LOVE SICK (小説22章) | You Tube Walker ゲイ三昧

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ゲイです。最近YouTubeにはまっています。それらを見た感想や日々の中での独り言を書こうと思います。

二十二章 俺たちにできること


また朝が来た。そしてまた競技会が近づいた。俺は生徒会室の前で自分の靴を見つめながら行ったり来たりしている。ドアを開けて入ってしまおうか。。。それって変かな?同じ場所をグルグル回りながら考え事してるから、気分が悪くなる。こんな建物の床に*置き土産をしたくないなら、こんなの続けてちゃいけないな。でも。。。なんで俺はこんなふうに行ったり来たりしてるんだ?

俺は自分に叱咤して携帯を取り出し画面を見つめる。うーん、Phunに例の予算のこと話さなきゃいけないな。じゃないと困ったことになる。どうしよう?電話しようか?でも。。。

本当は二人っきりで会いたいんだけどな。。。

ちょっと待った!俺は何を考えてるんだ?! それはダメだ!
人のボーイフレンドなんだからと思い直し、俺は自分の頭をげんこで叩き、Phunの電話番号をタッチする。

♪友達でいるだけでこんなに幸せだ
私たちが同じ場所にいるというだけなのに
あの人は多分気にもしていない
あの人に最初に恋したことはどうしようもないこと
全てを胸の内に隠して
私からは見えないように♪


なんだ。。。あいつのこの呼び出し曲って?
その歌詞を聞いて俺はすぐに耳から電話を離す。(誰の歌だ?聞いたことないや。) そんなことを考えていると、Phunが静かな声で電話に出る。

「もしもし、Noh?」

おい、そんなよそよそしくするな!嫌な気持ちになるじゃないか!

「おい。。。今どこだ?」

「生徒会室。お前は?そっちに行こうか?」こいつこんな腰の軽いやつか。俺はちょっと笑って、生徒会室の表札を見上げる。「0.5秒でそっち行くから。」

電話を切り、
本当に0.5秒で俺はドアを押し部屋に入る。Phunが俺を見て突っ立っている。(あいつはまだ電話を耳に当てている。へへ。) でも部屋にはあいつだけじゃなかった。すっかり忘れてた。ここはあいつの個室じゃないんだ。Fi (生徒会長) がいるし、Bank (こいつの肩書き知らない)がいるし、二人の10年生と。。。Earn、応援団長。皆が俺を見てる。

「えっ?Noh!ここで何してるんだ?」Earnは誰より一番に俺に声をかける。Phunは電話を下ろしながら、ちょっと笑う。「なんで?すぐに入ってくればよかったのに。」へ、へ、へ。多分EarnはPhunの質問を聞いて、どうして俺がここに来たのか分かってる。

俺はPhunにちょっと肩をすくめて見せ、振り向いてEarnに笑顔をする。Earnはなんか山積みになってるものを数えているようだ。ふむ、俺の出しゃばり遺伝子が活動を始めたと思う。「Earn、それなに?! その袋、でかいな!」

「観客席の奴らへの土産だよ。」あいつは俺にそれを一つ見せながらにっこり笑う。今年の記念品は、俺らの校名の入った銀色のdog tagだ。裏側には、「一致団結」って彫ってある。すげーかっこいい!

「それ、すげーいいじゃん!欲しい!もし余ったらひとつくれよ?」俺はそのdog tagを見た途端、すごく欲しくて飛びついた。(ものすごーく)。Earnは大笑いして、多分俺が子猫みたいにあいつの腕にすがりついたから。

Phunが咳払いをしてる。なんでだ?あいつまた病気か? 

