片頭痛の”適切な”治療とは? その5 確認すべきこと 4 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 ミトコンドリアは、ほとんどすべての生物(ヒト、動物、植物、菌類など)の細胞に在り、酸素を取り込み、生きる為に必要なエネルギーを作り出していて、車のエンジンや発電所の発電機のような働きをしています。
 まさに、”命の根源”ともいえる働きをしています。
ミトコンドリアの機能が低下すると、生きる為に必要なエネルギーが不足するほか、エネルギーがうまくつくられないことにより活性酸素が増加し、その結果、身体にはさまざまな不調があらわれます。
 身体を元気に健康に保つためには、ミトコンドリアを元気にすることが大切なのです。
 ミトコンドリアの数が少なく弱ってくると、細胞が適正に活動するために必要なエネルギー量が不足し、細胞や組織はその役割を充分に果たせなくなります。私達が元気でいられるのは、ミトコンドリアが充分エネルギーを供給してくれるからです。そのため、ミトコンドリアの数が少なく活力が無ければ、そのヒトの活力もなくなってしまうということです。


 私たちの日常生活を送るためには、「神経系」の働きが正常でなくてはいけません。この神経系には、手足の動きを司る”運動神経系”、手足の感覚を司る”知覚神経系”、さらに内臓諸臓器の機能を調節する”自律神経系”があります。そして、これらの”運動神経系””知覚神経系””自律神経系”を統率しコントロールしている”セロトニン神経系”があります。


  この神経の持つ働きは5 つあります。

  その1:大脳に働きかけて覚醒の状態を調整する。
  その2:意欲、心のバランスに関係する。
  その3:痛みの調節をする。
  その4:自律神経への働きに関係する。
  その5:姿勢筋に緊張を与える。


そして、ミトコンドリアの働きが悪くなれば、当然のこととして、この”セロトニン神経系”に影響が及ぶことになります。その結果、「脳内セロトニンの分泌が悪くなり」、脳内セロトニンの低下が引き起こされます。
 ミトコンドリアが最も多い場所は、私たちの体を支える背中の筋肉に分布しています。このため、ミトコンドリアの働きが悪くなれば、姿勢が正しく保てなくなり、体の歪みを引き起こし、これが首にまで波及してストレートネックを作ってくることになります。
 一方、セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
 セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えています。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。このため、セロトニンが不足してきますと、「体の歪み」を引き起こしてきます。
 このようにして両方から、「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされてきます。


 片頭痛もミトコンドリアが弱ることで起きる病気ですので、ミトコンドリアをいかに元気にすることができるかが片頭痛を改善させる最大の“鍵“となります。

 片頭痛では、「ミトコンドリアの働きが悪い」ため、「セロトニン神経系の働き」も同時に悪くなり、この両者のため「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされてきます。


 これまで述べてきました片頭痛の環境因子とされる「ミトコンドリアの働きの問題」「脳内セロトニンの問題」「体の歪み(ストレートネック)の問題」は、それぞれ別個のものではなく、以上のようにお互い密接な関わり合いをしています。

 しかし、片頭痛の基本的な原点は、”ミトコンドリアの働きの悪さ”にあります。
 この”ミトコンドリアの働きの悪さ”が、現在では”遺伝素因”とされますが、このような”ミトコンドリアの働きの悪さ”は普通の”遺伝素因”がないとされる人でも、極端に「ミトコンドリアの働きを悪くさせる”環境因子”」が積もり重なることによって、片頭痛と同じような状態にならないとも限りませんので注意が必要となってきます。


 こうしたことを踏まえて、それぞれの環境因子に関係するものを把握することが大切になってきます。そして、緊張型頭痛の段階からどのようにして片頭痛へと移行してくるのかという知識を持つことが重要で、これが”適切な治療”につながっていきます。


