その他の一次性頭痛 4 一次性雷鳴頭痛 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 突然の激しい頭痛を訴えて来院される患者がいらっしゃいます。いわゆる雷鳴頭痛です。くも膜下出血や椎骨動脈解離などの二次性頭痛を否定することが重要となります。
 雷鳴頭痛をきたす二次性頭痛の原因となる疾患を列挙してみます。くも膜下出血、椎骨動脈解離、静脈洞血栓症、下垂体卒中、RCVS、低髄液圧症候群・・・などです。
これらの疾患がCTやMRIなどで除外されたら、一次性雷鳴頭痛が考えられます。

               

【一次性雷鳴頭痛】の「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断基準を示します。


1.4 一次性雷鳴頭痛


A.BおよびCを満たす重度の頭痛
B.突然発症で、1分未満で痛みの強さがピークに達する
C.5分以上持続する
D.ほかに最適な「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断がない


 最近、雷鳴頭痛の原因として可逆性脳血管攣縮症候群が報告されています。可逆性脳血管攣縮症候群の脳血管収縮の所見は、当初出現しない場合があるので経時的なMRA検査が必要と考えられています。
 一次性雷鳴頭痛は診断基準も重要ですが、二次性頭痛を否定するということがより重要となります。
 純粋な一次性雷鳴頭痛は果たして実際に存在するのでしょうか?



可逆性脳血管攣縮症候群


 これまで、可逆性脳血管攣縮症候群は、6.7.3 中枢神経系の良性アンギオパチーによる頭痛に含まれていましたが、国際頭痛分類第3版β版の中に、6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群による頭痛として新しく分類され、診断基準も明記されました。
ここではその診断基準を紹介します。


可逆性脳血管攣縮症候群による頭痛


診断基準:

A.新規の頭痛で、Cを満たす
B.可逆性脳血管攣縮症候群と診断されている
C.原因となる証拠として、以下のうち少なくとも1項目が示されている
1.頭痛は局在神経学的欠損または痙攣発作(あるいはその両方)を伴うことも伴わないこともあり、血管造影で「数珠(strings and beads)」状外観を呈し、可逆性脳血管攣縮症候群の診断の契機となった。
2.頭痛は以下の項目のいずれかまたは両方の特徴をもつ
a.雷鳴頭痛として発現し、1ヶ月以内は繰り返し起こる
b.性行為、労作、ヴァルサルバ手技、感情、入浴やシャワーなどが引き金となる
3.発現から1ヶ月を超えると著明な頭痛は起こらない
D.ほかに最適な「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断がなく、動脈瘤性くも膜下出血が適切な検査で除外されている


 可逆性脳血管攣縮症候群は、未だ不明な点が多く今後解明されていくものと考えられます。


可逆性脳血管攣縮症候群について、簡単にまとめてみます。


①突然の激しい頭痛を繰り返す。初回頭痛発作から6.4日の間に平均4回とされています。
②若い女性(妊娠・産褥期)、閉経期前後の女性。片頭痛の既往がある人がほとんどです。
③画像で可逆性脳血管攣縮症候群を確認することで診断します。
 初回のMR検査では描出されず、2回目、3回目で確認されることもあるので注意が必要です。
④初回雷鳴頭痛からの平均日数と頻度。脳出血:2.2日(0-12%)、くも膜下出血:4.6日(0-30%)、脳梗塞:9.5日(6-8%)、PRES:4.0日(8-9%)です。
脳出血は、皮質下で小さいことが多く、くも膜下出血も皮質下という特徴があります。
このようなエピソードはないほうが多いようです。
⑤誘因:誘因がないこともあります。誘因としては薬剤、入浴・シャワー、性交、排便、いきむなど・・・・。薬剤は、血管収縮物質の使用などが報告されています。
⑥治療:Ca拮抗剤。
⑦頭痛外来を受診される患者の予後は良好。(脳卒中を起こすと予後は悪化)
⑧何故?
 何故、この病気が起きる? 何故、頭痛? 何故、血管収縮? ?????


可逆性脳血管攣縮症候群 はじめに


 突然の激しい頭痛。嘔気嘔吐を伴う。第一に考えなければならないのは、くも膜下出血です。このほかに、脳出血、動脈解離(特に椎骨動脈解離)、静脈洞血栓症、下垂体卒中、未破裂脳動脈瘤、低髄液圧症候群などを除外しなければなりません。
これらの二次性頭痛が除外されたら、一次性雷鳴頭痛になります。
 鑑別しなければならない頭痛に、可逆性脳血管攣縮症候群による頭痛が加わりました。
 これまで、可逆性脳血管攣縮症候群は、6.7.3 中枢神経系の良性アンギオパチーによる頭痛に含まれていましたが、2013年6月の国際頭痛分類第3版β版の中に、6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群として新しく分類され、診断基準も明記されました。