「余ったらなんて言わなくていいさ、Noh。」Earnはふとそんなことを言う。いつもだが、俺はどういう意味なのか分からない。あいつが袋の中に手を突っ込むのに気がついて、俺は腕を離す。

「今やるよ。」そう言うだけじゃなくて、俺にdog tagを渡してくれる。俺の目は、あいつが金を貸してくれた時と負けないくらい大きく開く。俺は大興奮したけど、それでも俺にはまだいくらか良心が残ってる。

「なんだって?でももらえないよ!」俺は、その応援団長がdog tagをつけようと俺の首に回した手を避ける。俺は受け取れないと大声を出す。

「おい!これって観客席で働く下級生にやるんだろ!今はいいから、もし余ったらひとつもらう。じゃないと俺、卑怯だろ。」言ったとおりだ。サッカー競技会では応援団参加者に配られる土産を俺もいつももらってる。でもそれは毎回参加者全員がもらった後の余ったやつだ。記念品は、自分の時間を犠牲にして上級生と一緒に働く下級生へのプレゼントだ。(言うまでもなく、その時間のほとんどは叱られてる時間だけど) 上級生がお互いに配り合うものじゃない。

でもEarnは俺の言うことなんか無視してる。「どっちでもいいさ。どうせ余るんだから。だから誰かに取られる前に今やるよ。」あいつはまだ俺の首にdog tagをつけようとしてる。おい!どうせじゃない。俺はあいつを避けようとする。でも、Earnは牛みたいにでかいから、逃げられない。

「今はいいって!!!」

「いいや、これはもうお前にやった。引き取らないからな。」 あいつは無理やり俺の首にdog tagをつけ、満面の笑顔だ。俺はぼんやりとそのdog tagを手に取ってみる。なんかまたおかしな状況になりそうだ。

「すぐ戻るから、Fi。。。」あっ!Phunの声だ!なんでここに来たのか忘れるところだった!すぐにPhunの方を向いたが、あいつは俺から目をそらす。あの野郎。あいつはあっという間に部屋から出て行く。ううう、クソ!

「今度返すからな、Earn!じゃあな!」

***

「Phun!
Phun!Phun!くそっ!Phun!」あー、疲れるな!あいつ俺から逃げてる。あいつの長い脚が悪いんだ。そのせいで歩くの速すぎ。逃げたバッファローを追いかけてるみたいだ。お前の後を追いかけてる奴を可哀想に思わないのか?! 俺、いつも運動してるわけじゃないんだぞ!これがどんだけ疲れるのわかってるのか?

「おい、俺のクラブ予算の話で来たんだ!」俺は追いつけないから叫ぼうと思った。いつも人がいない建物の近くの廊下で叫ぶと、効果があった。Phunは足を止め、俺は追いつくことができた。あいつはまだ俺に顔を向けない。

「どうしたんだ?変じゃないか。具合でも悪いのか?」俺は熱を見ようと、手の甲をあいつの首に伸ばす。(でも実際、どれくらいで熱があるとかないとか分からないんだ。ただこんな時に人がやることをやってるだけだ。) でもPhunはさっと避けて、やっと俺の方を向く。

「予算がどうしたって?俺はまだなんとかやってるところだ。」Phunは申し訳なさそうな顔をするから、慰めるために肩を叩く。どっちにしろ、そう言ってくれて俺は安心する。こいつはなんであれ俺を助けてくれるやつだ。こいつを信じてよかった。ただ確認したかっただけだ。

「急いでいるのか?」Phunはまた質問する。俺はどうしようかと気まずくなる。なんか口が動きたくないみたいだ。えーっとなんて答えようか?

「うーん。。。最初から言えば、Puiさんが昨日ドラムを配達してくれたんだ。だから俺は今週までにお金が欲しかったんだけど。。。でも。。。えーと。。。だからもうあんまり急ぐことなくなって。」これって意味通じてないよな?どうしよう。

「どういう意味だ?今週までに金が必要なのか?もしそうなら、俺のを使え。」おいおい、俺たちの学校は金持ちだらけか?!

