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言葉についてとうとうと書かれていたので・・・・


それを読みながら、ある小説を思い出してしまいました。


こちら。

告白/町田 康
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告白 (中公文庫 ま 35-2)/町田 康
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あら、文庫でもそんなに値段変わらないのね・・・。



これは、3年くらい前、谷崎潤一郎賞を受賞した作品です。



これ、前にも一度紹介したような気がするけれど、

ちょうどね、

”言葉はままならない”というようなテーマのことが厚さ3センチの辞書並のぶあつい

単行本の中に書かれています。


町田康といえば、独特のテンポというか文体で、とっつきにくいという印象があるかもしれないけど、

でもこれ、思いのほか読みやすいです。

関西の話で、関西弁(河内弁)なので、もしかしたら関西弁が難しい、って人はいるのかも。



自分の思いをうまく言葉に乗せて表現できない男が主人公。

話が愚鈍で、行動が突拍子もなくて、みんなからバカって思われてる。

でも頭の中では、言葉がついていけないくらいの猛スピードで、思考を回転させ、

ものすごく深くて難しいことをぐるぐると考えてる。



でもそれを表現できる言葉をしらない。

しらないから、時に体で表現してそれが滑稽なものになってしまう。

口に出る言葉はごく単純で、平凡なものになってしまう。

そして考え抜いて口にする言葉は、

どれも自分のほんとうの気持とはかけ離れて行ってしまう。


そんなもどかしさが、人生が進んでいくうちにずんずんと行き詰っていって、

最後に主人公はすごい事件を引き起こしてしまいます。


河内音頭の定番、『河内十人斬り』をモチーフに、言葉をあやつる人間について、

作者が思いをめぐらせて作られた作品。



私はとても共感しながら読みました。

この主人公の不器用さと、自分がすごく重なった。


私も、言葉の使い方がとってもへたくそで、

集団で話していると、その空気になじもうと無理をして、思ってもないことを言って

ウケを狙ってしまったり、

けっこう敏感にいろんなこと気づいてしまうタイプなのに、なんにも気付かないフリをして

深い話になって自分のほんとうの気持を告げるのを防ごうとしたり

逆に、誰かを傷つける言葉を無意識に発してしまって、

あとから気づいて、うじうじと反省したりということがよくあります。



だったら、こうやって文章に乗せたらいいか、というとそうでもなくて、

話すよりは平常心で考える時間が長いはずなのに、

こうして書かれた言葉は、私の気持ちのほんの一部しか伝えない。

その、気持のほんの一部だったはずの言葉が、こうして記録に残る形になってしまうと

まるでそれが私の、そのことに対する気持ちのすべてだったような気がして


自分で自分のことばに縛り付けられてしまう。



まあ、私が重点的にこの作品にのめりこんだのは、

人間は、自分の気持ちを言葉でうまく表現できない

というある種、普遍的な悩みについてであって、

私はもっともっとテキトーに生きてるので、その問題の延長として、彼が引き起こしてしまう

事件については、同情はするけど共感はできなかったけど。






将義さんも、まるで口癖のように歌詞によく入ってるこの言葉


”言葉はままならない”



新曲でも言ってたね。

自分のほんとうの気持ちを、人に分かってもらおうとするのは、本当に難しいんだな・・・・



そんなことを考えてしまう本です。



こないだミーシャさんだったかな、インタビューで


「言葉だけで愛してる、とかそういう気持ちを伝えようと思っても伝えきれないけど

音楽が、ことばでは伝えきれないメッセージを伝えてくれる」


というようなことをおっしゃってました。


俳句とか詩だったら、行間にそれらをにじませるのかな。


絵や映画だったら、映像や、セリフの『間』で”言葉にならない思い”を伝えられるよね。


普段の生活でも、もうちょっと、『間』を読み取るヤサシサを持たなきゃダメなんだろうなあ、自分。




なんか話の軸が限りなく、ずれていってますが。(いつものこと?)


ま、とにかくこの本、オススメです。好き嫌いあるだろうけど、私は好き。