中国武術・横浜武術院のblog-五禽戯1

今回も3日間五禽戯の講義を実技と理論を共に合わせながら進められました。

前回は実技は修海燕・任淑美・周金鐘老師に学び、理論と運動哲学の講義を薫文煥老師に学びました。

<五禽戯の効能>
http://www.melma.com/backnumber_138868_4270237/

自分は07年に一度学びに来てからしっかりと今までに中医学と解剖学、

中国古代思想の易経や陰陽五行思想を勉強して来たので今回はかなり余裕を持って学習が出来ました。

日本から歴史的参考資料 「正史 三国志 華侘伝」

「荘子・刻意編」「淮南子」などもいくつか持ってきたので

他の学習者にも紹介したりしながら行いました。

中国武術・横浜武術院のblog-五禽戯4


「五禽戯」の「五」とは、五行思想と経絡学説が結びついた五臓六腑のはたらきに合わせ、

虎:

 骨を鍛え、腎臓と膀胱のはたらきを高める。水に属す、季節は冬。 

鹿:

 筋を鍛え、肝臓と胆嚢に結びつく血流を活性化する。木に属す、季節は春。

熊:

 消化器系統の動きを良くするために脾臓と胃、つまりは胃腸のはたらきを高める。土に属し、土用。 

猿:

 心臓:大脳から反射を良くし 敏捷さを身につける 

 ストレスを発散させ 血流に関連して小腸に負担をかけさせないようにする。火に属す、季節は夏。 

鳥:

 鶴の優雅さを備え 皮毛を強化し 呼吸力を高め 肺機能を強化し関連する大腸の動きを安定させる。

 金に属す、季節は秋。

 この「五行のはたらき」と「五種類」の「五」に「禽獣」の「禽」の意識を重視して行う。



ここに選ばれた種類の「禽獣」たちは、本能のはたらきに従順で、危機感覚に優れているのです。

人間は大脳の前頭葉が発達し過ぎて情報をやたらと多く集める割には、

選択する力が弱く 理屈っぽくなり、本能的な直感が鈍りやすい。

「禽獣」は人間のそれらの感覚を持たないが、自分の生命力に対して敏感であるのです。

体に合わぬ食べ物は食さないし、動けなくなるほど食べ過ぎることはしない。

動くべき時に動き、休むべき時に休む。

危機を感じたらすぐにその場を離れ、あるいは闘わなければならない時には闘う。

これが「禽」である理由です。

中国武術・横浜武術院のblog-五禽戯5

中国武術・横浜武術院のblog-五禽戯2


そして「戯」「戯:たわむれる」ということは大事な感覚である。と聞きました。

私はこの「戯」について「戯とは何か」と質問を受けました。

私は以前学んだ武術理論から引用しながら答えました。

それは「中国武術運動の特徴として「武技」「武舞」「武戯」があり、

その中の「武戯」は多くのコミュニケーションであり、レクリエーションもあるし、交流もある。

自分自身の精神と肉体との連係を良くするものである」と言いました。

老師は「なかなかいい答えだ」それにつけ加えたいことがある、と話し、

「戯とは状態である」と言いました。

「戯」の概念は、多くが知る通り 多くの動物が行うしぐさで 人間でも小さな子供は 

習わずとも知っていることである。

その「戯:たわむれる」中でとても大事な精神状態は「舒服=心地良い」感覚なのである。

「舒服=心地良い」になれる為の運動要素が「戯」なのである。

それが「五禽戯」なのだ。とお話ししてくださいました。

中国武術・横浜武術院のblog-五禽戯3

五禽戯は1800年の歴史がある、少林武術は1300年。太極拳は400年だ。

後漢の三国時代は戦争の時代である。

この時期の「武」とは戦場においてのことである。大勢の人間が命を落とし、生き残る人間の知恵も大事なのだ。

だからこそ「戯」の感覚はとても大事なのだ。

現代でも戦争は無くなってきたが、世界中のどこでも毎日のストレス社会の中でも大切な感覚なのである。

これには感動しました。

現代社会では直接の打撃により生命の危機を感じることは少なくなりましたが、

間接的な嫌悪感を与えられ続け、内面から生命力を弱められる時代になったのかも知れません。

あるいは武力を使わなくなったからこそ

「嫌がらせ」という精神的プレッシャーを与える陰湿なやり方も増えたように思います。

その中でも、びくともしない精神力と身体を強くしていくにも「戯」の概念は重要だと思います。