現在、開発中の新薬・・・CGRP 2013/03/02 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 現在、片頭痛研究は片頭痛の新しい治療に向けられています。片頭痛は、人を消耗させることもあるありふれた頭痛ですが、数十年にわたって頭痛研究者を悩ませてきました。
 研究者の最大の焦点の一つに CGRP と呼ばれる脳内化学物質があります。これは痛みの伝達に関与していると考えられていますが、認知や気分など他の脳機能には関与しません。


 このCGRPは、さきほどの「片頭痛の発生機序」で出てきました物質です。
「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を基盤として、ちょっとしたことで(ストレスなど何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって血小板から血管外へセロトニンが放出され、血管を収縮させます。その後、役割を果たしたセロトニンは減少しやがては枯渇し、今度は逆に血管は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きます。さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が放出され、血管を刺激して痛みが出てきます。この二つによって、片頭痛が起きてきます。


 脳内でその受容体を阻害することによって CGRP の作用を阻止するようなさまざまな実験的薬剤が研究者によって試みられています。片頭痛を引き起こす前に血中や脳内でこの化学物質を不活化する人工抗体の研究に取り組んでいる人たちもいます。
 片頭痛が始まった場合、新しい薬で痛みに対処する必要性は高いと研究者は言います。といいますのは、現在の薬剤(トリプタン製剤)は患者のわずかに50~60%だけしか効果が見られず、心疾患のある患者や脳梗塞の既往のある患者では使うことができないからです。しかも、それらは根本的な治療薬ではない(片頭痛を根治させる薬剤ではない)ため多くの場合頭痛は24時間以内に再発する傾向があります。
 予防的薬剤という別の手段があります。これらは、頻度がより高いか、もしくは消耗性となるような片頭痛に苦しんでいる少数の人たちに用いられる傾向にあります。
 「痛みを取り除き、痛みを遠のかせるだけでなく”即効性のある”片頭痛薬を患者は求めています」とニューヨークにある Montefiore Headache Center の Richard Lipton 所長は言います。

痛みの回路:片頭痛進展のより明確な全体像が分かってきました


1. 三叉神経尾側核システム(trigeminal nucleus caudalis [TNC] system)と呼ばれる脳の深部にある神経集団が過活動になると片頭痛が始まるようです。これが、顔面の知覚情報を伝達する三叉神経を活性化します。
2. 三叉神経の活性化によって血管の拡張が起こります。これによって刺激物の放出が促進され、血管近傍の神経を刺激し痛みを生じます。