                    
 可逆性脳血管攣縮症候群による頭痛の特徴は、一言でいうと繰り返す雷鳴頭痛です。誘因として、性交、運動、バルバサルバ負荷、感情、入浴、シャワーなどがある場合があります。
 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)は、未だ不明な点が多く今後解明されていくものと考えられます。


可逆性脳血管攣縮症候群  入浴関連頭痛


 稀に入浴やシャワーなどで、突然の激しい頭痛を訴えて来院される患者がいらっしゃいます。くも膜下出血などの脳卒中や椎骨動脈解離などの二次性頭痛を否定することが重要です。これらが除外されたら・・・・。
入浴関連頭痛という頭痛があります。入浴やシャワーなどで突然に激しい頭痛をきたすもので、2000年に根来先生が発表されました。その後、いくつかの症例報告が発表され、2008年にWang先生らによって21例が報告されました。
 ここではWang先生らの論文を紹介します。 この論文での入浴関連頭痛の診断基準は、1)国際頭痛分類第2版の一次性雷鳴頭痛の診断基準を満たす、但し、発作の持続時間は除く、2)入浴時に1)で示した頭痛発作が2回以上ある、というものです。
症例数は21例です。Wang先生らの頭痛専門のセンターで同時期の治療した症例数は5338例で、21例という症例数は0.4%に相当します。全て女性で平均年齢は54±8歳です。13例が閉経期で、1例が分娩後3ヵ月です。
 入浴が最初の頭痛発作の引きがねになったのは9例(43%)です。18例(86%)では、体に暖かいお湯をかけて瞬時に頭痛が出現しています。この頭痛が起きる期間は、6-34日間(平均14日)で、その間に平均すると5.1±3.6回の頭痛発作が出現しています。
 尚、15例(71%)では、入浴時以外にも頭痛を経験しています。つまり、入浴関連頭痛は、入浴により惹起される頭痛ですが、入浴以外でも頭痛が惹起されることがあります。


入浴関連頭痛について


入浴の方法 19名がシャワー、2名がシャワーとバスタブ

タイミング シャワー開始直後に18名(86%)、中頃に2名(10%)、終わり頃に1名(5%)

お湯は warm water(11名 52%)、hot water(5名)、cold water(2名)、温度関係なし3名

お湯をかけた場所 胸(11名 52%)、髪(6名 29%)、 顔(2名 10%)

頭痛の性状 爆発するような頭痛18名(86%)、拍動性頭痛14名(67%)

頭痛の部位 両側性13名(62%) 両側後頭部8名(38%)

頭痛の持続時間 平均2時間(30分から30時間)

随伴症状 嘔気6名(29%)、 嘔吐5名(24%)、光過敏3名(14%)、音過敏3名(14%)

入浴以外の誘因 運動(9名 43%)、トイレ(9名 43%)、咳(5名 24%)、怒り(3名 14%)、
性行為(2名、10%)、歌う(1名 5%)

 MRAは全例に施行され(第2病日から第76病日にかけて)、13例(62%)に多発性分節性脳血管収縮(multiple segmental arterial constrictions)を認めています。最近、雷鳴頭痛の原因として注目されている、いわゆる可逆性脳血管攣縮症候群です。中大脳動脈領域12例(57%)、後大脳動脈9例(43%)、前大脳動脈4例(19%)です。頭痛出現後に徐々に改善していきます。血管収縮が出現した群と、出現しなかった群とでは、MRI施行時期に有意な差はなかったそうです。MRIでは2例でreversible posterior encephalopathyを認めています。
治療は、Ca拮抗剤という降圧剤のニモジピン(日本では発売されていません)が19例に使用されています。その内の16例で発作を抑えられています。平均30か月の経過観察で再発は認められていません。
入浴関連頭痛は、閉経期の中年女性に多くみられることから、女性ホルモンの関与が推測されています。


 このように、純粋な一次性雷鳴頭痛は果たして実際に存在するのでしょうか?


まず、二次的頭痛として扱うのが無難のように思っております。


 CTやMRIといった画像診断の無かった時代に生きた人間にとっては、「一次性雷鳴頭痛」という概念はなく、あくまでも「クモ膜下出血」と考え、髄液検査により”血性髄液”を確認した上で、脳血管撮影を4本の脳血管に対して繰り返し、脳動脈瘤の発見に悪戦苦闘し、どうしても動脈瘤を確認できなければ、現在のようにこのような「一次性雷鳴頭痛」とされる症例は”出血源不明のクモ膜下出血”として、厳重な管理下において、ハラハラ・ドキドキしながら2週間入院させた上で、経過観察していた時代が思い出されます。

 ということから、こうした患者さんは一般内科開業医が診るべきものではなく、脳神経外科医に委ねるのが原則と考えております。