 こうしたことから、片頭痛発症当初のなるべく早い時期から”適切な治療”を行うために必要となってきます。どういったことかと言えば、片頭痛発症した段階では、発症前と現在での”生活習慣”の変化を見つけやすいということです。
 例えば、中学生になってから片頭痛を発症した場合を例にとりましょう。これまでの小学生の時代と異なって、将来、有名大学に入学することを考えて、その前段階として有名な高校受験を目指して勉学に励むようにしたとします。人によっては、睡眠時間を極端に短縮される人もいます(ミトコンドリアの働きを悪くさせる)。また長時間、息を詰めて机に向かう場合もあることでしょう(体の歪み”ストレートネック”を引き起こす)。
 このようにして、ヒントらしいものに行き着きやすいということです。
 また、場合によっては、このような”きっかけ”らしいものが全く見あたらず、家族全員が片頭痛持ちであるといった場合には、この家系の”食生活に問題がないか”どうかと疑う根拠ともなってきます。
 そして、治療開始が遅れれば遅れる程、生活環境の範囲が次第に拡大してくることになり、どの要因が”本命”なのかという判断が、それだけつきにくくなってきます。こうした方々に対しては、昨日述べたような”環境因子”すべての基礎知識をまず知って頂いて、冷静に、これまでの生活習慣の変化の推移を冷静に振り返って頂き、”内省の時間”を十分にとってもらうことが重要と思っています。こうしたことは、診察時間内では到底不可能なことです。次回の診察までの間に「問題点」を見つけ出してもらうしかありません。
 こういった煩雑な手順を踏まないようにするためにも、発症当初の受診が極めて重要となってくるということです。
 女性の場合、月経時に片頭痛が酷くてお困りの方も多いようです。こうした場合は、短絡的に「マグネシウム不足」「油の取り方、脂肪摂取の多い」「小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事」といった食生活に問題がないかどうかを疑う根拠にもなるかも知れません。


 このように環境因子の把握に努める必要があります。こうしたことは、患者さんにとっては、従来の「薬剤」による治療でないため、違和感・抵抗を覚えるのが現実です。
 しかし、こうした”環境因子”は生活習慣そのものにあります。こうした生活習慣そのものは、くすりでは改善されることはないはずです。生活習慣をどのように”すべきか”という考え方を提示しなくてはならないはずです。このための方法論として「運動療法」「食事療法」があるはずです。先日も私が行っている方法を提示しました。


   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11964126037.html
   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11964415761.html


 こうしたことを患者さんに説明する際に、口頭だけでお話するだけでは、すべてを述べることは不可能ですし、一度に説明したからといって覚えきれるものではありません。


 こういったことから、同じ”多因子遺伝”とされる生活習慣病の糖尿病治療を行う際に必ず、日本糖尿病学会が作成される「糖尿病治療のてびき」と「食品交換表」が利用されます。これは、今後の「糖尿病人生」における治療指針であるはずです。
 片頭痛の治療を行っていく場面でも、当然のこととして、このような治療指針が必要であるはずです。片頭痛がどのような病気であり、どのようにして起きてくるのか、その発症に関わる”環境因子”にはどのようなものがあるのか、そしてこれに対する対策として「運動療法」「食事療法」はどうあるべきかということを説明する「糖尿病治療のてびき」と「食品交換表」に匹敵するものが必要のはずです。
 昨日も記載した内容および「運動療法」「食事療法」を盛り込んだものを作成しようとすれば、一冊の書籍になります。これは、今後の「片頭痛人生」の治療指針となるはずです。片頭痛の慢性化を防ぐためにも必要とされるものであるはずです。


 現在、頭痛診療の場面では、トリプタン製剤の作用機序と服用のタイミングを説明し、予防薬の使用目的と服用上の注意点を説明されるだけで、このような肝心要の「生活習慣の改善」について説明されることはほとんどありません。せいぜい、一部の先生方は「生活習慣を見直しましょう」とか「自分で工夫して治しましょう」といって「セルフケア」を口頭で説明されるだけのことです。


 これが、果たして”適切な治療”といえるのでしょうか???


 しかし、「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断基準に従って診断し、「慢性頭痛診療ガイドライン」の通りに、トリプタン製剤および予防薬の処方だけでは、このような”適切な治療”とは到底思われず、従来からなされている「セルフケア」の内容を理論的に、過去の論文に基づいて、再構築し、「糖尿病治療のてびき」と「食品交換表」のような治療指針を作成すべきです。過去の業績・論文を総括すれば簡単に作成できるはずです。

 どうして、このような作業を怠るのでしょうか? もしかして、片頭痛は治ってもらってはお困りなのでしょうか?