2006年02月25日

【小説】青の時代

テーマ:Book Review


三島 由紀夫
青の時代

 ライブドア事件との酷似が取り沙汰されている光クラブ事件を題材に、とある青年のバブリーな人生を描く小説。
#本屋さんの平積みで購入。こういうことはAmazonには出来ない芸当ですね。

 三島 由紀夫って言えば、陸上自衛隊駐屯地で演説ぶった挙句に割腹自殺、ってのが「やっぱり天才ってどっか常軌を逸しているの?」という感じだが、実際、この小説の主人公のような、冷ややかな合理主義者かつ倒錯した秀才、といった面が見え隠れしているような、していないような。

 前半では「光クラブ」の山崎晃嗣を模した主人公川崎誠の幼少→青年時代を描いているが、そこにいる少年は、厳格な父親の下で圧迫され、感情に欠ける秀才であった。分単位で日記をつけ、何をするにも自分が事前に計画した青写真に沿って行動する。そして計画通りに行かなかったところをしきりに後悔するも、その"後悔癖"そのものを嫌悪し、またぞろ自己限定された合理性の虚しい無限ループを繰り返すのだ。
 水商売の女にアプローチを計画するくだりで、計画の第一段階「名前を聞く」というのを幾度と無く繰り返す主人公が、何とも滑稽で、知能は著しくも、精神的に稚拙な秀才を描くエピソードとして微笑ましくも虚しい。

 とにもかくにも、前半部分はそのような主人公の内面を描くエピソードが多々描かれ、まさに「青の時代」というべきもの。

 後半、主人公が「太陽カンパニイ」という、まさに光クラブそのものを設立してからは、当時の社会情勢をエッセンス的に描写しつつ、乾いた欲望が次第に主人公を離れて勝手に増殖し始める様を淡々と描いており、前半の調子との落差が感じられる。
 前後半の間には戦争があるのだがそこは描かれていない。
 いわゆる、アプレゲールなるものを理解せねばこの作品を理解するに不十分なのかも知れない。それだけ、戦争というものは既成の何もかもを変え、人の心を歪めてしまうものであったのだろう。

 ちりばめられた言葉のレトリックは小難しくもあるが、巻末の解説にあるようなアフォリズムとかシニシズムというよりは、虚無主義的で、屈折した英雄主義を感じざるを得ない。このあたりは、著者自身の投影が幾分か成されているような気がしなくもない。
 目的無く、行為そのものを目的としているかのようなその生態は、確かにライブドアと似ている面もあるにはあるだろうが、物語の題材としては若干退屈でもある。
 最後に幼少の思い出を想うシーンを入れたことによって、小説としての主題はかろうじて保たれている。


BGM->東京事変"大人(アダルト)"2006
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