ロード・オブ・ウォー
遅まきながらMr.&Mrs.スミスを観ようと思ったのですが、ポスターに佇むニコラス・ケイジの雄姿に惹かれてこちらを観てしまいました。
結果は…正解。直感の通りなかなか良い映画でした。
(面白いというよりは深く考えたという意味で)
先ず冒頭数分のオープニングからしてヤラれます。鉄砲玉が工場で作られてから延々貿易輸送を経て、戦場で撃ち込まれるまでの過程を弾丸の視点で描いており、最後はどうなるかイヤな想像をしながら、ぐっと目を凝らしてしまいます。そして案の定、最後はそれか!
冒頭から「平和ボケ日本人」には刺激が強い映像です。
映画そのものは冷戦及びソ連崩壊といった当時の世界情勢を首尾よく利用してのし上がる武器商人ユーリー・オルロフの台頭過程を描いたものです。
ユーリーの一人称でナレーションを交えながらケイジが淡々と演じていきます。
どっちかというと二枚目ではないユーモラスなキャラなのですが、どこか目の奥には底知れぬ狂気を秘めた感じがプンプン出ていて、こういった役をさせるとこの人は絶妙ですね。
怒っていても、端には笑いを感じさせる。
笑っていても、どこか奥底には悲しさが垣間見える。
いつもどこか気だるそうな虚無感をかもし出しつつも、武器のセールス或いは自分の仕事の正当性の話になると極めて明瞭快活に主張をする。
おおよそ私が想像するような「武器商人という虚業を営む人でなしはこのような言動をするものである」というキャラクター要素をあますところなく魅せてくれます。
いやはやケイジさん、フェイス/オフ以来の脱帽ですわ。
なんかバカっぽい話かな~なんていうイメージだけでナショナル・トレジャーを敬遠してたけど、すみません私が悪かったです、あなたの演技をちゃんと観ます。
ストーリー的には、序盤の「成り上がり過程」がかなり駆け足で進んでしまいますが本作のテーマを考えたらさほど問題なし。
あんまり「どうやってビジネスを拡大していったかのタネ明かし」は出来ないでしょうし。だって今もこの手の人達は世界中でビジネス展開しているのでしょう?あんまり手口をバラすと…
このレベルでも米国内ではスポンサーがつかず大変だったようですね。
ここまでやっただけでも凄い!と思います。
作中にも登場する冷戦時代のオールドタイプ武器商人が、東側に対向する西側諸国に武器を売ってきたのに対して、ポスト冷戦時代の申し子であるユーリーは、両陣営に見境無く武器を売ります。
「そんな混沌が続くはずがない」と毒づくオールドタイプに対して「あんたは(情勢の変化を)見る目がなかっただけだ」と切り捨てるユーリー。それでいて「俺だって出来れば人が死なないほうがいいと思ってる」とうそぶく。
まさにかつては対イラン目的でイラクに武器を売り、今度はイラクをぶっ潰そうとするアメリカも同じですね。
痛いところをつかれまくってます。資金を出してくれるはずがありません。
またアフリカの酷さも、話や文献では知っていたつもりになってましたが、いざ映像で見せられると絶句状態。
ニコラス・ケイジが間の抜けた半笑いでセールス・トークする傍ら、現代版ブラックパンサーみたいなヒップホップ系あんちゃんが、市民や気に入らない部下などを見境無くばんばん撃ち殺します。
言わばリアルなGrand Theft Auto III (GTAIII)状態。
映画とは言え流血の描写に弱い人は辛いです。
まとめると、テーマからして当然ですが、感動や爽快感とは全く無縁の映画です。むしろ後味の悪さ、どす黒い重苦しさはかなり純度高いです。
銃撃戦はありますが戦争映画っぽい派手な撃ち合いではありません。大体が一方的殺人です。
笑いは多少ありますが、殆どが背筋が寒い笑いです。
ほんとケイジが主役で良かったよ。それだけがこの映画の救いです。
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結果は…正解。直感の通りなかなか良い映画でした。
(面白いというよりは深く考えたという意味で)
先ず冒頭数分のオープニングからしてヤラれます。鉄砲玉が工場で作られてから延々貿易輸送を経て、戦場で撃ち込まれるまでの過程を弾丸の視点で描いており、最後はどうなるかイヤな想像をしながら、ぐっと目を凝らしてしまいます。そして案の定、最後はそれか!
冒頭から「平和ボケ日本人」には刺激が強い映像です。
映画そのものは冷戦及びソ連崩壊といった当時の世界情勢を首尾よく利用してのし上がる武器商人ユーリー・オルロフの台頭過程を描いたものです。
ユーリーの一人称でナレーションを交えながらケイジが淡々と演じていきます。
どっちかというと二枚目ではないユーモラスなキャラなのですが、どこか目の奥には底知れぬ狂気を秘めた感じがプンプン出ていて、こういった役をさせるとこの人は絶妙ですね。
怒っていても、端には笑いを感じさせる。
笑っていても、どこか奥底には悲しさが垣間見える。
いつもどこか気だるそうな虚無感をかもし出しつつも、武器のセールス或いは自分の仕事の正当性の話になると極めて明瞭快活に主張をする。
おおよそ私が想像するような「武器商人という虚業を営む人でなしはこのような言動をするものである」というキャラクター要素をあますところなく魅せてくれます。
いやはやケイジさん、フェイス/オフ以来の脱帽ですわ。
なんかバカっぽい話かな~なんていうイメージだけでナショナル・トレジャーを敬遠してたけど、すみません私が悪かったです、あなたの演技をちゃんと観ます。
ストーリー的には、序盤の「成り上がり過程」がかなり駆け足で進んでしまいますが本作のテーマを考えたらさほど問題なし。
あんまり「どうやってビジネスを拡大していったかのタネ明かし」は出来ないでしょうし。だって今もこの手の人達は世界中でビジネス展開しているのでしょう?あんまり手口をバラすと…
このレベルでも米国内ではスポンサーがつかず大変だったようですね。
ここまでやっただけでも凄い!と思います。
作中にも登場する冷戦時代のオールドタイプ武器商人が、東側に対向する西側諸国に武器を売ってきたのに対して、ポスト冷戦時代の申し子であるユーリーは、両陣営に見境無く武器を売ります。
「そんな混沌が続くはずがない」と毒づくオールドタイプに対して「あんたは(情勢の変化を)見る目がなかっただけだ」と切り捨てるユーリー。それでいて「俺だって出来れば人が死なないほうがいいと思ってる」とうそぶく。
まさにかつては対イラン目的でイラクに武器を売り、今度はイラクをぶっ潰そうとするアメリカも同じですね。
痛いところをつかれまくってます。資金を出してくれるはずがありません。
またアフリカの酷さも、話や文献では知っていたつもりになってましたが、いざ映像で見せられると絶句状態。
ニコラス・ケイジが間の抜けた半笑いでセールス・トークする傍ら、現代版ブラックパンサーみたいなヒップホップ系あんちゃんが、市民や気に入らない部下などを見境無くばんばん撃ち殺します。
言わばリアルなGrand Theft Auto III (GTAIII)状態。
映画とは言え流血の描写に弱い人は辛いです。
まとめると、テーマからして当然ですが、感動や爽快感とは全く無縁の映画です。むしろ後味の悪さ、どす黒い重苦しさはかなり純度高いです。
銃撃戦はありますが戦争映画っぽい派手な撃ち合いではありません。大体が一方的殺人です。
笑いは多少ありますが、殆どが背筋が寒い笑いです。
ほんとケイジが主役で良かったよ。それだけがこの映画の救いです。
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