはならないとされます。

 この成績では、急性期の頚椎捻挫に対して、どのような治療がなされたか全く不明であり、さらに頸椎X線検査上、「体の歪み(ストレートネック)」の有無については全く言及されていません。そして、急性期の頚椎捻挫の状態がどのようであったかが明確でありません。とくに触診所見がどのようであったかが明記されていません。このような極めて肝心要の点が検討されることはありません。


 こうした成績は本当なのでしょうか???


 私のように、頭痛診療の最底辺で診療する一般開業医として甚だ疑問に思っております。
 ムチウチを極めて安易に考えすぎておられるのではと疑っております。


現実の診療場面では・


 つい最近の患者さんで、この点を明らかにすることに致します。この症例は「現在の頭痛診療の問題点」をまさに浮き彫りにしています。


 先日、当医院で永年高血圧症で通院中の方が、「平成26年11月27日の交通事故による後遺障害の診断書」を持参されました。それも、事故当日某整形外科を受診され、以後、本年10月中旬までこの整形外科で通院・治療され、ここで出された「交通事故による後遺障害の診断書」のコピイを添えてのことです。この診断書では、頸椎X線検査を受けておられ、この検査では異常なしとの診断を受けられ、診断書にも記載されておりました。
 実は、この方は、血圧計を自分で持っておられ、血圧も安定していることから月に1回しか受診されていませんでした。事故後約1年近く経過した、本年の平成27年10月15日、苦渋に満ちた顔つきで「頭痛」を訴えて受診されました。よくお聞きしますと、平成26年11月27日ムチウチをされた当日、某整形外科を受診され、頸椎X線検査では異常がなく肩・首の筋肉に痛みがあることから「頸椎牽引」をずっと毎日のように繰り返されたにも関わらず、頭痛が次第に増悪しどうにもならなくなったということで、平成27年10月15日に当医院に相談のため、来院されました。
 この際、前医の整形外科では頸椎X線検査では異常なし、と診断されたものの当医院で、改めて撮影させて頂きました。そうしますと「典型的なストレートネック」を呈しており、おまけに正面像では左へ傾斜し、謂わば捻れたような形を示していました。
 このため、本人には、このような状態で頸椎牽引を行えば、益々、「体の歪み(ストレートネック)」を増悪させ、このために頭痛が酷くなってくるため、頸椎牽引はストレートネックを作るようなもので、直ちに中止するように説明致しました。
 以後、当医院で、「体の歪みの矯正法」を指導し、頸部筋肉群にはレーザー照射を繰り返すことによって、短期間で頭痛を軽快させることができました。そして、今回の「平成26年11月27日の交通事故による後遺障害の診断書」を持参することに至った訳です。


 このような「平成26年11月27日の交通事故による後遺障害の診断書」は、果たして私が記載すべきなのか甚だ疑問を持った次第です。

 本来であれば、前医の整形外科医が記載すべきではないかと私は思っておりますが・・
 事故直後から頸椎牽引を繰り返され、挙げ句の果てはストレートネックを作り、おまけに頭痛を増悪させることになってしまったわけで、これがムチウチ事故の後遺症なのか、医療行為によって引き起こされたものなのか異論のあるところです。
 問題は、前医で撮影された頸椎X線検査では異常なし、(診断書のコピイでは記載されている)とされ、私の撮影した頸椎X線検査では典型的なストレートネックを示していることです。これをどのように解釈するかということです。
 この方は、永年”梅の加工作業”に従事され、前屈みの姿勢を強要される作業環境に置かれていたことから、ムチウチ事故とは関係なく「体の歪み(ストレートネック)」を来しても何ら不思議ではありませんが、事故当日に撮影された頸椎X線検査では異常なし、ということです。どう判断すべきなのでしょうか?


 このムチウチは、医学的には、「国際頭痛分類 第3版β版」ではムチウチ後7日以内に見られないと事故との因果関係はないとされています。しかし、事故当日の某整形外科の頸椎X線検査ではでは異常なしとされていることから、医学的には私が診たストレートネックはムチウチとの因果関係は否定されることになります。
 このようなストレートネックの起きる原因は、前屈みの姿勢を長時間持続させるような作業環境に置かれることで発症するという考えが一般的です。
 さらに、「国際頭痛分類 第3版β版」ではムチウチ後7日以内に見られないと事故との因果関係はないとされていますが、しかし、このようなストレートネックは事故から7日以降でも多く出現してくることは一般的に経験されることです。そして、東京脳神経センターの松井孝嘉先生の考え方では、ムチウチ後、長年月経過しても、ストレートネックはいくらでも発症してくるとされ、「国際頭痛分類 第3版β版」での”ムチウチ後7日以内に見られないと事故との因果関係はない”とされる考え方とはまったく異なった見解を示されます。