「大丈夫、大丈夫。昨日Earnに会って、そしたらあいつが金を振り込んでくれたんだ。だからあいつに返す。。。だけだから。あんまり長い間借金したくないし。」俺の声は、Phunにそう説明しながらだんだんと小さくなる。だってPhunの顔色が変わっていくから。

「お前。。。このことEarnに行ったのか。。。?」

「うん。。。昨日の放課後、ばったり会ったんだ。」

「で、予算のことあいつに話したのか?」

「うん。。。どうしたらいいかと思って。」

「どうしたらって?」この時点で、この質問全部が心配になり始める。

「どういうことだ?なんで俺のところに来て相談しない?!」いつもなら、俺はあいつに怒鳴り返してる。でも今回はあいつは俺の顔をじっと見てる。俺はテニスボールくらいに身体が縮んだみたい。

なんでこいつそんな怖い顔するんだ?(T_T)

Phunが険しい顔するから、俺は縮み上がる。ゆっくり後ずさる。だって目の前の奴が、俺の近くに寄ってくるから。でも俺のすぐ後ろは壁だった。

ああ。。。もう後がない。こいつ俺を殺して、全ての証拠を隠すために埋めるんだろうか?(T_T)

Phunの口からかすれた声が出る。まるで、できるだけ声を上げないようにしてるみたいに。

「お前。。。」俺?俺がなんだ?

あいつを見ると、俺をじっと見てる。すぐにあいつは顔を背ける。俺は思わずほっとして溜息をつく。今までPhunのこんな険しい顔を見たことがない。どうにか落ち着いてくれたと思うけど、でもその時。。。

ドン!

おお、クソッタレ!なんで建物を叩くんだ?もしヒビでも入ったら、校長が金払わせるぞ!俺は頭の中でそんな冗談を言おうとしたが、そんな冗談は言ってられない。俺はPhunの顔を見られないけど、あいつは湯気立てて怒ってる。息を大きく吸い込んで、あいつは話し始める。

「なんでお前は。。。必要ならなんで俺に言わなかったんだ。。。?」俺の顔を見ないで聞く。いつもながら、俺はあいつの言おうとしてることが分からない。

「なんだってんだ、Phun?」

「ということは。。。お前はもう俺を信用してないってことか?」あいつは拳を壁から下ろしながら言う。あいつの顔が見られないから、どんな表情してるのか分からない。そしてあいつは歩いて行ってしまう。

俺がお前を信用してない?

***

今日はすごく疲れた。マーチングバンドの練習をやったわけじゃないけど、それでもバンドのセッティングには責任がある。それに、部員が使う楽器のほとんど半分くらいを修理しなくちゃいけなかったんだ。修理にすごく時間がかかったから、卒業したら修理屋を開いた方がいいかな。

俺の時計がちょうど午後10時を回った時に、やっと家に帰った。学校カバンをベッドに放り投げ、横になって長い溜息をつく。

今日の午後のPhunとのことが頭から離れない。俺がもうあいつを信用してないと言われた。。。。あいつの言いたいことはよく分かってる。

最初にあいつに電話しなかったから、こんなことになったんだ。誰が俺のことを一番に助けてくれるのかなんて、俺は本当はよく分かってた。俺が悪かったんだ。あいつに相談すればよかったのに、他の奴に相談したから、Phunは傷ついたんだ。

でも実際、俺はただPhunに負担をかけたくなかっただけだ。だって、あいつは何をおいても俺を一番に助けてくれるってよく分かってるから。金が入ればすぐにでも嬉しそうに俺のところに走ってきてくれるのは、Phunだってよく分かってるから。俺はあいつを100%信用してる。俺はあいつのことをすごく信用してるからこそ、慌ててあいつのところに行って、金のことであいつを困らせたくなかったんだ。あいつは俺が困ってるのを無視なんて絶対しないって知ってたからだ。

俺はEarnに助けて欲しいと思ってたわけじゃない。そんなことはこれっぽっちも思ってなかった。あいつに話したのは、助言を求めたってことじゃない。あいつがあんな大金を助けてくれるなんて思ってなかった。(だってあいつはあいつで応援団でも予算の問題を抱えてるんだ。)

Phunと俺との間に、他の誰かを入れるつもりなんてなかったんだ。。。

「クソッ、クソッ、クソッ。」ここで寝ていくら考えたってダメだ。あいつは今、俺のことすごく怒っててるはずだ。(俺があいつならそうだ。) 俺はそう考え、すぐに靴下を放り投げ、バイクの鍵を取る。

