前回に引き続き、建設業の働き方改革に伴う労働時間削減について取り上げます。
 

前回の記事では業務改善を取り上げましたが、意識改革も必要不可欠です。

 

 

これまでみてきた生産性向上や業務改善も、もちろん実践は難しいですが^^:実は意識改革が一番難しいと言っても過言ではないかもしれません・・・

 

 

意識改革を実現するには、これまでのやり方や常識に囚われず、新たな視点で取り組むことが求められます。この意識改革には、特に3つの重要なポイントがあります。

 


まず1つ目は、過去の思い込みや常識からの脱却です。例えば、研修や会議を平日に実施するのが難しいという理由で、土曜日に開催していたケースがよくあります。しかし、実際に研修や会議を平日開催を試してみると、特に問題なく実施でき、土曜日を休みにすることができたという事例もあります。

 

 

単に、これまで当たり前にやってきたため、変えられないと思い込んでいたことを変えようと挑戦することで、新たな可能性が見えてきます!

 

 

柔軟な思考で、今までの常識を見直すことが、労働時間削減の第一歩となります。


2つ目に、働き方改革を自社の課題として捉えるということがあげられます。

 

 

建設業の働き方改革の実践のハードルとして、よく聞くのが「元請企業の意向に従わなければならない」「工期が厳しいため、発注者の理解がないと難しい」といった意見です。

 

 

これらの意見には一理ありますが、これを理由に取り組みを先延ばしにしてしまうのは問題です。むしろ、同じような立場にある中小建設企業でも、積極的にできることから始めているケースもあり、その結果、人手の確保や労働時間の削減に成功している例も出てきています。

 

 

建設業界においても、働き方改革を主体的に自社の課題として捉え、前向きに取り組む姿勢が求められます。



最後に上げられるのは、働き方改革の方針を社内外においてしっかりと説明し、理解を求めることです。

 

社内であっても、働き方改革に対して、大きな変化に抵抗を感じる人は少なくありません。特に、働き方改革における経営者のトップのメッセージは極めて重要です。

 

 

やはり経営者が積極的に改革に取り組む姿勢を示すことで、トップダウンで変革が進むことが多いものです。一方、経営者が働き方改革に消極的であったり、改革に対して受け身の姿勢を取っている場合は、現場の努力が報われず、改革が進まないこともよくあります^^:

 

 

従業員の意識改革を成功させるためにも、経営者が明確なコミットメントを持って進める必要があります。



これまで説明してきたように、移動時間の削減生産性の向上業務改善を実現するためには、まず意識改革を行うことが不可欠です。意識が変わらなければ、具体的な行動に移すことができません!!特に、無自覚にこれまでの常識に囚われていないか?を常に自問自答していく姿勢が求められます。

 

 

もし、改革がなかなか進まないと感じる場合は、まず自分たちの意識改革が十分に行われているかを振り返ってみることをお勧めします。意識が変わることで、実践が進み、結果的に建設業の働き方改革へつながっていく・・・この流れを継続して行っていきましょう^^

 

 

前回前々回の記事に引き続き、建設業の働き方改革に伴う労働時間削減について取り上げます。

 

 

前回の記事では生産性の向上を取り上げましたが、同時に業務改善も必要不可欠です。

 


例えば、業務のマニュアル化についてですが、業務手順を標準化し、誰でも同じクオリティで作業を行えるようにすることを目的に行います。これにより、作業のばらつきを減らし、効率化を図ることができます。

 

 

ただし、現実は目先の仕事に追われてマニュアル化まで手が届かないケースも多いかもしれません^^;マニュアル化の必要性は多くの企業で課題に上げていますが、どうしても後回しになりがちです。

 

 

ですが、時間外労働の上限規制適用という大きな法改正をきっかけとして、できるところからマニュアル化を進めてください。

 

 

