緑川玄三「三条太平記」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
.-三条太平記5881
緑川玄三:三条太平記(S39)三条新聞社

金物で知られる新潟県三条市の地方新聞に連載された緑川玄三「三条太平記」で、平安時代末期の越後における覇権争いを描いた大衆小説です。京は藤原摂関家の乱脈に飽いた遠山左衛門(三条左衛門)定明は越後国三条に居城をかまえるも、奥州から上京の足がかりと角田山に陣を構えた黒鳥兵衛の侵略を受ける。三条左衛門を中心に護摩堂城主など地元武将連合軍と、猛将黒鳥兵衛との二度にわたる熾烈な激闘と、漁夫に利を得んとする僧兵の不穏な動き。

これに、三条左衛門の妻と京時代の愛人、黒鳥兵衛を愛するようになる連合軍の姫君、懶惰な僧兵に飼われる淫蕩な妾たちが織りなす一大戦国ロマン絵巻、キーマンに異相の忍士(細作・忍者)蟹の幻左久が登場人物をつなぐ要として設定されている。新潟出身の作家山岡荘八の巻頭言つき、ローカル作家による大衆小説というのは驚きましたが、一巻にまとめた改装本も発行されたようで、当時は少しは話題になったのでしょうか。古本屋さんに足を運ばないことには見つからない本ですね。