【読み物】「豊かなる衰退」と日本の戦略―新しい経済をどうつくるか | 本を片手に街に出よう

【読み物】「豊かなる衰退」と日本の戦略―新しい経済をどうつくるか



横山 禎徳
「豊かなる衰退」と日本の戦略―新しい経済をどうつくるか

 時期遅れの大掃除をしたら、タンスの奥から発掘されたこの本、もう一回読み返してしまいました。

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出版社/著者からの内容紹介
 どのように経済を以前のような高い「成長」路線に戻すか-という議論が続いているが、そうした発想の根底には発展途上国的メンタリティがある。人口が減り高齢化していくこれからの日本では、「成長」の神話、幻想と決別した上で、新たな経済のモデルを模索せねばならない。日本が進むべきは、「豊かなる衰退」であり、「大人の成長」である。寿命の尽きたシステムを捨て、新しい経済を組み立てるためには、何が必要なのか。本書では、具体的に3つのアイデアを提示しながら、日本経済の「次のステージ」を描く。経済を「建築的視線」で組み立て直すという点が極めてユニーク。

内容(「BOOK」データベースより)
 新しい経済をどうつくるか。人口減少・高齢化…その中で実現できる「成長」とは?新たな「社会システム」のデザインとして3つの具体的施策を提示。

内容(「MARC」データベースより)
 人口減少・高齢化…その中で実現できる「成長」とは? 新たな「社会システム」のデザインとして3つの具体的施策を提示する。現実を直視し、創造的工夫へと発想を転換せよ!

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
 横山 禎徳
 1942年広島生まれ。社会システムデザイナー。独立行政法人経済産業研究所上席研究員。オリックス(株)社外取締役等を兼務。東京大学工学部建築学科卒業、ハーバード大学大学院修了(都市デザイン修士)、マサチューセッツ工科大学大学院修了(経営学修士)。建築設計事務所を経て、75年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。87年にディレクター就任し、89~94年は東京支社長を務める。2002年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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 いや、読みやすいのは良いんだけれど、実現性において厳しい提案であるような気がする。

 いろいろ問題点を指摘して、そのあとに著者が主張するのは、

(1)一人二役…仕事場に近い都会に住みつつ、田舎にもセカンドハウスを持って趣味に生きる。そうすりゃ消費も増えるでしょ!二役しやすいように週休3日にしたらどうよ?

(2)二次市場…要するに中古市場ですわ。特に住宅は使いまわしてリフォームすりゃ価値があがる世の中にしていこうよ、みたいな。

(3)観光立国…言わずもがな。

 なんですが…

 今までみたいに横並びで産業主体の成長思想では駄目!っていう基本的な前提認識は同感。そこは同感なんだけど、上の3つの主張はちょっと微妙。


 (1)は金持ちの妄想としか思えない。いったいどれだけの人がそれを実現できるのか?に加えて、家×2だから家具や電化製品も×2で消費増!ってのはちょっと眉唾ですな…

 都心にいたって趣味に充実した人生を送っている人はいるし、田舎なんてよそ者に冷たそうだし近隣の住民との軋轢がより多そうだし、そもそも不便でやだ、って人だっているだろう。っていうか、そういう人が多いから一極集中しているんじゃないの?

 いま、派遣社員やアルバイトやパートが多くなってきている。ってコトは、いちいち週休3日を制度にしなくても週休なんて3日でも4日でもシフトが選べる時代になっていくんじゃない?収入が足りなければ副業すればいいんでしょ?どっちかというと、そういった正社員じゃない人たちへの制度的差別を改善する方向で考えれば良いのでは。

 たとえば扶養控除の問題とか、100万(103万)の壁のせいで意図的に働くのを抑制している人がいるとするならば、改善の余地があるんでないの?とか。あと健康保険や、年金なんかも改善の余地はないか?

 使う側だって、能力や意欲の高い人を、正社員かどうかに関わらず、どんどん使えたほうがいいでしょ?


 (2)はおおむね賛成。この狭い国土だと仕方がないのか、はたまた建設業や不動産業などで食っている人達の比率が多すぎて、歩留まりが低いからなのか、衣食住のうち「住」だけは激しく高いですよね。
 でも住以外、衣食は、無駄に贅沢を望まなければはっきり言ってすごく安い気がしますけど。

 どっちかというと、二次市場っていうより、金を払う対価として所有移転、っていう概念ではなくて、利用権、っていう時代に、何もかもがなっていくような気もします。

 新品だろうが中古だろうが、一戸建てとか車の所有そのものが、すでに高度成長の「モノが持てると豊かだ」的な発想で、時代遅れな感じが、最近すごくしています。

 たとえば、車なんて都心に住んでいて月に数回乗る程度だったらそもそもいらなくて、レンタカーでも良いわけでしょう?買い物が少し遠いだあ?歩け!ってのが現代の病的日本人には必要なワケで。


 (3)も賛成なんだけど、電線埋めるとかそういう自虐的かつ結果的に土建的発想がやだ。たとえば東京都内の電線を埋めるのに幾らかかるの?しかもそれで景観以外に何が得られるの?工事屋さんがバブル的に儲かって、しかも毎年ほじくり返されることウケアイなんでしょ?きっと。

 東京なんて当分ごちゃごちゃでいい。数ヶ月も住めば外国人だって慣れて文句言わなくなると自ら書いているワケだし、根本的に人と欲望の規模が大きい東京では、延々解決しないであろう景観のことばかり真っ先に気にするより、便利になるような機能のことを気にしてほしい。

 前にも似たようなことを言ったけど、たとえば都心の山手線沿線以内くらいの地域では、

・東京メトロの駅番号みたいに、JRや、道の信号機にも全部番号つけて、地図や行き先案内と連動させるとか、
(さらに信号にRF-IDをつけて電波とか出して、PDAかなんかにレシーバつけて、信号の近くに行くと地図と連動するとか、どうかなあ。それで持っていない人には貸し出しをするとか)

・電車の各駅に各国語対応の地域案内端末コーナーをおくとか、
(鉄道会社は、反則に近い駅ナカ戦略でいろんな他業種を地の利で圧倒しているんだから、タダでおけ!JRは特に。)

・街ごとに特化した外国語ガイドサービスの勃興を推奨するとか、
(たとえば世界にも有名な渋谷や原宿や秋葉原などには時間貸しの専用ガイドがいてもよいと思う)

・日本(観光)入門的な映像番組をインターネットで各国語向けに配信するとか、
(歴史とか名所とか慣習とかハウツーとか流行などを、ドラえもんとかにナビゲートさせる。外国の子供達にまず好きになってもらう。マクドナルド/戦後給食制度と似た戦略)

・逆に我々が外国人の習慣や考え方などを学べる番組をTVで流すとか、
(下品でくだらない番組が、あっていいけど、多すぎる)

 そういった、そもそもまず、外国人が来やすいような心遣い、というものに時間と労力と金をかけるべきだ。

 美しくありたいという願望は分かるが、良くも悪くもありのままの日本を理解してもらうってのも必要(隠しとおせるもんでもない)だし、なによりも、この国は外圧で変わってきた国である!外国人がいっぱい来て、電線ウゼエ!という声が多数になり、ちょっと恥ずかしくなってきたら自然に景観も良くしなきゃ!ってコトになるんじゃないの?



 なんてエラそうにだらだらと反論めいたことも書いたけど、根底の考えは賛成なんすよ。でも、社会システム設計っていう「上からの視点」ではなくて、利用者視点で機能設計していけば、おのずと利用者のニーズが答えを出すでしょう、というのが、これから風、な考え方だと思う。



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