 さらに、松井孝嘉先生によれば、ムチウチ事故の後、頸椎牽引は絶対にすべきでなく、行うことによってムチウチの症状を増悪させ・長引かせる根源とされ、今回の患者さんは、まさにこの指摘通りの経過を辿ったことになります。
 しかし、日本の医学界、とくに日本頭痛学会では、このような松井孝嘉先生の考え方を完全に否定され、ムチウチ事故とは関係なし、というのが常識となっています。今回の発表者もまったく同様です。

 頭痛専門医は、このようにムチウチ患者さんの実態を直視することなく、「国際頭痛分類 第3版β版」で規定された基準に従うといった、まさに現実にそぐわないことを平然とされています。まさに恐ろしい世界としか言えないようです。この点をきちんと認識しておくことが極めて重要です。

 このように「ストレートネックとムチウチの関係」に関しては、まったく異なった見解が示されています。


 今回の発表の先生もストレートネックの観点からの検討はされていません。
 こうしたことから、保険会社では、ムチウチとは事故後7日以内とするのが一般的と思われます。
 このようなことから、この患者さんの場合のストレートネックはムチウチ事故と因果関係はないとされるのが、現在の医学的な常識とされています。
 ただ、この患者さんの病状はストレートネックが関与しているものと私は考えますが(実際に、体の歪み”ストレートネック”を是正し、レーザー照射により短期間で頭痛は改善されましたから)、ストレートネックが事故と因果関係があるのかに対しては、意見を述べることは甚だ問題があるということです。
 このようなことから、今回の公文書として「後遺症診断書」の記載には甚だ問題があり、某整形外科の診断書との兼ね合いから、書くことが躊躇され、本来ならば前医が記載すべきのように思われますが、皆さんはどのように思われるでしょうか?


 このような患者さんは、氷山の一角に過ぎず、頭痛医療の最底辺で診療する一般開業医にとっては日常茶飯事のことです。
 問題は、「体の歪み(ストレートネック)」の明確な診断基準が存在しないことです。
 日本頭痛学会も然りであり、整形外科学会も同様です。

 今回の前医である某整形外科医が事故当日撮影された頸椎X線検査の写真をお借りしてきて確認するのが一番適切なのでしょうが、仮にこのようなことをして「体の歪み(ストレートネック)」の存在を指摘でもしようものなら、この某整形外科医にまさにケンカを売るようなものであり、同業者として控えるべきと考え、このことは不問にして、泣き寝入りした次第です。
 いずれにしても、医学界全体として「体の歪み(ストレートネック)」の診断基準を明確にすべきであり、さらにムチウチとの因果関係を明確にさせる必要があります。
 このような基本的なことを明確にさせることもなく、今回の日本頭痛学会の脳神経外科領域の重鎮とされる先生の「片頭痛と頚椎捻挫の合併」の発表です。

 結局、この先生は「頭痛と体の歪み(ストレートネック)」は関係なし、とでも言いたかったのでしょうか?
 これが、学会を代表される発表かと思えば、救われないのはムチウチの患者さんのようで、情けなくなってしまいます。
 また、慢性頭痛全般、とくに緊張型頭痛・片頭痛での「体の歪み(ストレートネック)」の出現率がどのようになっており、さらにムチウチではどのようになっているのかといった検討がなされなくてはならないはずです。
 このような基本的な項目を解決した上で、今回のような発表はすべきです。これが学会を主導される方々の考え方のようです。基本のないところには何ら進歩はないはずであり、この点が理解されていないようです。結局、枝葉末節の重箱の隅をつついたような発表しかできないようです。何が基本的なことなのかがまったく理解できていないようで、これが専門医なのかとホトホト呆れかえってしまいます。


 「体の歪み(ストレートネック)」は慢性頭痛の基本骨格ともなるものであり、とくに片頭痛の場合、脳過敏・慢性化の要因ともなり、閃輝暗点の原因ともなっているはずです。こうした考え方そのものを、今回のような発表で否定する目的でされたようです。
 極めて浅はかな考えとしか言えないようです。これが専門医の考えていることのようです。まさに嘆かわしい限りであり、こうしたことが頭痛研究を遅らせている根源と考えるべきです。学会ではこのような発表がなされている事実を私達、一般人は知っておくことも大切です。