前回の続きです。

以前の回は再編集して加筆しました。


まず最初にブラック・ジャックの封印作品についての話をします。

そもそもブラック・ジャックって封印作品は多いんです。

むしろ手塚先生の作品って未だに単行本に収録されていない話は結構あるんですよ。

手塚プロは亡き手塚先生の意志を引き継いでいて、生前先生が出したくないと言った作品は今でも収録されていません。

ブラック・ジャックは例外と思っている人も割といると思いますが、近年になって単行本未収録の分が封印を解かれて文庫に載せられるようになってきただけで昔は結構多かったんですよ。

以前ブラックジャックの単行本未収録作品を集めて、ネットオークションで出品され、なんと10万円の値がついたみたいです。

もちろん出品者は逮捕され、30万の罰金が下りましたけど。

そして前述の通り、未収録作品でも単行本に収録されるようになった話をある訳ですが、封印が解かれていない作品もあるわけでして

第41話「植物人間」

ブラックジャックが乗り合わせていた船が海難事故に会い、けが人が続出する自体に陥ってしまう。

彼が治療できなかった女性が植物人間となってしまった。

その女性の息子はブラックジャックが母親を助けなかったとして怨むのだか、ブラックジャックは、少年と母親の脳をつなぐ手術をし、母親の声を少年に聞かせる。

母親が生きていることを知った少年は、自分が医師となって母親を治そうと決意する所で話は終わり。

「植物人間」が差別用語であって、『植物状態患者』としないといけないみたいですよ。

これは一時期単行本には収録されていたんですが、苦情などで削除された作品です。

苦情とは禁じられた手術『ロボトミー手術』と言う言葉に誤りがあったからだと言われています。

ちょうどその時期は『ロボトミー手術』ついても反対する風潮が強かった時期みたいなので、当然と言えば当然かもしれませんが、収録されないのは残念な話ですね。

初期の単行本4巻では収録されれていたんですが、苦情などによって第3版から削除され、「『からだが石に・・・』を収録したそうです。

ちなみに『植物人間』が収録されている4巻は『幻の4巻』としてオークションなどで高値で取引されているみたいですよ。


第58話「快楽の座」

精神病を脳に取り付ける装置で治そうとする医師が登場(ブラックジャックはこの治療法に反対)します。

医師はブラックジャックの忠告を聞かず、数年間の間一切笑わず、トカゲが唯一の友達である三郎の治療のために彼の脳に心をコントロールする装置をつける(装置の名称は『スチモシーバー』でこれは確か実在していた装置だったと思います)

$疾風の如く

手術は無事に成功し、三郎は笑うようになりました。

教育ママである母親に術後すぐに勉強をするように強要されても、三郎は笑ったまま。

そして、医師が病室を訪れ自らの手術の成功に酔いしれていた時、悲劇は起きた。

なんと三郎は医師の背中をナイフで刺し、病院を脱走してしまう。

病院を脱走した三郎は自宅の母にも危害を加えようとするが、間一髪でブラックジャックに救われる。

$疾風の如く

装置を摘出した三郎は元の笑わない少年に戻ってしまう。

ブラックジャックは母親に処方箋を3000万と引き換えに渡される。

処方箋にはこう記されてあった。

1.三郎くんにこんごぜったい勉強をおしつけない

2.三郎くんを1日中子供部屋の中へとじこめない

3.三郎くんにすきなしゅみをさせる

4.三郎くんの将来についてむりじいさせない

$疾風の如く

何とも後味の悪い終わり方です。

これはおそらく『ロボトミー手術』を美化した描写が原因だったと思います。

『ロボトミー手術』は非人道的な手術として今現在の医療では行われていないと思います。

しかし60年代などは極当たり前のように行われていた術式だそうです。

しかし『ロボトミー手術』には副作用がありました。

それは患者が人格の変化や無気力などと言ったその後の生活に異常をきたすものでした。

本題の話からズレは生じますが、以前日本でもこの手術が原因で殺人事件がありました。

患者の同意のないまま、手術した主治医に対しての復讐目的で行われた犯行だと言われています。

話は本題に戻ります。

皮肉な事に少年のとって本当に必要だったものは危険を伴う脳手術などで無く、普通の家庭環境だったって事ですよ。

人は苦しみがあるからこそ、幸福がある訳です。

幸福しか無かったら、それは本当の幸せではないんだと僕は思います。

この作品は単行本はおろか文庫にも収録されていないまさしく本当の封印作品です。

様々な団体から抗議を受けたし、一時期は「漫画を描くのを辞めろ!」とまで言われた原因となった作品でもあるし、内容が内容なので今後も収録は無いと考えた方が良いと思います。

闇に葬るのは惜しいとの声もありますが、こればっかりはどうしようもないです。

ちなみに2作とも国立図書館にはあるみたいなので、もしみたい方がいればそちらの方に問い合わせてみればどうでしょう?

ブラックジャックも連載当初は天才的な腕を持つ外科医として描かれていましたが、連載の長期化に当たって、架空の病気を作らざるを得なくなったし、様々な団体から「この病気は描いちゃ駄目」「その病気は描かれたら困る」抗議を受けたのも原因でブラックジャックも本来の外科医から徐々にただ単純に怪我の治療を行う救急医療の医師のような立場になってしまい、病気を扱えなくなってしまったんです。

そうなってしまってはブラックジャックの本来のテーマである「命の尊厳」などと言ったものが描けなくなってしまいますね。

この事件での被害者は抗議を行った団体でも有り、もしかしたらブラックジャックと言う架空の医者でもあったのかもしれませんね。

KOKI

ペタしてね