「かあさん、ちょっと出かけてくる。」俺は階段を踏み外しそうになりながら下に降りると、両親は一緒に映画を見てた。分かったと手を振ってくれる。俺の頼もしいバイクを押して、一緒にもう一度世界に出る。

エンジンをかけようとしたら、あいつの白い顔が見えた。あいつは門の近くに置いてある植木の傍に腰掛けて、驚いて俺を見てる。「おい!なんだ!こんなところにじっと座って何してる?!」

「どこ行くんだ?」Phunは、俺がバイクで出かけようとしてるのに気が付く。俺の方にさっと近づいてそう聞く。で、俺はなんて言おうか?

「お前は?なんで家に帰ってないんだ?」頭からつま先まで見て俺の観察によれば、こいつは制服一式着てる。白い靴下、革靴に学校カバン、全部だ。明らかに家にはまだ帰ってない。

「俺は。。。」あいつは口を開けて何か言おうとしたが、黙ってしまう。あいつの鋭い目を見るが、目を逸らされる。Phunはあいつは自分のカバンを俺のバイクの上に置く。俺がこのまま行ってしまわないように。「お前は?お前はどこ行くんだ。。。?」

質問だけがあっちこっち往復して、そしてどちらも答えてない(-_-;)

あいつの顔をちらっと見ると、まだ不機嫌そうな顔をしてる。(まだ俺に怒ってるなら、なんでここに来たんだ?) 俺はあいつの学校カバンを掴んであいつに渡し、バイクに乗れと言う。「腹減ってるか?」あいつは頭を横に振る。「俺は減ってるんだ。」どっちでもいいから、俺はあいつを後ろに乗せて、バイクを吹かし音を立てて通りを走り出す。

***

がらがらのEkamai道路(俺の住んでる所)からThong Lo道路へと俺たちは走る。俺たちかっこよくない?ヘルメットもかぶってないし、二人ともまだ制服だし(ということは、俺たちが運転免許証を持ってないことが丸分かり)、でも俺の父さんはコネあるから大丈夫。(本当かな?) はは、冗談。俺は交通警察官とピンポン玉みたいな(^_^;)白いヘルメットを見るたびに止まる。

刑務所タイムをようやくくぐり抜け、Thong Lo道路とSukhumvit道路の交差点まで来る。お粥屋の前で停める。もう午後10時だから、大飯食らうと俺のハンサムが台無しになると思う。

「ここで食べるくらいなら、Oishiバフェに行ったら?」あいつは「Thong Lor粥店」という看板を見て、笑いながら文句を言う。あいつが何か言っても気にしない。ここを選んだのには理由があるんだ、ははは。ここの主人の娘が可愛いんだ。だから彼女を見るためによくここに来る。へへ。

注文を受け取り、俺たちは黙ったままでそれぞれ食べる。腹減ってないって言ってたあの野郎を見ると、二杯目も注文してやがる。この野郎は値段のことまで文句を言いやがったくせに、二杯目かよ。俺はあいつが食べるのを見ながら一人笑う。あいつは俺を見てテーブルの下で俺の脚を蹴る。「何がおかしいんだ?」

「俺、また耳を調べないとな。誰かさんはさっき腹が減ってないとか言ってたように聞こえた気がする。」ペプシを飲みながらからかってやる。俺は自分の粥はもう食べ終わったが、Phunはまだ二杯目を食べてる。「そうだよな。耳が悪くて、よく音楽クラブの部長なんてやってるよな。」おお、ちょっとからかってやったら、そう来るか?

