エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? | 本を片手に街に出よう

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?


ENRON
「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」公式サイト


奥村 宏
粉飾資本主義―エンロンとライブドア


大島 春行, 矢島 敦視
アメリカがおかしくなっている―エンロンとワールドコム破綻の衝撃


清水 昭男, 広岡 球志
マンガ エンロン アメリカ資本主義をゆるがす史上最大級の粉飾決算


ガイ P. ランダー, 大久保 潤, メディア総合研究所
SOX法とは何か? 米国企業改革法からCSR、内部統制を読み解く

 元祖ライブドア。そろそろライブドア事件のことを総括しておこうって感じの時に公開とはなかなかひねったな、と一人で強引に納得しつつ鑑賞。

 それから、最近のIT業界では、J-SOXで一大商機到来!とかいって、かつてのY2K問題再び、的なアジテートレベルで騒ぎ続けてはや1~2年、そろそろ一般企業からは「なんかまたITゼネコンの奴らに煽られてオーバースペックの商品を買わされてる気がするんだよね」なんて声もあるが、そもそもJ-SOXの元ネタをつくったSOX法が生まれる会計基準厳格化の流れを決定付けた、巨大不正会計事件がこのエンロン事件だ。

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 アメリカ史上最大の企業スキャンダル、エンロン事件を追ったドキュメンタリー。全米第7位、世界第16位に急成長した巨大企業がわずか2か月で破綻するまでの経緯を、元社員の証言や内幕を暴く内部資料によって浮き彫りにする。監督は、政治や音楽など多彩なジャンルのドキュメンタリーを手がけてきたアレックス・ギブニー。カリフォルニアのエネルギー危機操作など、モラルのかけらもないエンロン経営陣の強欲さに言葉を失う。(シネマトゥデイ)
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 規制緩和によってエネルギー売買を市場取引の機構に組み込もうというスケールのでかい構想までは良かったんだけど、そこから先は単に損失隠しをしつづけて粉飾することで株価をつりあげつつ、電力不足を演出して電力価格までつりあげるという、カネ、金、Money、にひたすらまい進する肉食動物たちが繰り広げる経済犯罪の嵐。

 完全なノンフィクションなので、当時の関係者や評論家などへのインタビュー、報道などからの抜粋映像、で成り立っており、さながらNHKスペシャルって感じだが、さすがライブドアの若者たちとは違って、海千山千に関しては桁と年季が違う猛者ども、シラの切り方や、大丈夫だから安心してアピール、自分は悪くないアピールのうまいこと、うまいこと。

 そしてさらに拍車をかけるのが、従業員の多くは401Kで自身の将来資産までエンロン株で運用していたため、破綻とともに年金やら私財が吹っ飛ぶことに。

 「事件で多くのアメリカ人が古い教訓を再び学んだ。うまい話には気をつけろ」だって。バカじゃないの?なんて笑えないのが2007年の私たちである。

 そいでもって、エンロンのキャッチコピーが「Ask Why?(常に疑え)」だったっていうんだから皮肉として出来すぎだよね。

 不謹慎だし、被害者には悪いけど、何でだか、経営者達の演出の違いなのか、アメリカのほうがよりバカっぽいというか、盛り上げ方、だまし方、そして吹っ飛び方がスゴいような気がする。
 そう感じるのはたぶん単純に規模のせいだけでなく。逆に、規模感は通貨単位が違うし金額がでかすぎるんで実感なし。

 金額的規模に関しては、家賃15万のマンションで2000年分、とか、全アメリカ人の食べるビッグマック年間消費量の2万年分、とか、「あの金で何が買えたか(村上 龍)」なノリで解説をつけてくれると良かったんだけどなあ。
 250億ドル、とか言われても庶民にはさっぱりピンとこないね。

 しかしながら、革新的に装う経営者たちの詭弁と、社員や株主やマスコミからの熱狂的支持、そしてそれに加えて挑戦的な大規模事業の連続による株価つりあげ、さらには会計報告義務のない組織をつかって法の網をかいくぐった損失隠し、そして破綻の経過まで、似てますな、かなり。
 癒着した会計事務所が破綻するところなんかもクリソツ。#あと死者がでるところも…合掌。
(ライブドアのケースのようにお上の空爆がきっかけではなくて、エンロンの場合は自爆気味だけど。そういった意味ではライブドアはほっといたらどこまでいったんだろうか)

 やっぱり日本ってアメリカの数年後を追ってるんだなあ、とつくづく思った。

人気ブログランキング 数年後はライブドア記録映画が制作されるんですかねえ。賞賛しまくっていた評論家文化人芸能人の皆さんのほろ苦い映像を満載してほしいね。無理だと思うけど。クリック! | 他の記事も読む!