新聞講談&怪談会の鰭崎英朋 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 スタイルブック

ボランティア情報紙に連載をお願いしている“なんでもコレクターS氏”から「萬朝報」連載・講談小説の切抜き帳が持ち込まれた。大正5~7年のもので挿絵は木版、文字は亜鉛活字という組合わせ。しかもその挿絵は我が師匠(←かってに)の鰭崎英朋、彫師は吉田と刻まれている。英朋にしては上出来仕事とは言えないが、売れっ子で寝る時間もなく描きまくっていたころ、ついにダウンしたのか数回分挿絵が載らない日があったりする。

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 伊達大評定:桃川如燕口演/浪上義三郎速記(大正5~6年)
 佐倉義民伝:桃川如燕口演(大正7年)
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 伊達大評定:桃川如燕口演

桃川如燕口演「伊達大評定」は萬朝報誌上に大正5年11月19日~大正6年10月16日まで全331回の大長編です。内容は伊達騒動を扱った「伽蘿先代萩(めいぼく せんだいはぎ)」ですね。山本周五郎原作のNHK「樅の木は残った」原田甲斐は一身を投げ打って藩を救いますが、講談での原田は完璧に悪党です。

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 佐倉義民伝:桃川如燕口演(大正7年)

「佐倉義民伝」はやはり萬朝報誌上において大正7年2月14日~大正7年7月18日まで全155回。お馴染みの義民・佐倉惣五郎は藩の重税に苦しむ農民を代表して江戸表に直訴、ついには税は軽減されるも惣五郎夫婦は磔にされまする。こちらも鰭崎英朋の挿絵、吉田某の彫によるコンビで手慣れたところを見せています。

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 東雅夫編:百物語怪談会(2007)ちくま文庫
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 東雅夫編:百物語怪談会/鰭崎英朋挿絵

明治の文人墨客による怪談会の実録集「怪談会」は明治42年に柏舎書楼から出版された今日では稀覯本で、いくら待っても我が手元に来ることがない一冊でありましょう。夏には早いが図書館から借出してみたら、なにやら馴染みの手跡、われらが英朋先生ではありますまいか。英朋の幽霊図は圓朝コレクションに収まるほどに有名で、その余香のお裾分けみたいな挿絵です。不出来な弟子(←かってに)に「挿絵はこう描け」といわんばかりに師の挿絵が次々と現れまする。