「ぬかせ!」俺はテーブルの下でお返しに蹴ってやる。あいつはビクッとして熱い粥をこぼしそうになる。それを見てつい笑ってしまう。

「お前なあ、ちったあきれいに食べろよ。まるで幼稚園児みたいな食べ方だぞ。これ使え、ほら。」俺はティッシュを抜いて、Phunに渡す。あいつが手の甲を使ってきれいにしようとしてるのを見て、俺は笑いをこらえることすらしない。あいつはテッシュを受け取って、ちょっと睨みながら「それで、誰のせいだ、これは?」へへへ。

俺たちは粥を食べている。(えと、あいつはあいつの粥を食べていて、俺は俺のペプシをストローで飲んでいる) お互いにからかい合う。Phunはやっと最後のひとさじの粥を口に入れる。「ここ美味しいな。一度も来たことなかった。いつも前を通るのに。」あいつは俺にそう言う。

「確かこの通りはお前のところと同じ通りだろうが。」俺はイヤミっぽく返事して、速攻で足を隠す。だって俺はあいつが蹴ってきそうな気配を感じたから。「おお、そんなに素早いとは思わなかった。」あは、俺はこの野郎をもう一度からかってやった。

Phunは最後の粥を食べ、飲み物を飲んでいるのを俺は見てる。あいつの笑顔が透明なグラスの底からでも見える。「お前、俺に会いに来るつもりだったんだろ?」うぐっ、この野郎、なんで突然そんな話題を出すかな?

俺は眉を上げ、そんな質問には答えずに口笛を吹く。俺のイライラに燃料を与える小さな笑い声が聞こえる。あいつのすねをもう一度蹴ってやろうか。

俺たちは黙ったまま座ってる。もうずっとPhunの方を向いていない。

「ごめんな。」でも、沈黙を破ったのは俺じゃない。俺はぱっとあいつを見る。なんでPhuntが俺に謝る?!

「どうしてお前が俺に謝るんだ?」その言葉が頭に浮かんだ瞬間、俺の口から出て行く。Phunは口を固く閉ざしている。まるでこれから長いスピーチが始まるかのように。

「うん、俺。。。今日の午後はついカッとなって。ごめんな。驚かせただろ。」

「で、なんであんなに怒ったんだ?」

そしてあいつは大きな溜息を付く。「だってお前が。。。なんで困ってるなら俺に言わなかったんだ?それなのになんでEarnのところに行ったんだ?俺はお前にとって何なんだ?お前のクラブの誰かがお前を助けたっていうんなら俺は別に構わないさ。でもなんでEarnなんだ?あいつはいったいなんだ?なんであいつに助けてもらうんだ?俺はどうなんだ?お前の目には俺は役立たずか?俺はお前にとって何の意味もないのか?」ぐはっ。。。!こいつ。まるで胸に溜め込んでたものを一気に吐き出したみたいだ。あいつが止まらないから、もう喉が乾いてるだろうと、俺は水の入ったグラスを渡すフリをした。「ふざけてないで、俺の聞いたことにちゃんと答えろ。」うう、俺が親切にしてやってんのに、こいつは、俺がふざけてるって言うのか?なんなんだ?

「あの日、Earnには別に話すつもりはなかったんだ。ただあいつがバンドの様子を聞いてきて、だから別に何にも考えずに愚痴を言ったんだ。そしたら急にあいつが俺をATMまで引っ張っていって振り込んでくれたんだ。夜の8時にそんなことになるなんて誰が思う?俺だってびっくりしたんだ。」

「それでなんで、Puiさんがドラムを配達した時、すぐに俺に言わなかったんだ?」クソッ、こいつの声、どんどん喧嘩腰になってきやがる。

「だって、お前がもうめいっぱい努力してくれてるのは知ってたからだよ。俺に金を渡すって言ったなんだから、俺は信じてるんだよ。だからもう困らせたくなかったんだ。金が入ったら速攻で渡してくれるだろ。」俺はあいつにそう答えた。あいつに笑顔が戻り、俺の答えに満足したようだ。でもあいつの顔がまだ少し怖い顔になって「それでもお前はEarnに物乞いみたいなことをするんだな?」

「なんだとー!そんなことはしてない。」もう一度あいつのすねをけってやらなきゃ。そして一発やってやった。

あいつは避けようと(失敗した)しながら、笑う。そして立ち上がり財布を取り出す。「俺のおごりだ。おばさん、勘定お願い。」最初の言葉は俺に優しく言い、そして店の主人に指を上げて言う。俺も立ち上がり、あいつの後を追って外に出る。

