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もっとも美しい数学ゲーム理論/トム・ジーグフリード
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 文春のNさま(『もっとも美しい数学・ゲーム理論』担当さん)とお話。(これはエイプリルフールじゃないです)
 
 実は向こうがすでに私を知っていたことにさらに吃驚。文藝春秋は7年前に名刺を渡したっきり交流ないのに。
 でも、質問の内容は向こうも携わりながら感じていたらしく、結局エージェント経由での翻訳だったと伺ったけど、それでもフィードバックすることは可能だと仰っていた。
 確かに、万物理論の夢は人類の夢だし、その夢の向こうに時空の完全保護によるタイムマシンの可能な世界があるというのが私のアメノミナカ説の基本だし、そこに至るには当然ゲーム理論はあるはずだし(『翼の接線』ではストライクティエラという『ティエラ』をもとにした人工生命言語が出てくる)、さらにシファの設計にもGAはたびたび使われる。GAは未来には最適形状検討のためのエンジニアリングの基礎となることにしているし。
 しかし、そのGAはアダム・スミスやノイマンからつながりナッシュが基礎を築いたゲーム理論の子であると同時に、その先に兄弟として社会物理学や人類学への応用があるはずと思ったので、となるとミームの話も出てくると思っていた。
 ところが、出てこない。私はここ数日、これにものすごく悩んでいた。
 昨日の時点でのナッシュの研究からの派生について、なぜ言及しなかったについての疑問は解けなかったが、しかし自分がとてつもなく恐ろしい誤読をしているんじゃないかと思ってちょっと不安だったところは解消できた。
 
 私自身、英語は『斉藤寝具』みたいなところもあるし、それでいながら多少『次の急行のほうが先につきますよ』ぐらいの会話は出来てもそれだけだし、数式にも弱いし、直接トム・ジーグフリードに意見を送れるほどの力はないけど、でもやっぱりそういうスケープは多くの人が求めているようで、実のところこのNさん担当のこの系統の本はウケがよいそうです。
 いいなあ。すばらしいことです。

 しかしNさま、このブログもご覧になったということで吃驚がさらに。
 私自身、追いつめられ感とともにやっているだけに、ちょっと嬉しい。
 
 でも、ここまで私自身、再修業を決意しているのに、編集さんと話するとどきどきしてしまうなあ。
 私は商業出版の世界に出るには未熟だし、商業出版の考え方と違う部分があると思い知らされて、勉強に励んでいたのに。
 
 人間って、弱いなあ。
 
 でも、自分の誤読でなくて良かった。
 「もっとも美しい数学」はさらに読み込み、しっかりと定着させたい。スケープはしっかり広がっている。これでドーキンスにつながっていれば満点なのだが、つながっていなくてもかなり立派にまとまっている。
 あとは読み手次第なのではないか。そういう本は時々ある。全てを書いていないけど、でもその全てを示唆し、そこにいたる土台を作ってくれる本。
 「もっとも美しい数学」はそういう本だと思うし、それは啓蒙書としてはあり得る本だと思う。ゲーム理論の魅力については十分書いているし。あとは読み手がその細部に参考文献をあたりながら掘り下げていき、自分の知性の糧にするところだろう。
 おすすめです。実に面白い。


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 図版を追加、改善点もありますので、よろしく。