あわせて、従業員ごとの残業時間を定期的にチェックし、残業が多い従業員をピックアップして、毎月定期的にアナウンスやメールを送り、従業員1人1人に残業削減に対する自覚を持たせましょう。例えば、残業時間が多い人はたいていいつも決まった人である…というお話もよく聞きます。従業員1人1人の現状把握を行い、残業が発生する原因を分析する必要があります。

 

 

また、最近よくお話を伺うのが、いわゆる現場事務や建設ディレクターといった事務担当者を採用し、業務を分担する取組みによる残業削減方法です。

 

 

これにより、現場の負担を軽減し、現場作業に集中できる環境を整えることができます。

 

 

ただし、こちらも実際に現場事務や建設ディレクターの事務担当者を採用はしたものの、まだまだ活用ができていない・・・今後どのように教育して活用をしていけばよいのかわからない・・・という実務的な課題も出てきているようです^^;

 

 

マネジメントの問題もありますが、新しい取り組みですので、まずは業務の切り分けを行い、業務フローを考えてできるところから進めていきましょう。

 


実際にある企業の事例ですが、上司が毎週、部下の残業時間を集計し、そのデータを基に仕事の配分や調整を行うことで、業務量の平準化を図っています。残業が一定の時間を超える場合には、上司が助言を行ったり、追加の人員を投入したりすることを判断しているケースがあります。

 

 

多くの企業では、残業を行う場合に事前申請制を取り入れていらっしゃいますが、事前申請の際の残業の許可基準を、例えば全役員の決済を経なければならないという、厳しい基準を設定している企業もあります。

 

 

労働時間削減のためには、やはり経営者や管理職の強い意志とマネジメント力が必須だと感じます。

 

 

業務改善や生産性向上など、新しいことを取り入れてもすぐに効果を実感できることばかりではない、ということは、もどかしいことではありますが^^;やはり今までのやり方から何かしら脱却していくことが必須となります。

 

やってみる→修正する→またやってみる→修正する・・・

 

 

この繰り返しを愚直に継続していくことが必要です。

 

 

まずは1つずつ実践できるところからスタートしてみてください。

 

前回に引き続き、建設業の働き方改革について、具体的にどのように労働時間を削減するのか?について取り上げたいと思います。

 

 

建設業界に限らずですが、労働時間を削減するためには生産性の向上が必要です。

 

 

具体的な方法として、例えばICT(情報通信技術)の活用が上げられます。ICTを導入することで、コミュニケーションの効率化が図られ、移動時間の短縮や業務の迅速化につながります。



たとえば、データをクラウドサーバーに保存し、現場でタブレット端末を利用して図面データを閲覧することで、現場で協力会社からの問い合わせがあった際にも、その場で迅速に対応することが可能になり、業務全体の効率が向上した、という事例があります。

 

 

従来であれば、事務所に戻ってから確認しなければならなかった情報も、即座にアクセスできるため、移動時間や待ち時間が大幅に削減されます。


また、zoomなどのWEB会議システムの導入も効果的です。WEB会議システムの導入により、打ち合わせや会議に出席するための移動時間が減り、効率化し時間短縮につながります。

 

 

また、従業員全員にパソコンを支給し、現場でも情報共有がスムーズになることで、指示のタイムラグが減るという効果があります。

 


実際の成功事例として、従来は2~3日かかっていた現場の巡回が、オンラインでの対応に切り替えることで、半日から1日程度に短縮されたケースがあります。また、LINEのグループチャットを活用することで、情報共有や承認のプロセスが迅速になり、意思決定が速くなったという例もあります。



一方で、ICTを導入したからといって、すぐに効率化に結び付くわけではない・・・という現実的な課題もあります^^;例えば、全員にiPadを配布したものの、まだ使いこなせない従業員がいる・・・というお話を伺うこともよくあります。

 

 

新しいツールを取り入れたら終わり、というわけではなく、教育や慣れるまで時間がかかることを念頭においておく必要があります。



このようなことを言うと、「すぐに効果がでないのなら、やる必要はないのでは?」「教育に時間がかかるのであれば、変える必要はないのでは?」という意見も出てくるかもしてません・・・!