 頭痛疾患は世界中で最も多い症状

の一つです。世界保健機関(WHO)によると、世界的に成人の10人に1人以上に片頭痛がみられ、それによって活動能力が奪われることもあります。国際的な研究では、昨年一年間に成人の50~75%が頭痛を訴え、世界人口の4%で毎月半分以上の日数に頭痛があると、WHOは言います。
 いわゆる“普通の”頭痛といったものは存在せず、正しくは300タイプ以上のものがあると Phoenix にある Mayo Clinic 分院の神経学教授で American Migraine Foundation の会長である David Dodick 氏は言います。片頭痛の患者は通常、激しい痛み、光に対する過敏、ふらつき、さらに時には嘔気や、前兆と呼ばれる視覚や知覚の症候が見られます。片頭痛以外の主要なタイプの頭痛には2つあって、筋緊張あるいは薬剤誘発が原因となって生ずる頭痛です。
 イブプロフェンなどの非ステロイド系鎮痛薬は片頭痛患者の一部には有効です。しかし1990年代に市場に出たトリプタンと呼ばれる種類の片頭痛薬は、現在まで多くの患者にとって最良の、もしくは唯一の治療選択となっています。それでもなお患者の約半数はそれらに反応が得られず、また他の健康上の理由から内服できない状況にあります。
 カルシトニン遺伝子関連ペプチド神経伝達物質(calcitonin gene-related peptide neurotransmitter)の略号である CGRP はかなり以前より片頭痛に関与していると考えられてきましたが、そのほとんどの期間、その理由が誤って捉えられていました。その混乱の一部は片頭痛そのものの間違った理解によるものでした。
 なぜ片頭痛が起こるのかは依然明らかではありませんが、専門家によると、最近は片頭痛を血管の異常ではなく、脳の異常として理解するようになっていると言います。約12年前までは、片頭痛が脳の血管の収縮によって発症すると信じられていました。続いて代償するための血管の拡張がズキズキする痛みをもたらす、との考えが展開されていました。
 現在、片頭痛では脳の正常な痛覚回路が“ハイジャック”されているようだと Dodick 医師は言います。片頭痛においては、有害となるものに関連するメッセージを神経終末から脳に送る脳の正常な痛みの感覚系がうまく作動していないということです。
 どのようにして片頭痛が引き起こされるのかについては専門家間で意見は一致していませんが、その痛みの伝達には、顔面の知覚情報を伝達する重要な経路である三叉神経と、この神経と多数の他の神経との連絡、および脳が関与しているようです。
 片頭痛の素因と関連している可能性のある特定の遺伝子も研究者らによって分離されていると Dodick は言います。
 血管収縮を促進し炎症を抑制するトリプタンは三叉神経において CGRP の放出を阻害します。CGRP は血管の拡張過程を促進する一方、片頭痛が起こっているとき脳内で神経を活性化するその役割が鍵となっているようです。
 1980年代半ば、University of California San Francisco の神経内科医で頭痛専門医だった Peter Goadsby らは CGRP が片頭痛で放出され、トリプタンが CGRP の活性を抑制することを発見しました。
 様々な研究者や製薬会社が、この化学物質 CGRP が痛覚ネットワークを活性化するのを防ぐために CGRP 受容体に結合する薬品を開発しようとしてきました。体内で作用を開始するためにこの分子が結合する場所となる CGRP 受容体が複雑であることから、科学者らが CGRP の影響をどのように遮断すべきかを見つけだすのに15年を要し、さらに経口で投与できる化合物を開発するのにさらに時間を要したと Goadsby は言います。
 片頭痛に対して開発中の新薬のうち最先端のものとなっている CGRP 遮断薬、あるいは拮抗薬を市場にもたらすのは厳しい状況にあります。いくつかの試験研究中の化合物は肝臓に対して毒性があることが明らかとなっており、そのような課題があることで、脳に影響を及ぼす疾病に対して薬剤を開発することの困難さが浮き彫りになりました。
 CGRP 拮抗薬はトリプタンと同じように作用するわけではないようですが、こういった拮抗薬が心血管合併症を引き起こさないとみられる点で有利であると、Philadelphia にある Thomas Jefferson University’s Headache Center のセンター長で神経内科教授である Stephen Silberstein 氏は言います。
 「ある種のリスクを別の種類のリスクと交換する感じです」数社の臨床試験で治験責任医師を務めた Silberstein は言います。
 メルク・アンド・カンパニー社は有望な CGRP 受容体拮抗薬を開発中ですが、後期臨床試験で一部の患者に肝酵素異常がみられることがわかりました。昨年7月、同社は、すべての試験データを検討したあと、telcagepant という化合物の開発を中断していることを発表しました。ドイツの Boehringer Ingelheim GmbH 社も CGRP 拮抗薬に取り組んでいましたが開発を中止しました。これについてスポークスマンはコメントを拒否しています。
 Bristol-Myers Squibb 社はCGRP 拮抗薬の早期段階の治験をおこなっており、他の数社も試験中であるか、あるいは類似の化合物の開発を始めている可能性があります。
 研究者や製薬会社はさらに、注射によって、CGRP が脳内の受容体に到達する前に血中や脳内で CGRP を捕捉し、あるいは受容体を遮断することによって効果を発揮する人工抗体の開発を手掛けているところです。
 これらの抗体を基礎とする生物学的アプローチの研究は、拮抗薬の治験に比べてまだ早期の段階にありますが、抗体は最終的には定期的に CGRP の作用を阻害できることからこれによって片頭痛が全く起こらなくなる可能性があります。
 「CGRP のストーリーは、片頭痛の急性期治療の開発の話です」と Goadsbyは言います。「しかし、抗体のストーリーは、もし連続的に CGRP を遮断できるとしたら予防的治療手段を得ることにつながるという一歩進んだ考えを試すことなのです」

 CGRP はカルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで中枢神経、心臓、血管など末梢の一次知覚神経終末に存在するアミノ酸37個からなるペプチドです。
文中にあるように、片頭痛では三叉神経末端が刺激され、そこからCGRP が分泌され片頭痛が起こるとされています。
CGRP 受容体拮抗薬はトリプタンに続く次世代の片頭痛急性期治療薬として期待が大きいのですが、実用化にはもう少し時間がかかりそうです。

         以上、「MrKのぼやき」から・・


 以上のように、全世界では、1990年代に市場に出たトリプタンと呼ばれる種類の片頭痛薬の有効性・禁忌疾患の問題で限界があることから、さらなる新薬の開発が試みられているにも関わらず、日本では、「片頭痛治療上トリプタン製剤が全て」のような考えが支配的で、これらの方々は「トリプタン製剤」の限界を感じておられないのでしょうか?

 この点、まさに奇異としか言いようがないように思われてなりません。