アリのまんま♪ -748ページ目

β③【死にたくない。】

永い眠りから目覚めたというか


深い眠りから無理やり起こされたようだった。


なぜだか分からないが目がほとんど見えない。


目をあけているバスなのに


見えるのはわずか…。


鍵穴を覗き込んでいるかのように…

ホルガのカメラの効果にある


トンネル効果のように…


周囲は真っ暗で


見えるのはボヤけた風景。


当時視力は2.0.


見えないはずが無かった。


でも見えない。


周囲の音も…


ほとんど何も聞こえなかった。


「なんなんだろう。」


「何がおきているんだろう。」


そう言えば感覚もない。


手を動かしてみる。


…。


ごくわずかだが指が動く。


土なのか…。


いや、枝か?


徐々に感覚を取り戻しつつある体に鞭を打つ。


その瞬間、激痛が走る。


体中が火が点いたように痛む…。


落ち着くんだ。


落ち着くんだ。


息をしろ!


…、痛!


息が出来ない。


息が出来ない。


いや、わずかだが息は出来ている。


わずかな視界のまま周囲を見渡す。


斜面…なのか?


枯れ葉が積もっている。


何年間も人が足を踏み入れたことのない場所。


その枯れ葉に自分が埋もれている。


いったい何なんだ?!


俺は…


俺は…


俺は…、誰なんだ?


…?


何も思い出せない。


目が見えない。


息も出来ない。


自分が誰だかも分からない。


突然、脳裏に言葉が過る。


『死ぬ。』


『俺、死ぬかも知れない。』


その瞬間、視界がウネった。


上も下も…、


右も左も…、


何もかもが分からなくなる。


パニック。。。


次に脳裏に浮かんだ言葉。


『死にたくない。』


心の叫び。


その答えに驚いたのは


まぎれもなく自分だった。