 

 

それでも、確実に時代は変化しており、労働時間の削減が求められていますので、何かを変えなければ実現できません。

 

 

最初は不慣れであっても、できるところから少しずつ進めて実践し、労働時間を削減することが必須となっていますので、これまで通りのやり方から、新しいやり方へ少しずつシフトしていくことが必要です。

 

 

何かを変えるときは、どうしても最初から成果も100点を目指したくなりがちです。ですが、いきなり100点を目指すことは現実的にはハードルが高いものです。

 

 

実際の講演会でも、よくお伝えしていることですが、ますは100点を目指すのではなく、1点ずつの点数の積み上げが大事です!

 

 

まずはできるところから実践してみてください。

 

 

 

建設業における働き方改革を進めるためには、労働時間の削減が必須ですが、その前にぜひ行っていただきたいのが「移動時間」の見直しです。

 

 

建設業では工事現場への移動が不可欠であるため、労働時間の定義とその取扱い方法が意外と不明確なケースが多く、まずはここを明確にする必要があります。



例えば、自宅から現場までの移動時間について。

 

一般的には、自宅から現場までの移動時間は「通勤時間」となるため、労働時間には含みません。また、自宅から会社事務所への移動も同様に「通勤時間」に該当し、労働時間には含まれません。

 

 

それでは、会社事務所から現場までの移動時間はどのような取扱いになるのでしょうか。

 

 

これについては、原則は「労働時間」として扱いますが、一定の要件を満たした場合は「通勤時間」として取り扱うことが可能です。

 

 

具体的には、従業員が会社事務所に集合することが義務付けられている場合、この場合は「労働時間」に該当します。また、あわせて移動中に業務に関するミーティングや指示が行われる場合も、「労働時間」と判断されます。

 

 

したがって、移動時間を労働時間に含めないためには、事務所への集合はあくまで任意であり、移動中は従業員が個人の自由な時間として利用できるような配慮が必要です。

 

 

また、集合場所と現場への移動時間は、原則として「通勤時間」と判断されます。例えば自宅から集合場所に自家用車等で向かい、そこから社有車で乗り合いにより従業員が運転し現場へ移動車中で業務は行っていない場合は「通勤時間」に該当し、労働時間には含まれません。

 

※移動時間についての詳細は下記パンフレットで確認が可能です!

厚生労働省資料「事務所と現場の移動時間を見直してみませんか」



このような取り扱いを明確にするためには、就業規則において移動時間の扱いを具体的に規定しておくことをお勧めします^^

 

 

弊社でも、建設業の会社様からの就業規則のご相談に対しては、移動時間の取扱い規定をご提案させていただいています!規定化することで、従業員の方と認識のギャップを防ぎ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。



実際に、例えばある建設業の会社様にて、従業員様の就業規則の説明会を行った際には、

 

 

「遠方の現場に行くために早朝から家を出るのに、それが労働時間に含まれないのは不公平ではないか?」

 

という質問をいただく機会がありました。

 

 

確かに、早朝からの移動が必要な場合、その時間が労働時間に含まれないのは不公平に感じるかもしれません。ですが、上記で説明しているように、法律上、通勤時間として取り扱うことが可能ですので、労働時間に含めなければならないわけではありません…

 

 

このようなケースでは、実務的な解決方法として、出張手当や日当を支給するということがあげられます。出張手当や日当を支払うことで、従業員が感じる負担を軽減し、働き方改革を進める中での不満を解消することが可能です。

 


建設業における労働時間削減のためには、まずは法的な要件をクリアにした上で、どこまでを労働時間として取り扱うかを今一度見直すことが大事です。

 

 

まずは現状の把握を行い、その上で具体的な取り組みを進めることから、ぜひ始めて見てください!

