その構成を選択する根拠 | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

ペーペー弁理士さん、
 こんにちは。コメントをありがとうございました。


>進歩性と非自明性との差が米国では特許になるのに日本では特許にならない、という現象を多々生じさせているのだと思います。

 日本で特許になるのに米国ではならない現象も多々生じさせていますね。


>差があることは分かっても一番わからないのは、構成を限定する場合に「なぜその構成を選択するのか?」という根拠なんですよね。

 「根拠」を「特有の効果」に求めてしまうのが日本人。その結果、米国人から来る補正案を「無用の限定になっている」「発明の本質がわかっていない」などと評価しがちです。

 本発明が従来技術に対して異なる点が自明か自明でないかは、効果とは関係なく発明の構成を基準に判断する。これが米国。
 たとえば、引例を組み合わせてもまだ到達できない発明は、その引例からは自明ではないと考える。これが米国。ここでは、特有の効果の有無は関係ありません。

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<オフィスアクション仮想ストーリー>

First Office Action
本発明:ブルドーザー
    構成要件A,B,C,D

引例:
(引例1)ブルドーザー
    開示内容A,B,C
(引例2)乗用車
    開示内容A,B,D


米国側推奨補正案
    構成要件A,B,C,D,e
    ここで、eは、Dをブルドーザーに組み込むために必要なちょっとしたものだが、そこから特有の効果は発生せず。


日本側希望補正案
    構成要件A,B,C,D(補正せず)
    組み合わせは容易でない。ブルドーザーの引例でも、乗用車の引例でも奏することのできない特有の効果を本発明は奏するから。
    eを追加してはダメ。特有の効果を生じないからeを根拠に議論しても無駄。無用の限定になるだけ。アホちゃうか?


米国側の感想
    そんな「特有の効果」は、組み合わせが自明でない理由にはならない。アホちゃうか?
    eは、Dをブルドーザーに組み込むのに必須だから、入れても実害はない。eを入れたらスッと許可されるのに。アホちゃうか?
クライアントには勝てないから、日本側の希望通りでResponnseする。


結局、審査で許可されず>>>

Final OAを受けた日本側の感想
    代理人だけでなく審査官もレベルが低い。技術を理解していない。アホ!



米国で特許をとろうとしているのですから、どちら側のアホ呼ばわりが正しいかは、言うまでもないでしょう。



(弁理士以外には、何の面白みもない記事ですがご容赦ください。私は本来このようなことを仕事にしているのです)