横浜嚥下障害症例検討会

私たちは横浜、湘南、横須賀の医師、歯科医師、コメディカルの有志で作られた会です。嚥下障害の臨床を追求し、より質の高い臨床を患者さんに提供出来ることを目指しています。


テーマ:
タイトル
「左内頸動脈狭窄に対して行われたCEAの合併症:嚥下障害の評価および経過報告」

CEA後の嚥下障害の今回は第2回目となります。
今回は症例報告です。
始めにCEAの要約を秋田県立脳血管研究センターより引用させて頂きました。

CEA(Carotid EndArterectomy)
:頸動脈内膜剥離術

【頸動脈内膜剥離術の要約】
頚部の内頚動脈は動脈硬化が起きやすい場所で、
狭窄が強くなると脳梗塞の原因となる可能性が
増加してきます。この頸動脈狭窄症に対する再発
予防のための外科治療が頸動脈内膜剥離術(CEA)
です。
CEAは脳梗塞を予防するための手術ですが、
手術にあたって合併症が起る可能性があります。
合併症としては脳梗塞が挙げられ、殆どが無症候
性あるいは一時的です。言語障害や、半身麻痺、
痺れなどが、一過性あるいは永続性に残る事が
あります(2-3%)。また失明や、視野障害・
視力障害などが起こる可能性、さらに過灌流
症候群といって、血液が流れ過ぎるようになった
結果、痙攣や意識障害、言語障害や、半身麻痺、
痺れなどが、一過性に出現したり永続性に残る
事があります。まれに脳出血がおこる事も
あります。それ以外の合併症として、のどの
腫れや痛み、嗄声、嚥下障害があります。また、
術後しばらくは耳や顎の下が痺れたり、感覚が
鈍くなったりすることがあります。こういった
末梢神経の障害は5%程度の方に起こるといわれ
ています)。CEA後に再狭窄となるのは1-5%と
報告されています[1]

CEAにおける嚥下障害の報告(先行研究)
・Googleにて、『頸動脈内膜剥離術  嚥下障害  
CEA  dysphagia』という4つのワードを組み合わせて検索を行いました。合併症として嚥下障害や嗄声が起こるメカニズム、予後に関することは述べられていますが、嚥下障害の病態について詳しく述べられているものは和文、英文で共にみつかりませんでした。
・英論ではCEA後の嚥下障害の追跡調査がMasiero(2007)よりありました(前回ブログ)[2]。
19例の前向き研究を行っていて、術後5日目と3ヶ月でVEを用いた評価をしています。最終的には誤嚥が残存した症例は1例だったと述べられており、平均PAS(誤嚥スケール)は5.2→1.2とかなり良好な数値になっています。肺炎の合併もなく、そこまで嚥下障害としての予後が悪くなる訳ではないのかもしれません。
・speechpathology.com[3]という海外サイトでCEAによる嚥下障害発生のメカニズムについて質問がされていました。回答としては、上喉頭神経と反回神経、舌下神経、迷走神経に何らかのトラブル(術中操作、気道浮腫、出血、血腫による圧迫)が考えられ、それが嚥下障害を引き起こすのだろうという結論になっていました。

それでは、今回私が経験した症例です。
症例
70代 右利き
入院時診断名:CEA後廃用症候群(H28)、嚥下障害(H28)
既往:脳梗塞(H25)、脂質異常症
経過:
・H25に左脳梗塞を発症(A病院にて左内頸動脈狭窄はこの時点で指摘されていた)したが、軽々度右片麻痺の状態でADL自立し、自宅へ独歩退院。その後H27にTIA出現するも症状は軽快し、自宅退院となる。H28のA病院脳外外来f/uにて内頸動脈狭窄(NASCET60%[4])に対し手術加療の方針となり、H28手術を施行した。術後に嗄声、嚥下障害が出現したため、耳鼻咽喉科へコンサルトされた
・耳鼻咽喉科評価では、声帯麻痺なし、左軟口蓋挙上不良、左咽頭部運動異常、舌右側への運動異常がみられ、左迷走神経不全麻痺、左舌下神経不全麻痺と診断された
・栄養管理はNG tubeから3食経口となり、(ST介入済み)リハ目的でH28.当院へ転院されてきた