 

 

 

 

7月にWEBセミナーにて「建設業の働き方改革2024年問題」のテーマで講師を務めさせていただきました!建設業の働き方改革の講習会は、これまですでに50回以上講演させていただいております^^

 

 

2024年4月1日から、建設業においても時間外労働の上限規制の適用が開始されていますが、引き続きまだまだこのテーマでの講演会のご依頼もいただいております…それだけ関心が高いテーマなのだと感じます。

 

 

実際に、建設業の会社様からは、週休2日制への移行についての相談も増えています。

 

 

実は、制度自体の週休2日制の導入は、手続きとしては比較的簡単に行えます。就業規則で土曜・日曜日等休日を規定し直して、従業員代表の方から意見書をもらい、就業規則の変更届を管轄の労働基準監督署へ提出することで対応可能です。

 

 

ただし、実際の運用にはいくつかの課題があります。まず、就業規則に土曜日も休日とする規定を設けて制度自体は週休2日制にした場合であっても、現場ではまだまだ土曜日も稼働している場合がありますので、この対応をどのように行うか、という問題があります。公共工事などであは週休2日制工事も進めてきていますが、民間工事はまだまだという現状もありますし…。

 

 

実務的な対応方法としては、主に2つの方法があります。

 

 

まず1つ目は、土曜日に出勤を命じ割増賃金を支払う方法です。週休2日制であっても、就業規則で残業や休日労働を行うことがある旨規定されており、かつ、36協定を締結していて管轄の労働基準監督署へ提出をしている場合、合法的に残業や休日労働を行わせることが可能なため、土曜日に出勤を命じることが可能となります。

 

 

ただし、この場合、36協定で規定された時間内(最大でも時間外労働の上限規制内の時間)で対応する必要があるため注意が必要です。特に日曜日を法定休日と定めている場合は、土曜日出勤は法定外休日労働となり時間外労働の労働時間数にカウントされます…

 

 

また、最近では入社時に土曜日出勤があることを伝えていても、「週休2日制だから入社したのにだまされた。話が違う!」と感じる従業員が早期退職するケースが増えています。ただでさえ人手の確保が難しい時代に、早期離職されると従業員側も会社側もお互い不幸ですので、入社時にはきちんと明確に実態を伝えておく必要があります。

 

 

さらに、固定残業代制度を導入している企業では、土曜日出勤が固定残業代の範囲内とされると、従業員から「損をする」との不満が出て困っている…というご相談もよくあります。したがって、土曜日出勤の場合は固定残業代とは別に残業手当を支払うことを規定する等の対応も検討する必要があります^^;

 

 

また、2つ目の方法は、振替休日制度を徹底して活用することがあげられます。

 

 

現在では、こちらの方法をできるだけ実施し、できない場合は1つ目の方法(残業代を払う)でカバーするというケースが増えてきています。

 

 

ご相談をいただく中では、これまでは代休制度だったために休みの確保ができなかったケースや、振替休日を定めても実際に取得できずに再振替を繰り返すケースが多々見受けられます。ですがこの場合、未払賃金の問題も出てくるため、早急に運用を変えなければなりません…

 

 

そこで、振替休日を徹底するようルールを変更し、時間外労働を減らし、休日の確保を優先することが可能となります。

 

 

働き方改革を実践するためには、この振替休日をしっかりと確保する運用を行うことがこれまで以上に重要になってくると感じます。

 


建設業に限らずですが、週休2日制の労務管理は制度を導入するだけでは不十分であり、実際の運用をしっかりと行う環境を整備することが必要です。

 

 

特に人手不足の時代には職場環境の整備や改善がますます求められていて、従業員側も休日の確保を優先順位高くする人が増えていますので、休みを確保しつつ従業員が安全に働ける環境を提供することで、企業の生産性向上や人材の定着に繋がっていくと感じます。

 

 

建設業で週休2日制の導入を検討している会社さまは、まずはここから実践してみてください^^