友人が亡くなり、彼女の大切にしていた古いピアノがあるホールに貸与され、そのお披露目のコンサートで演奏しました。
リハーサルのためホールに着きピアノを一目見たら、突然
「ワタシこのピアノさんの横で寝たなあ!」
と思い出しました。
彼女のおうちに泊めてもらったとき、
「ここで寝てよね。」
と言われ見ると、部屋いっぱいのピアノの隣に可愛らしいベットが作られて素敵な白いリネンが敷かれ…赤毛のアンになったような??少女のような気持ちになりました。
寝相が悪いとピアノ蹴っ飛ばしちゃうかな?なんてちょっと心配して、これから何回もここで泊めてもらう機会があるんだろうな、と漠然と思いながらゆっくり休みました。
慣れない部屋でも大きな古い木のピアノのおかげでよく眠れたのかも知れません。
長年住んだウィーンから日本にこのピアノを持ち出すのにたくさん許可を取らなくてはならなかったそうで
「なんで自分のものを動かすのにこんなに許可が要るのよ!」
と怒っていた彼女。
私のピアニストさんが連れてきた優秀な調律師さんに診てもらって
「まだまだずーっと使えるって♪」
と、満面の笑みで報告してくれた彼女。
(弾く本人がいなくなってどうするのよ!)
ホールに入りピアノを一目見て一瞬にこんな映像が突然頭の中を駆けぬけました。
楽器は単なる楽器でしかないけれど、古い楽器はそれに関わった様々な人や想いを密かに蓄積し続けていくのかも知れません。
これからこの主を失ったピアノの行く末がどうなるのか、どんな人たちに弾いてもらえるのか、…幸多かれ!と心の中でそっと願いました。