入院時評価
・精神機能良好、ADLは自立、経口3食
・聖隷式問診では、A項目が5個
・呼吸機能は良好
・L/DはTP7.0、ALB4.0、T-ch226↑、TRG152↑、HDL-C50、LDL-C147↑、bun16.3、cre1.05、Na142、K4.7、cl105、CRP0.05、WBC55、RBC404、Hb13.5
・口部顔面は顔面ほぼ対称、安静時舌は右側偏倚、挺舌はほぼ正中で速度、範囲、力もまずまず。舌の反転時(/r/音)は左側上がらず(安静時写真1、反転時写真2)。軟口蓋はやや右側へのカーテン徴候あり(前医耳鼻咽喉科評価通り)
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・顔面、体幹のsensoryは保存、左右差なし
・dysarthriaあり。明瞭度1
・音声障害あり。G1R0B1A0S0
・嚥下スクリーニングでは、RSST2回、MWST3点、FTは4点、s-sptは0.4cc良好、本人は水が一番飲み易いとコメントする
・舌骨の動きは何となく物足りない、喉頭下垂なし、喉頭柔軟性良好、喉頭挙上不十分(一横指超えず)、喉頭が左側へ斜めに挙上する

食事観察条件)
椅子座位、自力、右手、スプーン使用、一口3-5cc、主副食共にミキサー食、水分は中間のトロミ

所見)
・咳払い多い
・湿性嗄声は時折認められる
・複数回嚥下
・口腔残はなし
・痰が多く、常にティッシュ使用
・食事中2-3回のムセ込み(嚥下後誤嚥だろう)
・嚥下時に頚部を右側へ側屈させている
・指示にて左右頚部側屈、左右頚部回旋を行い、右頚部回旋が一番通過が良いという自覚的所見あり

ベッドサイドまとめ)
・咽頭期主体の嚥下障害
・咽頭クリアランス低下がメイン
・印象的にはワレンベルグ症候群?

ベットサイド評価にて咽頭クリアランス低下の要因は鼻咽腔閉鎖不全、舌骨喉頭運動障害S/O、輪状咽頭部通過障害S/O(左右差の存在?)を考えました。舌咽、迷走、舌下神経のトラブルであり、輪状咽頭部の左右差は脳幹に何かあるのかを疑わせますが、頭部CT上は神経内科の先生は何もなしと回答。MRIを撮ってもらいたいところですけど、なかなか言い出せないですし。とにかく病態や嚥下動態をアレコレ考えても仕方ないのでVFを主治医にお願いして撮らせて頂きました。

VF所見
・口腔期までの障害はほとんどなく、メインは咽頭期障害だった
・鼻咽腔閉鎖は保たれていた
・喉頭挙上はやや低下していた
・正面像にて高度咽頭クリアランス低下の正体は左輪状咽頭部の通過障害だった
・左右横向き嚥下で確認すると右横向き嚥下が咽頭クリアランスに効果的
・水分の通過が1番良好(条件:3ccをスプーン摂取。5ccだと嚥下後誤嚥あり)
・誤嚥時は即ムセ、喀出良好
・VF上は座位、自力、一口3-5ccの範囲、軟菜、全粥、水分はトロミなし、右横向き嚥下と水分の交互嚥下がbest swallowと判断
・正面像にて声帯麻痺は否定的であった

やっと病態がわかり、臨床に上記best swallowを導入して指導を開始しました。その後、耳鼻咽喉科医にVEをお願いし、声帯麻痺否定、兵頭スコアは6点という結果になっています。その時に左輪状咽頭筋に対してバルーン法を行っていますが、そこまで固くないのでこのまま直接訓練継続で良いだろうという判断になっています。
約2週間ほどで嚥下指導が終わり無事に自宅へ退院されました。

まとめ
左CEA後に起こった嚥下障害だったのですが、やはり病態としてはワレンベルグ症候群に近かったとは思っています(感覚障害はなかったですが、嚥下動態はワレンベルグなんですよね)。水分の通過が1番良好なのは輪状咽頭部障害の所見ですから、脳幹病変を一番疑います。まあMRIを撮れていないのでただの妄想になってしまいますが(笑)。他院で外来フォローをお願いしたので、今後どのような経過を辿るのか気になります。

DSS分類:4(機会誤嚥)
PAS:6
藤島Gr.:8
摂食Lv.:8

引用・参考文献
[4]labnews




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