俺の前にいる広い背中を見てると、俺もあいつに謝らなくちゃと思った。

「俺も。。。ごめんな。お前を傷つけるつもりはなかったんだ。」

Phunの大きな笑顔は俺が一番欲しかったものだ。俺も笑顔を返すと、あいつは腕を伸ばして俺の肩を引き寄せ、肩を組んで一緒に歩く。

***

暗い夜道を俺たち二人はバイクに乗り、多分夜の街を楽しんでる人をいっぱい乗せた何台もの車の間を通り抜けていく。そして大きな屋敷の門の前に着く。(時々、警察を避けていかなくちゃいけなかったけど。) もう夜中近かったがいくつかの部屋にはまだ明かりが見える。

「お前、ちゃんと遅くなるって家の人に言ったのか?」バイクを停めながらあいつに聞く。

「ああ、Pangにお前と出かけるからと言っておいた。へへ。」

「お前いつも俺を困らせるな!」この野郎!俺は足を振り回し、あいつがバイクから降りてる時に、ケツを蹴っ飛ばしてやろうと思ったが、さっと避けて俺を笑ってる。

「そんじゃあな。」まあいいや。あいつに手を振り、帰ろうとする。あいつが俺の名前を呼ばなかったら、俺は今頃もう表通りまで出てただろう。

「Noh。。。」

「なに?」俺は立ち止まり振り返る。あいつからの返事はない。Phunは俺に近づいてくる。あいつの手をみる。それが何かをしようと俺の首のところまで来る。「何してるんだ?」

「いいから、じっとしてろ。」あいつの手がしばらく俺の首の周りで動いている。そしてあのdog tagが外されてやっと俺は何があったのか分かる。「お前は、こんな応援団のものを付けてて恥ずかしくないのか?」あいつはそう言い、俺もその通りだと思う。「ああ、そうだな。外すの忘れてた。バタバタしてて。思い出させてくれてありがとよ。」そう言いながら、手を伸ばし、Earnが今日の午後、俺につけてくれたdog tagを受け取ろうとする。でもPhunは渡してくれるどころか、それを自分のシャツのポケットに入れる。何しやがる、この野郎。

「俺がEarnに返す。」おい、それって変だろ!俺は意味が分からずぽかんと口を開けている。

「俺が返すよ。」そして、Dog Tag戦争がこうして勃発した。ネックレスを取り返そうとあいつに飛びかかるが、あいつはひらりと避けて俺の頭を叩く。こいつ、俺より背が高いからって、なんでも自分の思い通りになると思ってるやがるのか?!

「お前、人に嫌だと言えないだろ。どうせEarnに言われたら、また着けるんだろ?だから俺から返す。」あいつは、お前には返さないぞと自分のポケットをパンパンと叩きながら、そう言う。考えてみると、あいつの言ってる通りだ。俺は言い争うのが嫌いなんだ。だから誰かが無理に俺になんかさせようとしたら、たいてい言う通りにしちゃうんだ。ほら、Phunがいい例だ。だからPhunと俺はこんな感じになったんだけどな。

「分かったよ。それならお前に任せるから。」

「それに、誰や彼や区別なく人からものをもらうなよ。特にEarnからはな。」Phunにそう言われて、俺ははっとした。それってまるで。。。あいつが怒ったのは、応援団がもらうはずのdog tagを俺がもらったからじゃなくて、Earnからもらったからか。

「Phun。。。」俺は静かにあいつの名前を呼ぶ。あいつは俺を見る。

「どうした?」あいつの返事はとても優しくて、俺は言うのが難しくなった。

「俺たち、もう付き合ってないんだよな。。。」

そう言ったのは俺だが、それでも俺の胸が苦しくて仕方ない。それならPhunはどうなんだ?俺よりももっと辛いんじゃないのか。

それでもなお俺はそう言い続けなくちゃいけない。俺たち二人とも何回でもこのことを思い出さなきゃいけない。本当は。。。俺が俺に言わないといけない。「俺たち」はどこにもないっていう事実を認めないといけない。

