林成之というお医者さんをご存じでしょうか。 日大大学院教授で脳医学の権威、最近では北京オリンピック競泳の日本代表チームに「世界で勝つための脳科学戦略」を伝授したことで知られています。

林医師のことを知ったのはつい最近ですが、スポーツでも勉強でも、脳の使い方がうまくないと結果は得られないことを説明しておられました。

先生が競泳チームに伝授したのが「勝負脳」という考え方。

勝負脳とは、イメージトレーニングとは違い、脳の仕組みを生かして、脳の能力を最大限に引き出すことにより勝負に勝つ、というもの・・・科学的には、運動機能を司る脳内の神経細胞ネットワークを効率よく働かせ、情報伝達の効率をアップすることで、勝負に適した脳を作り出す・・・ということです。

◆勝負脳 作り方
 1)具体的な目標を掲げよ。
  ・「精一杯頑張る」という漠然とした目標ではなく、北島選手の目標「世界新記録を出して勝つ」のよ
    うに具体的な目標を掲げることが必要。
  (勝ち方まで具体的に明確に考えると、脳が集中する)

   具体的な目標に集中していると、交感神経の働きで脳内に「カテコールアミン」という興奮系の神経
   伝達物質が大量に分泌される。
   神経線維のつながりが良くなり、情報処理のスピードがアップされる・・・とのこと。
 
   高校野球であれば、「7回 10-0で勝つ」とか、「この回は3人で抑える」とか「この回は5点
   取る」とかでしょうか・・・チームプレイなので、気持ちを一つにする難しさはあると思いますが。

 2)常に全力を絞り出して練習せよ。
   林成之 教授:「脳に高速道路を作る、と言っています」

  ・運動するときは、大脳の思考に関わる「前頭連合野」と運動を制御する「大脳基底核」との間で情報
      のやり取りがされ、最適な運動指令が出る。
   常に極限状況まで自分を追い込む練習をしていると、神経の伝達が早くなる。
  
  ・高速道路のような別ルートができて、より速く、強い運動指令を送ることができ、運動能力が発揮で
   きるようになる。

   だらだらとした練習ではなく、集中的に全力を絞り出すことが大事ということです。 先生は、イチ
   ローやM.フィリップスのような一流選手は、脳で考えているのと同じイメージで身体を動かすこと
   ができるのだと言っていました。そうした練習により鍛えられたのでしょう。

   また、MAXを知っておけば、いざというとき出せる自分の能力がわかるので、精神的にも余裕が出
   るはずです。

 3 否定語は決して使うな。

  ・否定語を使うと、その瞬間に「マイナスの思考回路」が優先され、運動機能が低下する。

   これが重要なポイントのようです。「無理かも・・・」とか「所詮・・・」「厳しい・・・」などと
   いう言葉を想ったり、発するだけで運動機能は低下するそうです。

  ・それまで超人的能力を発揮させていた情報伝達の「高速道路」が、一瞬にして消えてしまいます。

  「陸上のパウエル選手はトップを走っていて『勝てる』と思っていたが、競技中に隣の選手の足が見え
   て、『ダメかも』と思ったとき失速してしまった、どうしてそうなったか分からない、と言っていた」
   そうです。


先生は「姿勢」の重要性についても話しておられました。肩の線が水平であること、そのためには骨盤がしっかりと安定したものであること・・・などです。ズボンを下げてダラダラ歩きしたり、猫背だったり、左右のバランスの悪い姿勢(ダルビッシュが左投げの練習をしていたのも、バランスを重要視しているからでしょう)などはスポーツ選手として大成は難しいんでしょうね。

そして、上半身のポイントになるのは「肩胛骨(けんこうこつ)」をうまく使う事だそうです。肩胛骨の可動域が大きければ、野球などのように投げたり打ったりするスポーツには効果が見込まれます・・・若いうちは、ついつい腕の力に頼りがちになりますが、人間の体のつくり、脳のつくりを知れば、効果的な身体の動かし方を若くして得られることでしょう。


・・・先生の本やCDは、野球だけじゃなく勉強の仕方にも参考になると思います。