Phunの口元の笑顔にはちょっと寂しそうな影が差す。そしてあいつは俺の方に近づいてくる。俺を見て手を伸ばし、俺の頬を優しく撫でる。

「俺たちが前にそのこと話したからって。。。俺がお前のこと、すぐその場で忘れられるわけじゃない。」あいつは俺の目を見ながら微笑む。こんなふうに友達のままでいるっていうのは、贅沢過ぎるのかと思わずにはいられない。

俺が何か口にする前に、Phunの見慣れた顔が近づいてくる。あいつの息を感じる。俺は緊張して、目を固く閉じる。俺は、柔くてふくよかなもの、それでも温かみに溢れたものを俺の額に感じる。それはほんの少しの時間で、あいつは離れていく。

俺は恥ずかしさを隠すため、片眉を上げる。「これが俺らの精一杯だな。へへ。」

「それでも、何もないよりましさ。。。」Phunはそう言い、手を振って家に入っていく。「運転、気をつけろよ。いいな?」

「わかった。じゃあな。」

俺の中に湧き出るこの鋭い痛みはなんなのか分からない。

本当に分からない。


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*置き土産
英訳では「small present」となっています。
多分、前文で気分が悪くなるとか書いてますから、嘔吐物のことだと思います(笑) 苦しい和訳ですが、僕は「置き土産」としました。

NohはEarnにDog Tagを無理やり付けられます。それを見ていたPhunは腹を立ててます。その後廊下でEarnがお金を振り込んだことを知って、Phunはさらに激怒してしまいます。Nohはこの時点ではまだPhunがどうしてそんなに怒っているのかよく分かっていません。Nohは見た目とは違い、とても神経が細やかで気を遣う人物ですが、こと恋愛に関しては、本当に鈍感です(笑) ウブなのでしょうね。PhunはEarnのNohに対する気持ちに気がついているようですが、Nohはさっぱり分かっていません。(そういう意味ではEarnはとても可哀想です。でも気づいたら気づいたら、またNohに頭の痛い問題が増えるのですが…) だいたい、前日にあれだけの大金をEarnが貸してくれたことをもう少し考えれば、それなりに気が付くこともあるのだと思うのですが、Nohは今はPhunのことで頭がいっぱいなんでしょうかね。このお金のことは、NohとPhunとの関係ができる最初の原因となったものです。Nohは一刻も早く解決したいことでしょうが、Phunにとってはもう少し意味があるものと考えている気がします。そのお金のことを自分以外の誰かに関わって欲しくないという思いがあるのでしょうね。Earnへの嫉妬以外にも、そんな感じを受けます。

こうしてNohとPhunは初めての喧嘩をします。でもお互い思いがあるのですから、顔を合わせて話をすればすぐに仲直りできます。そしてPhunの家の前での別れ際、PhunはNohの額にキスをします。今できる精一杯の愛情表現でしょう。Phunは自分の彼女Aimの中にさえ、内心ではNohを求めているのですから、いくらNohに終わりにしようと言われても、その思いは消えるはずはありません。ましてや、以前のように言わば片思いではなく、Nohにも自分への思いがあるとすでに分かっているですから、自分を抑えることは本当に容易なことではないでしょう。おそらくいつもギリギリ踏ん張っているような状態ではないでしょうか。そういうところに、dog tagのこと、Earnのこと、お金のことが絡んでくると、この章のようにギリギリのバランスがあっという間に崩れてしまうのかもしれません。この二人の愛情で僕が受ける印象は、Nohの愛情はうぶで純粋な愛情で、Phunの愛情はとても執着的という印象を受けます。(決して悪い意味ではありません。) 

さて、この小説22章で、ドラマのSeason 1のストーリー分が終わってしまいました。小説としてはSeason 1終了後に、この後の小説も英訳が追加されています。僕がこのまま和訳を続ければ、それこそまだ放映すらされていないSeason 2の大ネタバレになってしまうんです。どうしましょうか。ちょっと悩むところです。